
ヘンティー・アイマグの中小企業の訴え(2005年03月01日)
ヘンティー・アイマグは首都ウランバートルおよびトゥブ・アイマグの東に位置する。人口7万946人。面積8万300平方キロメートル。16ソム、3市。ウンドゥルハーン(ヘンティー・アイマグの中心)からウランバートルまで331キロメートル、車で1日の行程である。このアイマグの特徴の一つは、ブリヤートに隣接する関係から、その北部を中心にブリヤート人が居住することである(6223人)(「ヘンティー・アイマグ80周年統計集」、およびヘンティー・アイマグのwebサイトより)。
(画像はウンドゥルハーン市庁舎、ヘンティー・アイマグのwebサイトのもの)
2004年地方議会選挙(2004年10月17日)では、当時の「祖国・民主」同盟が多数派を占めた。全国21アイマグおよびウランバートル市で人民革命党が勝利したのに対し、その内の3アイマグだけが前「祖国・民主」同盟が勝利した。その3アイマグ(フブスグル、スフバータル、ヘンティー)のうちの一つがこのアイマグであった。この勝因の一つは、ブリヤート人の反ロシア、反中央政府感情のためであろう。
だが、それだけではその要因を説明できるものではなかった。では、その他の勝因は何か。それが今回の「モンゴル時評」の目的である。
ヘンティー・アイマグは、スフバータル・アイマグ、ドルノド・アイマグと共に、東部地域を構成する。当該地域は、将来、北東アジア地域構想の要諦になる。また、モンゴルの海洋への出口の起点となることが予想されている。そのため、日本政府およびその下請機関も虎視眈々と「援助」に暇がない。一方、モンゴル側も、バガバンディ大統領が今年1月29日から2月2日にかけて、ヘンティー・アイマグに地方視察を行って、将来を見据えた対策を立案している。
モンゴル発展のカギの一つは、中小零細企業の自生的発展にある。
モンゴル政府ももちろんそれを自覚しており、商工業省が「中小企業支援基本計画」を策定し、
中央・地方での会議・聞き取りを行っている。ヘンティー・アイマグでも政府とヘンティー・アイマグの中小企業主との集会が開かれた(2005年2月28日)。
その中で、ヘンティー・アイマグの中小企業主たちがその苦情を訴えていた。
それによれば、ロシアとの三大合弁企業の一つ、モンゴルロスツェベトメト社が1700万トグルグの飲料水利用料を地方予算に納入していないにもかかわらず、中小企業に課せられる付加価値税が高額である、国内産小麦粉の市場競争力が弱く、政府保護が必要である(中国やロシアの価格が40〜50%安価)(「ボーダイン・ツァツァル」社(農業)副社長)。
工場賃貸料(月額10万トグルグ以上)を払っている、自前の工場を建てるために融資を受けようと思うが、返済期間が短く、利子が高い(8%以上)、担保が必要である、設備を担保にできるようにしてほしい(「ヘルレン」飲料工場主)。
ウランバートルから建築資材を運んでいるので、運送料が高額である、地元に煉瓦工場が必要である(「バヤン・ウンドゥル・マナル」社長)。
3年前から営業している、設備更新が必要になっている、資金がない(「オラン・ヒーツ」木工工場主)。
この記事を掲載したウヌードゥル新聞(2005年03月01日付)は、<(ウランバートルの)大企業によって締め出されるヘンティー・アイマグの中小企業の訴え>という見出しを付けている。
ヘンティー・アイマグは、ウランバートル市から比較的近く、バガ・ノール中央電力網から電力が供給され始めた。ホルショー(協同組合)の活動も活発である(筆者たちはその一つに
調査したこともある)。そのアイマグで、合弁大企業寄りの政策をとる一方、中小企業の発展が阻害されているのである。
ヘンティー・アイマグの人々の不満も募る。先の国家大ホラル(国会)議員選挙(2004年6月27日)では、人民革命党がヘンティー・アイマグ3議席を独占したにもかかわらず、地方議会選挙では敗北した。その要因の一つが中小零細企業の窮状にある。(2005.03.08)
