大統領命令による鉱山採掘権付与の停止措置(2010年4月20日)

モンゴルには豊富な鉱物資源が埋蔵されている。モンゴル政府は、近年、この鉱物資源をてことして国家発展を図る方策を採り始めた。だが、「金(鉱物資源)の上の乞食」と揶揄されるように、モンゴルには、それを探査・採掘するための資金がない。それを見越して、外資がモンゴルに侵入してきている。・・・・・

エルベグドルジ大統領は、2010年4月20日17時以降、鉱山採掘権の付与行為を禁止した。鉱山採掘権は、2006年に964件、2007年に691件、2008年に1358件、2009年に628件、2010年4月時点で128件付与されている、という(ウヌードゥル新聞2010年4月22日付電子版)

国家安全保障会議議長としてのエルベグドルジ大統領は、この措置の背景を説明し、以下の諸点を述べている。
1)国民が鉱物資源の所有者であるという原則が守られていないこと、
2)採掘権付与をめぐる疑惑があること、
3)国家安全保障に危機をもたらしていること、例えば採掘時に法を遵守しない法人が全体の50%であること、
4)法人が法に定められた年次報告書を提出しないこと、
5)採掘権付与をめぐる賄賂が介在すること、
6)2010年4月20日時点で4706件の採掘権が付与され、その大部分が法を遵守していないこと(sonin.mn2010.04.23)

この大統領らしく、説明が大雑把であるが、要するに、鉱山採掘権付与に際して賄賂が介在し、鉱山採掘のために環境汚染が広がり、これが国家的危機に及んでいる、ということであろう。

この鉱山採掘権付与停止措置は、突然出されたものではなく、背景がある。

鉱山採掘権は、2003年時点で、その20%が外資の支配下にある、といわれていた(モンツァメ通信2003年6月3日)。

そのため、例えば、私立モンゴル大学学長で経済学者のН.ダシゼベグは、「政府が鉱山採掘権を外資のボロー・ゴールド社、アイバンホー・マインズ社に与えたのは、鉱山の国有をうたった憲法に違反する」、として、憲法裁判所に訴えた(注:憲法裁判所は鉱山法の規定から却下した。ウヌードゥル新聞2005年5月3日付)

バーサンの率いる「自由老人同盟」も、2006年4月13日、「オユトルゴイ、タバントルゴイ鉱山を早急に閉山にせよ」、「鉱山採掘権を取り戻せ」、という要求のデモを政府官邸北側で行った(ウヌードゥル新聞2006年4月14日付)


「市民フォーラム」は、2007年2月4日、不正な鉱山採掘権取得問題を訴えた(Ц.ムンフバヤル「オンギ川」運動代表」発言。ウヌードゥル新聞2007年2月5日付)。

フブスグル・アイマグ選出国家大ホラル(国会)議員のダバースルンとセドバンチグは、フブスグルのアラグエルデネ・ソムとツァガーンノール・ソムでの鉱山採掘権付与に反対し、それを取り消すように求めた(ウヌードゥル新聞2008年12月22日付)

2009年時点で、モンゴルの5202の鉱山採掘権のうち、1224が外国人の所有である(ウヌードゥル新聞2009年4月18日付)。

さらに、Г.バヤルサイハン国家大ホラル(国会)議員は、フブスグル湖の水を国家戦略鉱山に指定するべきだ、と主張し、「フブスグル・ノール・エゼド」運動、および、Д.バルダンオチル、Ж.エンフバヤル、Г.バヤルサイハンたち国家大ホラル(国会)議員3人は、モンゴル鉱工業の採掘権を今後5年間停止させようという提案を行った(ウヌードゥル新聞2010年3月8日付電子版)

特に最近、問題視されたのは、ウラン鉱開発についてである。

モンゴルにはウラン鉱床が豊富にある(注:マルダイ・ゴル、ドルノド、ゴルバンボラグなど、とくにドルノドの推定埋蔵量は56.800トンで、世界のウラン鉱の2%を占める。ウヌードゥル新聞2007年4月25日付)。

このうち、ゴルバンボラグのウラン鉱の採掘権について、カナダ国籍の「ウェスタン・プロスペクター」社が採掘権を100%所有しているが、これを(国家戦略鉱山であるにもかかわらず)無承認で中国企業に譲渡しようとした(ウヌードゥル新聞2009年4月7日付)。

これに対し、(産業貿易省)鉱山局は、ウェスターン・プロスペクター社に対し、2009年4月13日、採掘権を3ヶ月間凍結することを通告した(ウヌードゥル新聞2009年4月17日付)。

また、カナダ国籍のハンリソース社は、ドルノド・アイマグのウラン鉱床採掘権の一部を中国のCNNCに売却しようとしたが、これも一時停止になった(ウヌードゥル新聞2010年3月8日付電子版)

「ハンリソース」社は、ウラン鉱採掘権抹消の取り消しを求めて、モンゴルおよびカナダの裁判所に提訴する(ウヌードゥル新聞2010年4月16日付電子版)。

こうした一連の措置は、ウラン鉱床が国家戦略重要鉱山に指定されており、採掘権の譲渡はモンゴル政府の承認が必要であることからくる。

なお、国家戦略的重要鉱山とは、タバントルゴイ炭鉱、マルダイ・ウラン鉱山、ドルノド・ウラン鉱山、ゴルバンボラグ・ウラン鉱山、オユトルゴイ銅金鉱山、ツァガーンソバルガ・銅モリブデン鉱山、エルデネト銅モリブデン鉱山、ブレンハーン蛍石鉱山、オラーン亜鉛錫鉱山、ツァブ亜鉛錫鉱山、アスガト銀鉱山、トゥムルト・ツァイル鉱山、ナリーンソハイト炭鉱山、ボロー金鉱山、バガノール、シベーオボー炭鉱山、などをいう(ウヌードゥル新聞2007年12月22日付)。

このように、国家所有としての鉱物資源(水資源をも含む)を厳密に管理しよう、という動きは、正当なものであり、注目されていい。(2010.04.25)

(追補)鉱物資源採掘権が付与された土地は、国土全体の24。6%を占めている。

鉱物資源採掘権を外国人に売却することを規制する関係法がない。そこで、「鉱物資源採掘権法」を作成する。(ウヌードゥル新聞2010年4月28日付電子版)。(2010.04.29)

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