
私営大型バス会社がストライキ(2007年11月20日)
ウランバートル市内には、360台以上の大型バスが運行しているが、この内、40%が「公営」大型バス(注:ここでいう「公営」というのは、正確には、「経営の民営化」によって、私企業に経営委託された大型バス。「バス1」、「バス2」、「バス3」など)である。そして、残りの60%が(真の意味の)私営大型バスである。
最近の物価値上がりの影響で、私営大型バスは、10月20日からバス運賃を300トグルグに値上げした。一方、「公営」大型バスは200トグルグで運行している。
こうした状況の中で、私営大型バス14社(注:「バス組合」、「エルデネトランス」、「アチバス」、「モン・カラ」、「ソタイ・ボヤント」社)は、2007年11月20日朝7時〜9時、ストライキを決行し、バス運行を中止した。
彼らの要求は、1)バス運賃をすべて300トグルグにして、運賃の差をなくすこと(注:200トグルグで運行している大型バス運賃を300トグルグに値上げしろ、という主張)、2)ウランバートル市からの補助金を増額すること、であった。
これは、いささか虫のいい要求のようであるが、その根拠はないことはない。
ウランバートル市の試算によれば、1回のバス運行によって、乗客一人当たり500トグルグが必要である。
市からの補助金は、2006年が総額45億トグルグ、2007年が60億トグルグである。この補助金は、バス会社が警察、身体障害者、高齢者、学生たちの乗車に対して、割引およびゼロ運賃で運行していることへの補償の意味がある。
ストを決行した私営大型バスは、市とのバス運行契約時には、燃料費(ガソリン代)が1リットル300トグルグであったが、現在は1リットル1000トグルグに値上がりしている。ところが、補助金は30%増額されただけである。
これに引き続き、私営大型バス14社は、2007年11月21日22時、Ц.バトバヤル・ウランバートル市長と交渉した。
市長は、物価値上がり対策として、バス運賃を200トグルグに下げさせることを自らの課題としている。だから、彼は私営大型バス会社の乗車環境の悪さ(注:バスが汚い、など)を非難し、彼らの要求をはねつけたた。一方、バス会社側は、これに抗議し、翌日にも再度ストを行うと宣言した。
そして、私営大型バス会社側は、11月22日早朝、バス運行を再度止め、9時には、交渉相手をウランバートル市議会議長Н.ボロルマーに変更した。
この戦術は、なかなか巧妙であった。
というのは、Ц.バトバヤル市長はМ.エンフボルド前首相派であり、ボロルマー市議会議長はエンフバヤル大統領派である。
両者の権力闘争は、С.バヤルが人民革命党党首になり、М.エンフボルドが敢然と首相職を辞任して、収束したかに見えるが、そう簡単には両者の対立が解消しないだろう。
予想通り、彼女(注:市議会議長)は、即時、私営大型バス会社の要求を支持し、政府および国家大ホラル(国会)に善処するように伝達すると、いささか筋違いかつ性急に約束した。
そこで、彼ら大型バス会社は、11時からバス運行を再開した(以上、ウヌードゥル新聞2007年11月21日および23日付参照)。
私営大型バス会社によるストライキは、
最近の物価値上がり(注:特に石油価格)がバス会社の経営を圧迫していることに原因の一端(注:根本的な原因ではないにしろ)がある。
だが、ウランバートル市民は、物価値上がりによる生活状況悪化に直面していて、乗車運賃300トグルグの200トグルグへの値下げを望んでいるだろう。
それに加えて、ウランバートル市では、冬の寒さが厳しくなり(注:気温が零下二ケタ台)、大気汚染が深刻化している。
いずれにしろ、この問題は、С.バヤル新政権が最初に取り組むべき課題となっている。(2007.11.26)
(追補)2007年11月27日、С.バヤル首相は、「物価対策調査委員会」(注:委員長はЦ.ダワードルジ産業貿易相代行)委員たちと会談し、大型バス乗車運賃を200トグルグに引き下げる政府方針を伝えた(ウヌードゥル新聞2007年11月28日付)。(2007.12.02)
