ホブド・アイマグで第二の「ツェツェグ・ノール・ドゴイラン」が起こる可能性(2011年4月12日)

筆者は、この「モンゴル時評」でフシュート石炭鉱山をめぐる問題を取り上げてきた(注:「フシュート石炭鉱山を国家戦略鉱山に指定するよう要求(2010年5月3日)、および「続・フシュート石炭鉱山を国家戦略鉱山に指定するよう要求(2010年5月10日)」)。

そこで述べたとおり、ホブド・アイマグにあるフシュート石炭鉱山は、ウムヌゴビ・アイマグにあるタバントルゴイ石炭鉱山に匹敵する良質の石炭(コークス炭)が埋蔵されている。

この石炭鉱山は、現在のところ、15の「国家戦略鉱山」に指定されておらず、私的資本による開発が可能である。「国家戦略鉱山」であれば、国家所有となり、私的資本(注:自然破壊の懸念が高い)の関与する余地が狭められる。

モンゴルでは、国家所有の鉱山を(注:モンゴル憲法は天然資源は国有であると明記している)モンゴル人自身で開発しようという要求が強くなっている。これは、極めて当然のことであり、またモンゴル発展のための譲歩できない点であろう。

ところが、ここにきて「ウヌードゥル新聞」(2011年4月14日付電子版)の報ずるところによれば、ホブド・アイマグ地方行政府は、二・三日前(2011年4月11日ないし12日)、モ・エン・コ社(100%中国資本)と、フシュート石炭鉱山からの石炭搬出を承認する契約を結んだ。

これに国家大ホラル(国会)議長デムベレル(ホブド・アイマグ選出の国家大ホラル[国会]議員)が関与している。その結果、第二の「ツェツェグ・ノール・ドゴイラン」が起こる可能性が高い(ウヌードゥル新聞2011年4月14日付電子版)。

「ツェツェグ・ノール・ドゴイラン」というのは、А.アヨーシを指導者とする牧民運動のことで、19世紀末から20世紀初頭にかけて、「ツェツェグ湖(ノール)」に依拠して、封建領主の搾取に反対して粘り強く闘われた牧民たちの闘争のことである(注:詳しくは村井宗行「アヨーシの牧民運動について」、および「前期牧民運動の帰結」参照)。

このアヨーシの反封建闘争が清朝からの独立(1911年)や人民革命(1921年)に影響を与えたという見解は、モンゴルの広く認められた定説になっている。

アヨーシ(牧民運動)、スフバートル(人民革命)、ゾリク(民主化運動)、С.ガンバータル(市民運動)たちが、少なくとも、モンゴルの対外勢力からの「独立」には反対していなかったし、あるものは強く求めていたというのは、否定できない事実である。

いま、「ツェツェグ・ノール・ドゴイラン」が再現されようとしている。(2010.04.17)


トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ