
三つの社会事件について(2005年09月19−22日)
今週は、この1週間に起こった三つの社会事件について採りあげる。いずれも現代モンゴル社会を象徴している。
ウヌードゥル新聞(2005年09月19日付)によると、国税庁長官は、国税庁職員のために住宅建設会社を設立し、政府認可を受けた。そして、その会社を自分の妻や弟たちに経営させ、国税庁経理から24万トグルグ余の資金援助をした。検事局はこれを不法とみてこの長官を取り調べた。
このように、国家資金を私的に流用することは、モンゴルでは珍しいことではない。かつて、1996−1999年、社会保険庁長官は、社会保険庁職員の給料を流用し、5階建てアパートを建設し、他社に転売した(ウヌードゥル新聞[2004年12月23日付]。
国内外の資金を不法に流用して、肥え太っていく富豪層が輩出している。
2005年9月21日深夜02時40分、ウランバートル市バヤンズルフ区セレンゲ・ホテル向かい側にある、マグナイ・トレイド社経営のガソリン・スタンドに覆面をした賊が押し入り、3人の従業員のうち1人を刺殺し、現金16万トグルグ(約1万6千円)を奪って逃走した。
その賊(3人)は、まもなく逮捕された。学生たちであった。主犯格の学生は、今夏、このガソリン・スタンドでアルバイトをしていた。その時、刺殺された男性従業員(妻子あり)に借金をしたという(ウヌードゥル新聞2005年09月18日、19日付)。
地方に目を向けると、ヘンティー・アイマグでは、知事のジャルガルを更迭する動きが活発化している(ウヌードゥル新聞2005年09月22日付)。
これより先、ウムヌゴビ・アイマグで同様の動きがあった。ウムヌゴビの方は、人民革命党出身知事であった。これに対し民主党国家大ホラル(国会)議員が地方政治に干渉したものであった(注:この事件を調査した人民革命党中央委員会書記エンフトゥブシン発言による。ウヌードゥル新聞2005年09月21日付参照)。
これに対し、ヘンティー・アイマグの方は、
先の地方選挙(2004年10月17日)で旧「祖国・民主」同盟が勝利し、知事に民主党員ジャルガルが就任した。
このジャルガル更迭の動きに対し、彼がМ.エンフサイハン(前民主党党首)派だという理由で、当該アイマグ出身のДа.ガンボルド元副首相とエルベグドルジ首相が支持している、という。
地方政治は、中央政治に影響を受けないわけにはいかない。ヘンティー・アイマグでは、
中小商工業経営主の現状不満が潜在している。彼らが今後のモンゴルの行方に大きな影響を与える。
この3つの事件は、モンゴルの歴史ではかつてみられなかったものであり、言い換えると、モンゴルの伝統には違背する出来事であった。こうした「泥棒資本主義」とでも言うべきものがモンゴルを席巻している。(2005.09.25)
