国家大ホラル（国会）議員選挙が２００８年６月２９日に実施された。

その結果は、選挙前の予想と異なり（注：選挙前の状況については、以前の「時評」参照）、人民革命党４５議席、民主党２８議席、市民の意志党１議席、市民同盟１議席、無所属１議席をそれぞれ獲得した（暫定）。

この選挙結果をどう見るか。

以前書いたように、今回の争点は、当初は、物価値上がり対策、選挙戦に入ってからは、鉱山部門から将来得られる収益の国民への分配問題であった。

野党が問題にした汚職対策は、モンゴルには依然としてあるものの、С.バヤル政権成立によって、大きな争点にはならなかった。С.バヤルが組閣の際、汚職を固く禁じる協定文書に各閣僚が署名し、また、汚職問題を一貫して追及してきた市民の意志党が政権に加わっていた。

その状況のもとで、６月２６日、与党のС.バヤルと、野党のエルベグドルジ二人だけの政策討論がテレビ（ＴＶ５）で行われた。

その討論は、大方の見るところ、С.バヤルの具体的内容がエルベグドルジの抽象的内容を凌駕していた。

加えて、２００５年１月１６日、人民革命党書記長に就任したС.バヤルは、人民革命党の民主的改革を開始していた（ウヌードゥル新聞２００５年１月１７日付）。これは、かつて人民革命党支持率が４０％以上であったものが、３０％足らずに降下したのを受け、党内分派としてエンフトゥブシンたちの「伝統・革新ー民主・公正」グループが生まれ、エンフバヤル党首（注：当時）の独断的党運営を批判していたことから生じた事態であった。

こうして、２００６年５月１１日、人民革命党支持率の低下を食い止め、党内刷新のため、人民革命党幹部会が開催された。そこでの決議を受け、「人材育成、選抜、推薦、責任」のための運動を展開していた（ウヌードゥル新聞２００６年５月１８日付）。

例えば、人民革命党党内改革の一つとして、党費が中央に一括して納入されていたのを、初級組織が年間８０万〜１００万トグルグの独立した費用を拠出することにし、末端組織の足腰の強化が図られた。こうして、С.バヤル書記長は、「ここ１年以内に、（人民革命）党に望ましい大きな改革が起こり、党内が健全化し、多くの国民の信頼が回復するだろうと思っている」、と述べ（ウヌードゥル新聞２００６年５月２５日付）、さらに、「（人民革命）党が活性化し始めている」、とも述べた（ウヌードゥル新聞２００６年６月７日付）。

そして、党内民主化を求める党内分派党員たちの要求を受け、人民革命党第２５回党大会が開催され、С.バヤルが党首に選出された（２００７年１０月２６日）。このことについては、以前の時評に書いた。

この事態（注：С.バヤルが党首に就任したこと）のきっかけを作ったのが、皮肉なことに、実は民主党党首エルベグドルジであった（注：「以前の時評」参照）。

それはさておき、С.バヤルは、原則派であり、国民的人気が高まっていった。その一つの例として、民主党党内派閥である、ジェンコのХ.バトトルガが牛耳っているモンゴル民主同盟は、С.バヤルを人権擁護で顕彰していた（ウヌードゥル新聞２００６年１２月１１日付）。この時、Г.バーサン（自由老人同盟代表）が２部屋のアパートを贈与された（注：彼女も、選挙に立候補して落選）。

さらに、基本的に言えば、モンゴルは、１９９０年代の「経済混乱」から「貧富の差の拡大」（注：これらは、拙速な資本主義化をねらうＩＭＦ路線が生み出したものであった）、という状況の中で、モンゴル国民（注：およびモンゴル史）は、政府による強力な指導と調整を求めるようになっている。

最近の例だけを列挙すれば、１）鉱山部門の国家所有、２）そこから得られる収益の国民への平等な分配、３）貯蓄信用組合被害者への国庫による補償、４）給料・年金の大幅な増額、５）国家予算歳出額の増加など。

一方、民主党は、どのような行動を採ってきたか。

端的に言えば、エルベグドルジ首相解任以降、彼の怨念が民主党を動かしてきた。

すなわち、М.エンフボルド人民革命党主導政権に対する倒閣の動きだけが、ここ２年間、目立っていた。それ以外何ら効果的な対策を採っていなかった、と言っていい。

その結果、政治的混乱がここ２年間続いてきたのであった。モンゴル国民は、この「政治混乱」を嫌ったのである。

以上が、簡単な選挙結果分析である。

さて、民主党党首エルベグドルジは、２００８年７月１日１２時、選挙結果が不当に歪曲されたものである、という声明を出した。

エルベグドルジのこの行動は、上述の怨念の発露であった。

２００８年６月３０日２２：００〜翌３：５０、バトザンダン、マグナイ、ボルマーら（注：市民運動党立候補者）、人民革命党本部、および中央郵便局南交差点を封鎖。

７月１日１２：００、スフバートル広場と民主党前に集結。

１２：１０、民主党党首エルベグドルジ、選挙不正の演説。

１２：３０、ドラゴン・センターから、バトザンダン、マグナイ、ジャルガルサイハンら来る。

１３：００、選挙官邸東側に集結。

１３：２０、エルベグドルジ再び現れる。

１５：００、人民革命党本部襲撃。

１７：００、人民革命党本部焼き打ち。

２３：００、約８０００人集結。この内、組織者２０〜３０人。５人死亡。

７月１日４時から４日間、エンフバヤル大統領、戒厳令を布告。（「ムンフオルギル法務内務相の発表」より。sonin.mn ontslokh 2008.07.02）

この焼き打ち・流血、および文化遺産の略奪行為は、なぜ起こったか。

（焼き打ちされた人民革命党本部：山崎光高氏撮影）

（被害を被った隣接の文化宮殿：山崎光高氏撮影）

エルベグドルジは、７月１日１４時、「コミュニストを（注：人民革命党のことらしい。ちなみにモンゴルには公認された「共産党」は存在しない。ついでながら、民主党が「民主主義」を担っていると一般的に思われているが、これは誤解である。この「民主主義」というのは、初期資本主義における、何者にも拘束されない、弱肉強食の無秩序状態をさす。これは、「民主主義」ではなく、無政府主義に近い。皮肉にも、今回の「騒乱」がその証左となってしまった。民主主義には「義務」と「責任」が伴う。）完全に離れる（＝粉砕する）時が来た。この困難な時期に、我々を支持している人々に感謝する。我々が選挙（に勝利）したことをコミュニストは、一夜のうちにひっくり返した。それから離れる（＝粉砕する）時が来た」、と演説した（ウヌードゥル新聞２００８年７月２日付）。

エルベグドルジは、元来、口が軽く、ビジネス志向で（注：２００４年に首相に就任して方向転換したようだ）、２００６年以降は、М.エンフボルド政権打倒に狂奔していた。２００６年１月１３日、エルベグドルジ首相解任を審議する国家大ホラル（国会）総会で、「私は再び戻ってくる」という言葉を残して、彼は議場を後にしていた。

国家大ホラル（国会）法の規定によれば、選挙において最も多くの議席を獲得した政党・同盟の党首が首相に就任することになっている。このことは、逆に言えば、首相に就任するためには、選挙で最も多くの議席を獲得しなければならない。

選挙前の「予想」に反して（注：原因は上述の通りであるが）、多数議席を獲得できなかったエルベグドルジは、動揺した。それが上記の７月１日１４時（注：上記ムンフオルギル法務内務相発表では１３時２０分）の演説に表れている。

また、市民運動党（党首バトザンダン、副党首マグナイ）は、「健全な社会のための市民運動」が政党化したものである。この市民運動は、モンゴルにおける貧富の差の拡大を背景に、特にウランバートル市民の支持を受けてきた。彼らは、「市民運動」に飽きたらず（注：マグナイは、「市民運動はもう飽きた」と述べたことがある）、政党を結成し、第三勢力を形成した。

ともすれば、法を無視する傾向があった「健全な社会のための市民運動」は（注：３年前にも、政府官邸を「襲撃」し、政府官邸の窓ガラスを投石によって壊したことがあった。今回の「騒乱」は、この事態を拡大したものとなった）、「市民運動党」となり、憲法を遵守する政党として登録されたのであったが、彼らは政党法をよく理解していないようだ。

さらに、このデモ・騒乱には、民主同盟（代表Х.バトトルガ）が参加している。その中で、Ц.ソソルバラム（注：俳優、民主同盟メンバー）は、「殺せ！」と扇動した（ウヌードゥル新聞２００８年７月２日付）。このことは、事態の先鋭化に、民主同盟が関わっていることを示している。

民主同盟代表のジェンコのХ.バトトルガは、鉱山部門にも利権を持つ民主党内「独占実業家グループ」（エムジン記者）の代表格である。彼（ら）は、社会主義的傾向を強めるС.バヤル政権（注：鉱山の国家所有を表明）を打倒する意図があった。

彼らは、東欧で起こった流血の内乱を引き起こそうとしたが、結果的には失敗した。一つには、人民革命党内の青年組織である「モンゴル民主青年同盟」が動かなかったからであり、もう一つは（主要な要因であるが）、モンゴル国民が選挙結果を支持し、С.バヤル政権存続を求めたからである。

С.バヤルは、「まず襲撃を止めよ。その後、再選挙を行うのを人民革命党は恐れない」、「エルベグドルジは、国民の選択を否定し、騒乱を作り出した。これは、自らの失敗を他者に転嫁する行為である」、と述べた（ウヌードゥル新聞２００８年７月２日付）。これは、正当である。

では、なぜ「流血」の事態までに深刻化したのか。

この間の事情について、この「騒乱」に加わって負傷したЧ.ムンフバータルという人がこう述べている。すなわち、「我々はさらに闘う。私の生活がこの４年間でますます悪化した。これからも悪くなるだろう」（ウヌードゥル新聞２００８年７月２日付）。

ＩＭＦ路線をひた走る政府指導部の政策は、「貧富の差の拡大」を引き起こしてきた。これがモンゴル国民の絶望感を醸成していく。(2008.07.06)

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English Translation:

The State Big Khural ( National Parliament )'s election was implemented on June 29th, 2008.

As a result, unlike pre-election predictions, the People's Revolutionary Party won 45 seats, Democrats 28 seats, Civil Zorig party one seat, an independent one seat each (interim).

How does it see this election result?

The issue of this time was a prices rise at first, and from entering an election fight a problem of the distribution among the people with the profit which is gotten from the mine department in future.

The corrupt measure that the opposition party did to the problem still was in Mongolia but with the S.Bayar administration's formation, it didn't become a big issue. When S.Bayar formed a cabinet, each Cabinet minister signed the agreement document which prohibits corruption solidly, and the Citizen's Will Party which searched into the corrupt problem consistently, joined in the administration.

Under the situation, on June 26th, The only two's policy discussion among S.Bayar of the Government party and Elbegdorj of the opposition party was done with TV (TV5).

The concrete contents of S.Bayar surpassed the abstract contents of Elbegdorj in the discussion.

In addition, S.Bayar who installed People's Revolutionary Party's chief secretary on January 16th, 2005, had begun the democratic reform of this party ( January 17, 2005 of the Onoodor newspapers ). This receives the fact that People's Revolutionary Party's support rate which was equal to more than 40 % formerly fell being less than 30 %, and then " The tradition, the innovationーdemocracy and the justice " group of Enkhtubshin is born as the internal party offshoot and they criticized the dogmatic party management of Enkhbayar, party leader ( Note: those days )..

In this way, People's Revolutionary Party's party caucus was held in order to stop the decline of the support rate and to reform the internal party, on May 11th, 2006.

For example, as one of an internal party reform and the reinforcement of the leg lower back of the end organization, the beginner's class organization decided to donate the independent fee of 800,000 ~ 1,000,000 togrog in lumping together, not to pay the party expenses to the center, was attempted. Thus, General Secretary S. Bayar said, "within the past year, (Revolutionary People's) major reforms should happen to the party and the soundness, as the result, we will regain the trust of a lot of people" (in May 2006 25 Onoodor newspaper), and, "(People's Revolutionary) party has begun to revitalize the party" (June 7, 2006, Onoodor newspaper). 

Then, it accepted an order of the internal party off-shoot party members who demand internal party democratization, the rally of the 25th time People's Revolutionary Party was held and S.Bayar was elected the party leader ( October 26th, 2007 )

It is Democratic Party leader Elbegdorj that made the chance of this situation actually to the caustic thing.

Anyway, S. Bayar is a principle man and the national popularity rose. For one piece of the example, the Mongolian Democratic Union, which Kh. Battorga of Jenco is heading and is a Democratic Party internal party faction, awarded S.Bayar by the support of the human rights ( 11 dates of December, 2006 of Onoodor newspapers ). At this time, it donated an apartment at 2 rooms to Baasan ( the Free Old Person Union representative ) ( Note: Running for the election and lost).

In addition, basically speaking, In that situation, from the 1990s "economic chaos" to the "widening gap between rich and poor" (Note: These are the product of hasty lines IMF, aiming the homeland of capitalism), the people of Mongolia and Mongolia are seeking strong leadership and coordination by the government.

If only enumeration of recent cases, 1) state-owned mining sector, 2) an equal distribution of national income derived from it, 3) compensation of government for the victims of Savings and Credit Unions, 4) salary pension increased significantly, and 5)increasing state budget expenditures.

Meanwhile, what actions have the Democrats adopted?

Simply speaking, after dismissal of Prime Minister Elbegdorj, the Democratic Party has been run by his curse.

That is, only the move of toppling the government of the People's Revolutionary Party led by M. Enkhbold was conspicuous for these 2 years. Effective measures were not adopted any other, can I say.

As a result, here was the political turmoil that had lasted for two years. Mongolia's people hated , this "political turmoil".

This is a simple analysis of election results.

Now, in a statement, Democratic Party leader Elbegdorj, July Feb 1 12 pm, said that the election results were unfairly distorted , .

This behavior by Elbegdorj was a manifestation of the curse of the above.

June 30, 2008 22:00 - next day 3:50, Batzandan, Magnai, Bormaa (Note: Citizens Party candidate), blocking the People's Revolutionary Party headquarters and an intersection south and central post office.

July 1 12:00, Sukhbaatar Square and the Democratic Party gathered in front.

12:10, Democratic Party leader Elbegdorj , speaking of election fraud.

12:30, From Dragon Center, Batzandan, Magunai, Jargarsaihan came.

13:00, concentrated on the east side of government house.

13:20, Elbegdorj reappear.

15:00, attacked People's Revolutionary Party headquarters.

17:00, torching the People's Revolutionary Party headquarters.

23:00, about 8,000 people gathered. Of these, 20 to 30 people from the organization. 5 people died.

July 1 4:00 4 days, President Enkhbayar declared martial law. ( from "Minister of Interior and Justice Monkhorgil's announcement" Sonin.mn ontslokh 2008.07.02)

why did torching, bloodsheding, and looting cultural heritage happen?

Elbegdorj is July 1, 14 o'clock, "a communist (Note: The story goes People's Revolutionary Party. In Mongolia, approved "communist" does not exist. Incidentally, it is generally thought that "democracy "is responsible for democrats. This is a misunderstanding. This "democracy" is, in early capitalism, not tied to the incident, chaos refers to the law of the jungle. This is not democracy. Instead, close to anarchism. Ironically, this riot had become evident. democracy involves "duty" and "responsibility".) completely away (= to crush). The time has come. In this difficult time, we thank the people who supported us. Communists overturned our election (victory) overnight. it's time Away from it (= to crush) ".(July 2008 2 Onoodor newspaper).

Elbegdorj is originally a light mouth, business-oriented (Note: when in 2004 he became prime minister, he seems to change his stance), and 2006 onwards, he endeavored to topple М. Enkhbold administration. On January 13, 2006, discussing the dismissal of Prime Minister Elbegdorj at the State Parliament's General Assembly, he had left the chamber, leaving the word, "I come back again".

According to the provisions of the law, it is to be appointed prime minister that the leader of the Party or Alliance which won the most seats in the election. This is , conversely, to assume the prime minister must win the most seats in the election.

Contrary to "expectation" before the election, (Note: the causes are as mentioned above), Elbegdorj's party failed to win a seat. Elbegdorj was upset. The speech of July 1 14:00 (Note: The Minister of Interior and Justice Monkhorgil presented above 13:20) is reflected to this situation.

The Citizens Party (Batzandan leader, deputy leader Magnai) is the political party formed from "Movement of Citizens for a healthy society". This civic movement at the background of the widening gap between rich and poor in Mongolia, has received the support of citizens in Ulan Bator in particular. Tired of lcivil movement, (Note: Magnai said, "I'm tired of civic movement"), they formed a political party, a third force.

Too often tended to ignore the law, "Movement of Citizens for a healthy society" i(Note: three years ago, The official residence of the government "raid" and the government palace Stone-throwing broke through the glass window. This "riot" proved to expand this situation) became to be "Citizens Party". Nearby, the party had been registered as complying with the Constitution, but they do not seem to understand the political party law.

In addition, this demo mayhem, the Democratic Alliance (representative Kh. Battolga) are participating. Among them, Ц. Sosorbaram (Note: actor, member of Democratic Alliance) said, "Kill!", instigating (July 2008 2 Onoodor newspaper). This isharpening of the situation shows that Democrats are involved.

The Democratic Alliance representative Genco Kh. Battolga is representative of the Democratic party which has interests in mining sector and are "Groups of monopoly businessmen" (press-woman Emjin). He/they is/are intended to overthrow S. Bayar administration that shows an increasingly socialist (Note: He announced the state-owned mines).

They intended to inform bloodshed-civil war which happened in Eastern Europe, and ultimately failed. For one thing, the youth organization of the People's Revolutionary Party ,"Mongolian Democratic Youth League" did not work, and from one other (which is a major factor), the people of Mongolia supported the result of election and seeked the survival of S. Bayar administration.

S. Bayar said, "First, Stop the attack. Then, the People's Revolutionary Party do not be afraid of the re-election", "Elbegdorj denied the choice of the people, and created a disturbance. This shifts its own failure to the other"(2 July 2008, Onoodor newspaper). This is reasonable.

So, why did it come to be serious to "bloody" situation?.

About the circumstances of this "riot", Ch. Monkhbat who was involved and the injured, said, "We fight more. My life became worse in four years. It Will be worse in the future" (July 2008 2 , Onoodor newspaper).

IMF policies by Government leaders which forge ahead on the route, are "widening gap between the rich and the poor". This continues to foster this sense of hopelessness of the people of Mongolia.