ホルショー(協同組合)は貧困緩和に寄与するか(2003年05月07日)

モンツァメ通信(2003年05月08日)によると、来る5月29日から30日にかけて、ウランバートル市のホルショー組合員の大会が開かれる。この大会では、「ホルショーの現在と未来」というテーマで、2週間前から開催準備をする、という。

これに先立ち、同様の動きは、フブスグル・アイマグ(県に相当、以下同じ)でもある。ツァガーン・オール・ソムの、家畜を失った牧民86戸が、「ツァガーン・オーリンハン・ホルショー(協同組合)」を設立し、小規模店舗、パン屋、大工業、温水、保育園、野菜園を作り、自家用の他、余剰品を市場に出すことになった(モンツァメ通信2003年05月05日)。

さらには、アルハンガイ・アイマグ長官は、ホルショーは貧困緩和に寄与するとして、次のように語っている(モンツァメ通信2003年05月07日)。アルハンガイ・アイマグでは、1)各ソム(県に相当)でホルショーが創設された、2)資料運搬用馬買い入れのための低利融資が行われる、3)研修会が開催される、4)現時点で、30以上のホルショーがある、その業種の内訳は、農牧業16、各種23、信用組合14、5)3000マントグルグの収益を得た、6)数十種の雇用場所を創出した、7)貧困緩和に役立つ、8)アイマグの各種予算から5400万トグルグを支出する、という。

こうした一連の動きは、政府が2003年を「ホルショー発展の年」と規定し、ホルショー設立に力を入れているからに他ならない。

ホルショー(協同組合)設立の動きは、歴史的に見れば、第1期として、1920年代から存在する。これは、政府の強制を伴ったので失敗に帰した。第2期は、1950年代から「ネグデル模範定款」が作成され、ネグデル(農牧業協同組合)が創設された。この形態の協同組合は、基本的にはモンゴルの伝統に合致していると思われるが、1)政府によるインフラ基盤の整備、2)社会保障の確立、という積極面と、3)家畜の「国家調達」という「搾取」による、牧民組合員の創造性・自主性の喪失、という否定的側面を伴った。こうした反省の上に立って、1990年代には、牧民たちの自主性を基盤にしたホルショー(協同組合)設立の動きが生まれた。これが第3期である。だが、市場経済化、という無政府的な資本主義に巻き込まれ、生産物の販路を失い、資金が枯渇して、消失していった。

それを蘇生させようというのが、今回の動きである。これが第4期である。

だが、問題点がいくつかある。第一に、やはり、政府が関与している。協同組合設立の動きは、モンゴルでは、遊牧の伝統に合致しているにもかかわらず、一貫して、政府の関与の下で行われてきた。結局、そのことが、発展を阻む結果となった。今回の動きもまた、世銀などの世界援助機関の関与の下で、「貧困緩和戦略」(2001年に策定)と連動している。

貧困化は、資本主義化の進行の下で顕在化した。それを資本主義が「緩和」する、というのは、皮肉な話である。「無謀」というほうが正しい。すなわち、資本主義諸機関が「貧困」を「緩和」するために、「協同組合」を利用する、というのは、論理的に矛盾する。

第二に、今回の動きは、ガン(干害)およびゾド(雪害)という、ここ数年来の、モンゴルを襲っている自然災害(一部は人災)に対する、対策として生まれている。これは、歴史的には、「小経営生産様式」の崩壊の下で形成された、「社会主義への道」、に一部は対応する。だが、グローバリズムの下でのアメリカ支配が進行する中で、その政策を遂行せざるを得ないモンゴル政府が関与しているという点で、その成功する道は、極めて険しい。

第三に、それにもかかわらず、いわゆる「マーケット・マミー」と呼ばれる、小規模商人たちとの連携や、小口金融(彼らの能力に合致した)の普及(皮肉にも世界銀行がハス銀行支援をしている)の有効利用、などを行うことにより、わずかではあるが展望もある。

これらをモンゴル国民がいかに克服し、利用するか、にモンゴル社会の今後がかかっている、と言ってもいい。(2003.05.13)

(追補)筆者たちのグループは、2003年08月、ヘンティー・アイマグのガルシャル・ソムでしっかりと根を下ろし、着実に成長している、「ボヤント・オルギル・ボラグ」ホルショーを調査した。その著作権はグループ全体のものなので、ここでは詳述できないが、その肯定面は確認できた。こうした動きは、セレンゲ・アイマグ、アルタンボラグ・ソムの「ジムス・ズギー(果物蜜蜂)」ホルショーでもあって、このホルショーは、良質の小麦や飼料用牧草を生産し、灌漑システムを持つ、模範的なホルショーであるといわれる(モンツァメ通信030813)。(2003.08.19)

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ボヤント・オルギル・ボラグ・ホルショー
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