
フシュート石炭鉱山を国家戦略鉱山に指定するよう要求(2010年5月3日)
ホブド・アイマグのダルビ・ソムとツェツェグ・ソムの間にフシュート石炭鉱山がある。
(注:google earth の画像を筆者が加工した)
地元民が結成した「フシュート・モンゴル運動」は、このフシュート石炭鉱山を国家戦略鉱山に指定するよう要求した。
フシュート石炭鉱山は、モン・エン・コ(Mongolia Energy Corporation)社(社長シェーファー)が2007年3月から3年間の採掘権を所有しており、現在、操業中である。
フシュート石炭鉱山は、24〜44億トンのコークス炭の埋蔵量がある。
「フシュート・モンゴル運動」の主張によると、モン・エン・コ社は、意図的にその埋蔵量を秘密にし、2010年8月から採掘を急いで開始しようとしている。
そして1年目に50万トン、2年目に300万トン、3年目に800万トンを採掘し輸出する予定であるという。
さらに、モン・エン・コ社は、2008年度と2009年度の採掘報告書を提出していない。この報告書提出の義務付けは、鉱山法に違反する。
このため、フシュート石炭鉱山は、資源枯渇の危険性がある。
最後に、この企業活動には人民革命党書記У.バルスボルド(注:前ホブド・アイマグ知事、元自然環境相)らが関係している。
「フシュート・モンゴル運動」側は、もし上記の要求が受け入れられないならば、デトギーン峠、バルラギーン谷で抗議集会を開き、モン・エン・コ社の石炭搬出を封鎖・阻止し、座り込みやハンストを決行する、と発表した(ウヌードゥル新聞2010年5月3日付電子版)。
さて、「フシュート・モンゴル運動」によるフシュート石炭鉱山の国家戦略鉱山指定要求は、そのことによって、鉱物資源の国家所有が厳守され、モンゴル政府によるコークス炭採掘が保証される。その結果、そこから得られる収益は、モンゴル国民のものとなる。
現在、ウムヌゴビ・アイマグのタバントルゴイ石炭鉱山(注:コークス炭を埋蔵する)の開発が問題となっているが、タバントルゴイ石炭鉱山のコークス炭の採掘は、国営エルデネスMGL社が行う(注:社長Т.ガンゾリグ、正確には政府が51%株所有、その他は地方政庁などが所有、いずれにしろ国営であることには変わりがない)。この開発が進めば、国家予算歳入額は飛躍的に増大する。
一方、現行の鉱山法(注:正確には「鉱物資源法」、理解しやすいように鉱山法と訳す)によれば、鉱物資源開発にかかる税金は、3年間は免税になる。だから、この期間に掘り尽くしてしまっても税金を払わなくてもよいことになる。
もしその開発が外資企業によって行われれば、モンゴル国民の所有する資源が無料で簒奪されることになる。
第二に、前の「モンゴル時評」で紹介した
「鉱物資源採掘権の停止命令」が「フシュート・モンゴル運動」側にとっての刺激となっていることは明らかだろう。この大統領命令は、正当なものであり、したがって、「フシュート・モンゴル運動」側の要求も受け入れられるべきものであろう。
第三に、実は、このツェツェグノール(注:ツェツェクノールともいう)では、19世紀末から20世紀初頭にかけて、アヨーシによって指導された牧民運動が展開された。筆者のモンゴル研究者としての最初の(不完全な)論文は、「アヨーシの牧民運動について」であった。さらにそれに基づいて、
「前期牧民運動の帰結」も書いた。
地元民による「フシュート・モンゴル運動」は、「アヨーシの牧民運動」の後継といってもよい。(2010.05.09)
