
続々・2004年国家大ホラル(国会)選挙後の混乱(2004年07月17日)
モンゴルでは、11日から13日まで続いたナーダム祭りが終わってから、政治的混乱がさらに続いている。
ナーダム明けの7月14日、
グンダライが国営テレビを「襲撃」した罪で起訴された(ウヌードゥル新聞2004年07月14日付)。これに対し、グンダライは記者会見で抗議声明を出し(7月16日)、自分だけが起訴されたことは遺憾である、議員には免責特権があってどんなことも許される、これはニャムドルジによる政治的報復である、などと語った(ウヌードゥル新聞2004年07月17日付)。この元気者は、現在も2件について起訴されているが、出廷せず審議が延期になったままである。元気なのはいいが、法は万人に平等なのであって、議員に特権があるのではない。民主党には、バト=ウールなど、こういう考え方をする人物たちが多い。困ったものだ(後注:なお、グンダライへのこの「起訴」(=警察局による立件)は、検事局によって不起訴処分となった。UBポスト紙電子版2004.07.29参照。[2004.07.31])
さらに、7月14日、人民革命党幹部会は、他党との協議を呼びかけた。これに対し、7月15日、民主党は、人民革命党の呼びかけに応じる用意がある、との声明を出した(ウヌードゥル新聞2004年07月16日付)。
前に指摘したことでもあるが、首相指名(組閣)には3つの場合がある(注:国家大ホラル(国会)法第23〜16条)。1)39議席以上を獲得した党・同盟による、2)いずれも39議席に満たない場合は最も多数を獲得した党・同盟による、3)最も多数を獲得した党・同盟がない場合、すなわち同数の場合はすべての党が協議して、議場で多数決によって決定する。この時点では、人民革命党36議席、「祖国・民主」同盟34議席、無所属3議席、共和党1議席であった。ただし、「祖国・民主」同盟本部長エンフサイハン民主党党首は、無所属の3人は民主党員であるから、「祖国・民主」同盟が多数派になった、と勝利宣言をしていた。だが、「祖国・民主」同盟は、選挙期間中にはこれら3候補は民主党から除名された人物たちであり、彼らに投票しないように呼びかけていた。彼らが当選したとたん、民主党員である、というのは筋が立たないことであろう(注:法律学者ナランゲレルによれば、無所属立候補者には2種類ある、一つは、単独で801人の推薦人を立てて立候補したもの、もう一つは、党籍があってもその党から推薦されないためやむなく無所属で立候補したもの、というふうに[ウヌードゥル新聞2004年07月14日付]。しかし、こうした無所属候補の規定は選挙法その他には存在しない)。
こうしたことが背景にあって、エンフサイハンら民主党側も歩み寄ったのであろう。
同じく7月14日、第59選挙区選挙管理委員会は、当該選挙区第17地区で再投票を17日に行う、という決定を出した(ゾーニー・メデー新聞2004年07月15日付)。これに対し、当該選挙区「祖国・民主」同盟側立候補者(オトゴンバヤル)が行政裁判所に異議申し立てを行った(注:この申し立ての結果、同選挙区選挙管理委員会のこの決定は延期になった[ウヌードゥル新聞2004年07月17日付])。
7月15日、第59選挙区選挙管理委員会による、第18、22地区での再投票実施決定を巡る、行政裁判所の審議が行われたが、裁定は翌日に持ち越された(ウヌードゥル新聞2004年07月16日付)。
7月16日、行政裁判所による審議の結果、第59選挙区の第18地区で再投票を17日に実施する決定が出された(ウヌードゥル新聞2004年07月17日付)。なお、第22地区での再投票決定は否定された。
5月17日、第59選挙区第18地区で再投票が実施された。その結果、人民革命党候補者グルラグチャーが当該地区で77.9%の得票で勝利した。その他の地区の結果をあわせて、同候補が勝利した。「祖国・民主」同盟は、これを不法として再投票をしないよう呼びかけて、再投票を妨害していた(モンツァメ通信2004.04.18、ウヌードゥル新聞2004年07月19日付、ゾーニー・メデー新聞2004年07月17日付、ウドゥリーン・ソニン新聞2004年07月17日付参照)。
これに対し、「祖国・民主」同盟側は、この再投票は不法であって認められない、としている。17日実施のこの再投票風景をテレビ局がそろって放送していたが、その有権者へのインタビューを視聴すると、再投票では、
人民革命党側が、6月27日実施の投票に対して、「目には目を」というわけで、あらゆる手段を行使したようだ。現行選挙法では、罰則規定はない。選挙法改正が必須である。
この結果、人民革命党37議席、「祖国・民主」同盟35議席(注:第24選挙区での再投票は行政裁判所によって否定され、当初のエンフボルドが当選した)、無所属3議席、共和党1議席(暫定)となった。
そうすると、首相指名(組閣)は、先ほどの3つの場合のうち、2)に該当することになるが、先行き不明である。いずれにしろ、無所属候補および共和党候補の動向がキャスティング・ボードを握ることになるのは避けられまい。
かつて、2000年の米大統領選挙後の混乱で、米国が世界の笑いものになったが、そういう事態をモンゴルは回避しなければならない。(2004.07.22)
