
IMFはモンゴル政府の経済政策を非難(2008年03月11日)
IMF(国際通貨基金)モンゴル調査団およびIMFモンゴル駐在員たちは、2008年3月11日、記者会見を行って、モンゴル政府の経済政策を非難した。彼らは(わずか)二週間(のみ)モンゴルに駐在して、関係官庁から資料を収集し分析を行った(ウヌードゥル新聞2008年3月12日付。なお、IMFのwebサイトを見ても、その詳細な内容はまだ公開されていないようである)。
彼らによれば、(モンゴル)経済が急速に伸びている。銅世界市場価格の高騰を受け、国家予算歳入が増加した。
これと共に、歳出が増え、2007年度国家予算歳出額は、前年より60%も増加した。2008年度国家予算歳出額は、2005年比で3倍に増加した(特に給与引き上げ)。
短期間に60〜70%引き上げするのは、物価値上がりを誘発する。
年金額も増額された。だが、必要な階層に届いていない。
また、資本投下額も増加した。(その)経済効果が悪い。
(「祖国の贈り物」構想について)1回限りで多額の金額(注:5万トグルグ)を国民に支給すれば、インフレ率の安定化を損なう。
2008年度国家予算の中で、歳出額の12%が福祉向けである。そうではなく、(この金額を)資本投下に向けるべきである(保健、教育インフラなどに)。
インフレ率が2006年に6%だったのに対して、2008年1月には17.5%になった。これは、公務員給与と社会福祉予算の増額、マネー・サプライと銀行融資額の増加が影響を与えている。
(インフレの)外部要因としては、(ロシアの)石油価格値上げ、税関での滞貨などがある。
インフレが資本投下をゆがめ、貧困層を直撃している。
これらを回避するには、公務員数を削減し、彼らの給与引き上げを行わないか小幅にとどめること、資本投下効率を高めるなどによって、国家予算歳出額を引き下げることである(ウドゥリーン・ソニン新聞2008年3月12日付)。
以上である(注:太字は著者による)
さて、このIMFによるモンゴル政府の経済政策非難は、予想通りであった。
IMFは、1990年以来、モンゴルの急速な資本主義化を意図し、融資供与を名目に、モンゴルの経済政策を先導してきた。
この状況の下で、2004年の国家大ホラル(国会)議員選挙での「祖国・民主同盟」の事実上の勝利、「子供に毎月1万トグルグ余支給」などの政策、鉱物資源の国家所有(注:論議中)、などが実行されている。これらは、社会主義的経済手法である。
IMFは、これらの政策に反対してきたのであった。
まず、インフレは、年金および公務員給与額引き上げや、社会福祉予算増額(注:「子供に毎月1万トグルグ余支給」は社会保健労働省の管轄である)によって起こったのではなく、
モンゴル経済の構造的欠陥である、輸入依存体質がもたらしたものである。
次に、IMF経済政策立案家にとって、年金や公務員の給与を一度に50%ないし20%も引き上げるのは、確かに「非常識」であるかもしれない。しかし、一度でもモンゴルに居住してみればわかるように、元々の給料が少ないのであるから、50%(あるいは20%)の引き上げなどは微々たるものである。わずか2週間のモンゴル滞在で、彼らにはその実情が理解できないであろう。
第三に、資本投下は、インフラが発達していない状況下で、国家による当該部門(教育インフラ部門を含む)へのさらなる国家予算歳出を必要とする(注:「援助依存体質」を改めなければならないのは当然であるが)。
第四に、モンゴル国民は、アパートの取得のため、低利の銀行融資を求めている。
このように、モンゴルの実情を知らず、従来のIMF経済政策に従わないという理由で、モンゴル政府の経済政策を批判するのは、全く筋違いと言うべきである。これは、モンゴルの「経済独立」にも反することは言うまでもない。(2008.03.16)
