労働組合連合が物価値上がり反対のデモ行進をした(2008年04月18日)

モンゴルでは、現在、インフレ率が12〜17%といわれる。特に、モンゴル人の常食の一つであるパンの値上がりが顕著である。モンゴル人の間で親しまれている「円形パン」の値段が、600トグルグから800トグルグに、最近、突如値上がりした。

このパン値上がりに抗議して、「モンゴル老人同盟」の約20余人は、2008年4月17日、パンなどの製造を行っている「タルフ・チヘル」と「アルタン・タリア」両社にデモをした。

彼らは、小麦粉の価格安定化政策が取られ、政府と企業が今年6月までパンを値上げしない協定を結んだにもかかわらず、企業がなぜ値上げしたのか、と抗議して、「アルタン・タリア」社と「タルフ・チヘル」社(Х.バトトルガ所有)に対し、パン価格値上げの理由を明らかにするように要求した。

「アルタン・タリア」社は、当社に抗議するのではなく、政府に抗議すべきである、としてつっぱねた。

一方、「タルフ・チヘル」社(注:Х.バトトルガ所有。彼は、ジェンコ・グループ会長。国会議員。国営企業民営化の際、安い入札価格で「不当」に落札。その資金を銀行から融資を受け、[当然のことながら未確認であるが]、未返済のままらしい)は、政府から小麦粉を受け取っていない、と回答した(ウヌードゥル新聞2008年4月18日付)。

話は横道にそれるが、Х.バトトルガは、「モンゴル民主同盟」の代表をもつとめている。これに反対し、古参の「モンゴル民主同盟」メンバーたちは、「モンゴル民主化運動党(МОНАРХН」)を結成した。

彼らは、Х.バトトルガがジャーナリストを買収して、様々な(不正の)事実の隠蔽を行っている、と非難している(ウヌードゥル新聞2008年4月18日付)。

話を本筋に戻すと、この「タルフ・チヘル」社によるパン代値上げは、「便乗値上げ」の疑いが濃い(ウヌードゥル新聞2008年4月14日付)。

(後注:その後、ウヌードゥル新聞は、独自にパン価格の試算を行った。それによると、「アルタン・タリア」、「タルフ・チヘル」両社のパン価格は、496トグルグであり、それを670トグルグで売っている。この試算が正しいとすれば、両社は、便乗値上げを行った、ということになる。ウヌードゥル新聞2008年4月24日付参照)

モンゴルにおける「物価値上がり」に対し、IMFは干渉した。これも「不当」であった。

この物価値上がりの根本的な原因は、以前に、この「モンゴル時評」で書いたように、主要生産物を国内で生産していないことにある。

こうした事態を背景にして、モンゴル労働組合連合(注:13労働組合加盟、議長С.ガンバータル。彼は、市民運動「ソヨンボ」代表。専門は経済学で、「鉱山法」改正作業にも参加)は、2008年4月18日、(大環状道路西方交差点南西側の)労働組合文化会館前からスフバートル広場まで、デモ行進を行った。

若者から老人までを含む人々の行進は、(エンフタイバン大通りの)国立百貨店前から中央郵便局前までに及んだ。歩行者やウランバートル市民たちもこの行進を支持していた。


(ウヌードゥル新聞2008年4月19日付掲載)


(山崎光高氏撮影)

彼らのスローガンは、「物価値上がり阻止」、「国家大ホラル(国会)と政府は仕事(の義務)を遂行せよ」、「社会保険料資金を国庫から銀行に移せ」、などであった。

С.ガンバータル議長たち5人の代表は、国家大ホラル(国会)議長および首相と交渉するため、政府官邸に入った。

一時間後、彼らは、政府官邸から出て来て、С.バヤル首相が彼らの要求を受け入れ、物価値上がり阻止のための対策を両者が検討すること、社会保険料資金を銀行に移すための関連法案を国家大ホラル(国会)に提出すること、などに合意した、と発表した(ウヌードゥル新聞2008年4月19日付)。


(手前がモンゴル労働組合連合С.ガンバータル議長。ウヌードゥル新聞2008年4月22日付掲載より)

なお一方、ロシアを訪問していたС.バヤル首相は、ロシアから小麦を緊急輸入する、と発表した(ウヌードゥル新聞2008年4月19日付)。

「市場経済」という名で侵入した資本主義(注:モンゴルで確立したとはいえないし、また、確立することはできない)は、物価値上がりを伴って、年金生活者や貧困層を苦しめている。(2008.04.20)

(追補)上述の「モンゴル老人同盟」は、エンフバヤル大統領、ルンデージャンツァン国家大ホラル(国会)議長、С.バヤル首相に要望書を提出した。

これには、
1)「アルタン・タリア」、「タルフ・チヘル」両社が独占によってパン価格のつり上げを行ったことを調査すること、
2)これらの行為をやめさせること、
3)両社の会計監査を行って、課税すること。、
4)「タルフ・チヘル」社の民営化を再調査すること(注:上述のХ.バトトルガに関する記述参照)、であった。
(ウヌードゥル新聞2008年4月23日付)(2008.04.27)

(追々補)筆者は、物価値上がりの根本問題に、国内生産が行われていないことを指摘したが、小麦に関しても同様のことがいえるのであって、モンゴルでは、1989年には、小麦が72万トン生産され、そのうち、国内消費に40万トンが回され、余剰部分は輸出していた(ウヌードゥル新聞2008年4月24日付)。現在、それを回復させる必要性がある。また、歴史的には、その可能性は十分にあるのである。(2008.04.27)

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