元産業貿易省事務局長による公金詐取事件(2010年3月16日)

モンゴルでは、1990年代初頭から、資本主義経済制度が侵入し、汚職や詐欺事件が相次いで起こってきた。今回の時評では、政府の中枢で起きた事件を取り上げたい。

元産業貿易省事務局長Д.スレンホルが逮捕された(2010年3月16日)。

彼の容疑は、詐欺および公金詐取である。

すなわち、Д.スレンホルは、産業貿易省事務局長をしていた時、つまり2005年10月22日、産業貿易省庁舎の大修理施工の名目で、また、「国際市場研究センター」および「卸売りネットワーク」の実施の名目で、総額8000万トグルグを詐取した。また、省備品を売却した。

また、Д.スレンホルは、複数の市民から総額6300万トグルグを詐取した。

さらに、カピトロン銀行から100万トグルグの融資を受けたが返済していない。

加えて、彼は、産業貿易省所有のランドクルーザーを担保にして800万トグルグを借りた。

こういった手法によってД.スレンホルは、総額1億890万トグルグを詐取した。

Д.スレンホルは、弁舌さわやかな人物で、そのため、У.フレルスフ(注:現人民革命党書記長)の設立した人民革命党所属「モンゴル民主青年同盟」内の「赤いバラ生長運動」に入会できた。

さらに、З.エンフボルド国有財産委員会元委員長(注:現国家大ホラル[国会]民主党議員)の庇護の下で、「ボリガール」社副社長の職を得た。この会社の倒産後、イデブフテン人民革命党元書記長の推薦により、人民革命党大衆関係局局長に就任した。

Д.スレンホルが詐取した総計1億890万トグルグの使途は、カジノの賭け金である。

彼は、Д.ザグドジャブ人民革命党議員と密接な関係を築き、韓国へも同行してカジノで遊んだ(ウヌードゥル新聞2010年3月19日付電子版)。

なお、Д.ザグドジャブは、ウランバートル市ハンオール区選出の国家大ホラル(国会)議員で、前ハンオール区区長をしていた人物である。

Д.ザグドジャブは、「旭鷲(山)タワー」という高層建築内にカジノ場を開設するため、「モリン・ノール」を設立した。さらに、彼は、「カジノ法」案を作成し、国家大ホラル(国会)に上程しようとした(ウヌードゥル新聞2010年3月20日付電子版)。

さて、こうした汚職事件として想起されるのは、2007年02月28日に露見した「貯蓄銀行公金詐取事件」である。これは、モンゴル金融システムの中枢の一つで起きた事件であった。今度のそれは、モンゴル産業・貿易システムの中枢で起きたものである。

両者とも、現体制の屋台骨を支える人民革命党関係者が引き起こした。また、詐取した厖大な金額は、「カジノ」の賭け金に消えた。それは、全く愚かで非生産的な犯罪行為である。

こうした汚職・詐欺事件については、例えば、人民革命党の政敵である民主党の対外宣伝局長たちが編集した『汚職辞典』(ウランバートル市、2008年)に数多く記述されている。



(注:Ш.バトバヤル他編、『汚職辞典』、ウランバートル市、2008年。表紙は黒色である。本書は、2008年国家大ホラル[国会]議員選挙に向けて編集されたので、敵対勢力の「汚職」が数多く記述されている。「汚職」が蔓延していた、民主同盟連合政権時代(1996〜2000年)の「汚職」や自党関係のそれは割愛されている。)

「貧困」の深化を食い止め、「汚職」や「詐欺」の蔓延をなくすには、基本的は、侵入してきた資本主義諸制度を根絶するしかないのだが、これは、長い期間にわたる歴史過程を必要とするだろう。(2010.03.21)

(追補)上記産業貿易省事務局長の「公金詐取」に加えて、自然環境・観光省高官(民主党)の汚職も摘発された(ウヌードゥル新聞2010年6月11日付)。これは、違法に森林伐採の許可を与えた(注:賄賂により)、というものである。(2010.06.13)

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