モンゴルにおけるカジノの歴史(2010年3月27日)

筆者は、前回の時評でД.スレンホルによる「公金詐取事件」を取り上げた。この事件の背景には、「カジノ」の存在があった。Ц.チメドツェレンらによる「貯蓄銀行公金詐取事件」モンゴル・ガザル社のミャンガンバヤルもまた、「カジノ」に関わった。モンゴル人は、よほどカジノにのめり込むようである。

そこで今回の時評は、「モンゴルにおけるカジノの歴史」について、ウヌードゥル新聞(2010年3月27日付電子版)などに依拠して、取り上げたい。

「モンゴルにおけるカジノの歴史」は、1990年代半ば頃に始まる。当時、チンギスハーン・ホテルなど、3〜4カ所でカジノが開業していた。

1998年、Х.バイガル、Д.バトトルガ、С.バトチョローンの3議員(民主党)が「カジノ法」を立案し、国家大ホラル(国会)は、それを承認して成立した。その際、マレーシア企業による3議員への贈賄行為が明らかになった。

Ц.シャラブドルジ議員(人民革命党)がその「カジノ法」反対の急先鋒だった。結局、3議員が逮捕され、「カジノ法」は無効になった。

2007年1月8日、今度は、このЦ.シャラブドルジ議員(人民革命党)が、「限定的(注:外国人のみ、モンゴル人禁止)カジノ法」を立案した。政策立案議員は、彼に加えて、ニャムスレン(人民革命党)、ムラト、Ватж.バトバヤル、サイラーン、ゴンチグドルジ、バケイ(民主党)であった。

その際、「モリン・ノール」社が彼らに贈賄した(注:前回時評「元産業貿易省事務局長による公金詐取事件」では、「モリン・ノール」を「ザグドジャブの設立」と書いたが、ウヌードゥル新聞(2007年5月8日付)は、カジノを営業する「インペリアル・ゴールド」社の設立、としている。どちらが正しいのか、現在、確認を取っていない)。

その批判の高まりの中で、同法案提出が断念された。

当時、ハンオール区長Д.ザグトジャブは、チンギスハーン国際空港付近にその場所を提供した(注:同空港はハンオール区にあって、土地の使用権認可は区長にある)。

一方、「モリン・ノール」に賄賂を要求して、拒否された例のグンダライ議員(注:国民党[当時]、現在は民主党)は、別個に「カジノ法」を立案した。これも廃案になった。

この間、継続して賄賂を受け取っていたザグトジャブは、2008年に国家大ホラル(国会)議員になり、2010年に、Ж.エンフバヤル、ジェケイ、ハヤンヒャルバー、ツェンゲル、ボド(人民革命党)、Д.バトバヤル(旭鷲山)、Ватж.バトバヤル、バヤルサイハン(民主党)、アルタイ(無所属)らと共に、「カジノ法」を立案した。

同法案は、カジノを政府が34%以上の株式を所有すること、外国人に限ること、が明記されていた(注:法案作成・提案議員にはバヤンウルギー出身の議員が多い。またマレーシア企業も関係している。彼らのいう「外国人」とはアラブ人を想定しているかもしれない)。ここでも、「モリン・ノール」の贈賄行為があった。同法に対抗し、また、グンダライが「カジノ法」を提案した。これらもまた廃案になった。

以上である。要するにモンゴルでは、「カジノ」開設は禁止されているのである。

さて、「カジノ」というのは、周知の通り、「語源はラテン語の casa(郊外の小邸宅)。イタリア語で部屋または舞踏室を指す言葉として使われ、後に集会所、娯楽場や、軍隊用語で将校集会所を示す語となり、そこで賭博が興じられたことから今日では賭博場をいう。カジノの原型は、イギリスで1526年から2世紀半続いた、バッキンガム宮殿内の王室と貴族のための賭博室である。」(平凡社『世界大百科事典』)

現代世界では、「カジノ」は米国など世界各地に存在する。

先述の通り、モンゴルでは、法的に禁じられているため、コンピュータを利用した「賭博」が時々摘発される(例えば、最近では、ウランバートル市バヤンゴル区で摘発された。ウヌードゥル新聞2010年3月26日付電子版)。

また、韓国の「カジノ」に出かけるモンゴル人政治家、ビジネスマン、政府高官たちもいる。

しかし、「青少年への悪影響、治安悪化、暴力団などの犯罪組織の資金源になるなどの恐れ」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の「カジノ」参照)があるために、禁止されることが多い。

モンゴルでは、「青少年への悪影響」ではなく、まさに、「モンゴル人」、特に、「モンゴル政治(家)・ビジネス(マン)」への「悪影響」をこの「カジノ」は及ぼしているのである。(2010.03.28)

(追補)最近でも、スフバータル区第1街区にある「ツァガーンスルド」バーでカジノが摘発された。警察発表によると、同種の事件が20件近くがあるという(ウヌードゥル新聞2010年4月13日付電子版)。(2010.04.18)

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