2009年大統領選挙立候補者名決定(2009年4月3日)

モンゴル憲法は、4年毎に実施される大統領選挙立候補者を国家大ホラル(国会)に議席を有するその時点の政党・同盟が推薦する、と規定している。また、大統領の3選は禁じられている。

モンゴル国大統領選挙は、1993年(民主党推薦オチルバト候補当選)、1997年(人民革命党推薦バガバンディ当選)、2001年(人民革命党推薦バガバンディ当選)、2005年(人民革命党推薦エンフバヤル当選)に実施され、今回の大統領選挙は、2009年5月24日に実施される。

2009年時点で、国家大ホラル(国会)に議席を有する政党・同盟は、人民革命党、民主党、市民の意志党、高フ党の4党である。

そこで、2009年4月3日、人民革命党はエンフバヤル、民主党はエルベグドルジを大統領選挙立候補者に推薦した(ウヌードゥル新聞2009年4月4日付)。その後、市民の意志党と高フ党は、民主党推薦候補を支持することを決定した。

この結果、2009年大統領選挙は、エンフバヤル候補とエルベグドルジ候補の間で争われることが明らかになった。

Н.エンフバヤルは、1958年生まれ。1975年ウランバートル市第23中学卒業、1979年モスクワ市文芸大学(翻訳・通訳専攻)卒業。1980〜1990年モンゴル作家同盟勤務、1990〜1992年文芸委員会副委員長、1992〜1996年国家大ホラル(国会)議員、文化相、1996〜1997年人民革命党書記長、1997〜2005年人民革命党党首、2000〜2004年国家大ホラル(国会)議員、首相、2004〜2005年国家大ホラル(国会)議長、2005年〜モンゴル国大統領。

Ц.エルベグドルジは、1963年生まれ。1981年エルデネト市第1中学卒業、1988年ウクライナ市リボフ国防大学(ジャーナリズム専攻)卒業。1988〜1990年「赤い星」新聞記者、1990年「アルドチラル」新聞編集長、1990〜1992年国家小ホラル議員、1992〜1994年国家大ホラル議員、1995〜1996年モンゴル民主同盟代表、1996〜2000年国家大ホラル(国会)議員、1998〜1999年首相、2000〜2003年米国ハーバード大学留学、2004〜2005年首相、2006〜2008年民主党党首、2008年〜国家大ホラル(国会)議員。

選挙戦術はそれぞれ、エンフバヤル候補が「団結と発展」「民主、倫理、実務、<祖国の贈り物>の実現」、エルベグドルジ候補が「民主的な大統領」「倫理、強力な政治、新しい財源」である(ウヌードゥル新聞2009年4月6日および7日付。なお、エルベグドルジの選挙公約についは、sonin[電子版]2009年4月3日付に掲載されている)。

さて、この大統領選挙をどう見るか。

まず、エンフバヤル候補の選挙公約は、2005年の選挙公約に加えて、2008年に発表された「祖国の贈り物」構想が盛り込まれている。2005年の選挙公約は、人民革命党の党綱領に基づいていた。その綱領は、「社会民主主義」路線を踏襲している。

エルベグドルジ候補の選挙公約は、米国流初期資本主義的発展をめざし、その際の「民主主義」を標榜している。

すなわち、両者の「発展」構想は、ほぼ同じである。たとえて言えば、頂上に登るのに、東方から上るか、西方から登るかの違いだけである。

これは、人民革命党、民主党の両陣営とも、相似的に、選挙対策委員長を党首が、事務局長を書記長が務めており、「倫理」に基づいた選挙運動を呼びかけていることにもあらわれている。

結局のところ、С.バヤル政権が人民革命党と民主党から組閣されたことがこうした結果をもたらした。両者のどちらが大統領になっても、С.バヤル政権の行動に制約が生じない。

従って、両政党から構成され、行政機構内部に複雑に配置された両党の利害には影響が及ばない。

となると、両候補についての人物評価が大きな比重を占めることになる。

エンフバヤルは、1990年以降、文化相、議員、党首、議長と順調に政治的キャリアを積んできた。彼は、人民革命党党綱領を「社会民主主義」に転換するのを主導した(注:それ以前の綱領は「民族民主主義」的であった)。その自信が、彼を「独断的である」との否定的評価を生み出している(注:それに加えて、彼は、市民運動側から「汚職」の攻撃対象となった。だが、このことは、モンゴル社会では普遍現象であるというモンゴル人の共通認識のため、両者の選択に大きな影響を及ぼさないだろう)

エルベグドルジは、1989年末に開始された「民主化運動の13人」としてモンゴル現代史に登場した。彼の「弁舌」はなめらかで、人々を動かす。だが、それが「なめらかすぎて」、「仇」となり、2008年7月1日の「騒乱」の「煽動者」となった。彼は、その責任を取っておらず、未だ起訴されていない。

このように、両者は、「肯定面」と「否定面」をあわせもつ。

今後の推移に注目するしかないだろう。(2009.04.12)

トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ