身体障害者のデモ(2008年06月05日)

国家大ホラル(国会)は、2008年5月29日、「交通法」と「老人・身体障害者社会保険法」を改正し、身体障害者に対するバス運賃を有料化した。

これに対し、「視覚障害者国民連合」、「身体障害者市民連合」、「聴覚障害者国民連合」は、2008年6月5日、各自が鎖で身体を結びあい、スフバータル広場、ウランバートル市役所前、政府官邸前でデモ行進をした。そして、民主党と人民革命党本部前でハンストを宣言した。




(注:筆者写す)

彼らは、「不法な行為を止める」、「扶助料がない」、「差別反対」のプラカードを掲げていた。

モンゴルには12万人の身体障害者がいる。彼らの年金額は生活不能の水準である。だから、バス乗車運賃有料化は、不当である。このため、スフバートル広場でデモを行う。当局は、わずかな扶助料(月額6000トグルグ)で問題をごまかそうとしている。問題が解決されるまで、我々は闘うと、「身体障害者市民連合」代表С.サインバヤルは述べた(以上、ウヌードゥル新聞2008年6月6日付参照)。

身体障害者のハンガーストに対し、民主党エルベグドルジは、彼らの主張を支持し、1)「交通法」に拒否権を発動するよう大統領に働きかけること、2)「交通法」の実施を延期すること、3)この問題を再審議するための臨時国家大ホラル(国会)を招集するように国家大ホラル(国会)議長に申し入れたこと、などを述べた(ウヌードゥル新聞2008年6月7日付)。

これは、首肯できるが、パフォーマンス好きで実行力に乏しいエルベグドルジの言うことは、実現が難しい。特に第3項目は、選挙で浮き足立っている民主党候補者が承服するはずがないだろう。

さて、身体障害者によるこのデモ行進の背景には、第一に、バス会社の経営不安がある。その主たる原因は、石油価格の値上がり(注:そのほとんどをロシアからの輸入に依存している)である。

かつて、バス乗車運賃値上げを要求して、バス会社はストライキをした。その際の要求項目の一つは、身体障害者運賃(=ゼロ運賃)の見直しであった。

バス会社の要求を受け、国家大ホラル(国会)は、ゼロ運賃を廃止し、身体障害者に月額6000トグルグの扶助金を支給することにしたのである。この金額は、物価の急激な値上がりの中で、不十分なものとなっている。

従って、この金額を見直して増額するか、ゼロ運賃に戻すか、いずれかの政策を講じる必要がある。

第二に、モンゴルの経済政策を牛耳るIMF(注:その背後に米国をはじめとする資本主義国がいる)がモンゴルに干渉し、国家予算歳出額削減を要求している。その際の標的が社会福祉予算額の削減である。

その政策実施の結果、社会的弱者(および貧困層)が犠牲になる。彼らの民生向上を視野に入れない政策は、国家の経済政策とはいえない。(2008.06.08)

(追補)上述のエルベグドルジに続いて、人民革命党は、2008年6月8日、身体障害者側と合意に達し、人民革命党書記У.バルスボルドと「視覚障害者国民連合」代表М.バヤスガランは、人民革命党本部前で行っていたハンストを中止し、この法律(注:「交通法」と「老人・身体障害者社会保険法」)を見直すための文書に署名した(ウヌードゥル新聞2008年6月9日付)。

選挙前に敢行した彼らのデモ行進は、こうして身体障害者側が要求を勝ち取ったのであった。(2008.06.10)

(追々補)一方、エンフバヤル大統領も、年金生活者、身体障害者への無料パスを廃止した法律(注:「老人・身体障害者社会保険法」改正)に対し、拒否権を発動した(ウヌードゥル新聞2008年7月29日付)。(2008.07.30)

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