限定納税免除法案について(2008年02月01日)

モンゴルというのはおもしろい国で、脱税企業法人や個人を救済する措置が講じられようとしている。

この法案は、「限定納税免除法」と名付けられている。

議員立法による、この法案の提案者の一人ニャムドルジ議員(人民革命党)(注:その他、バヤルツォグト議員[民主党]などが含まれる)によれば、限定納税免除法案は、2001年と2003年に協議されたが、支持されなかった。

今回は、2007年12月29日に成立した税法改正に連動し、成立する模様である。

すなわち、この法案によって、2006年12月31日以前の脱税行為を1回に限り恩赦する(後注:この年限が2007年12月31日までさらに拡大された[2008.02.09])。

ただ、ニャムドルジによれば、この法案は、特定の個人に恩赦を与えるためのものではない、という。

この法案が成立すれば、1)銀行融資の利子が下がる、2)不良債権が減る、3)納税者の税負担が軽減される、4)証券取引が活発になる、といった利点があるという(注:説得力が乏しいけれども)。

同法案は、2008年1月31日、国家大ホラル(国会)予算・法務合同常任委員会で承認された。シャラブドルジ議員(人民革命党)が唯一反対した。

この法案が成立すれば、Д.ダグバドルジ、Г.アランザル、Ц.ガンチョローン、Д.ニャムスレン、Р.ボロルマー、Т.ソヨルト、Д.ソーリンジャブ、С.ボルドヘト(注:ナラン・マーケット社長、元国家大ホラル[国会]議員)、Б.エンフサイハン、О.チョローンバト(注:前モンゴル銀行総裁、С.В.パウショク(注:「アルタン・ドルノド・モンゴル」社社長)などが恩恵を受ける(以上、ウヌードゥル新聞2008年2月1日付)。

同法案は、翌日の2008年2月1日、国家大ホラル(国会)総会で審議された。

オドンチメド議員(人民革命党)は、支払い能力があるにもかかわらず、意図的に脱税をした企業や個人がいる、と述べて、この法案に反対した。

結局、この法案は、定足数に達せず(注:定足数40人のところ出席議員37議員のため)、継続審議になった(ウヌードゥル新聞2008年2月2日付)。

今までにも、国家大ホラル(国会)では、「銅・金特別税」法(2006年05月12日)とか、「各選挙区に2億5000万トグルグ支給」法(2006年12月01日)などという、少し首をかしげるような法案が成立した。

この「限定納税免除法」についても、大統領か憲法裁判所が拒否するかもしれない。まじめに納税した企業や個人は納得しないだろうし、オドンチメド議員が指摘するように、「意図的に脱税」した企業や個人が「得」をすることになる。

この法案の背景には、モンゴルの企業や個人の税負担が重いことがあるが(最近の税法改正で税率が10%に引き下げられた)、それでもこうした「モンゴルの特殊性」だけではすますことができない、問題の多い法案である。(2008.02.03)

(追補)С.ナランゲレル(法学博士、アカデミチ、モンゴル国立大学法学部学部長)は、この「限定納税免除法案」が国民の納税義務を規定したモンゴル憲法に違反する、と述べた(ウヌードゥル新聞2008年2月5日付)。これは、予想通りであり、首肯できる。(2008.02.06)

(追々補)結局、2008年2月6日、限定納税免除法案は国家大ホラル(国会)で承認された(ウヌードゥル新聞2008年2月7日付)。

こうして、2月7日、旧大晦日(ビトゥーン)に、2007年度秋期国家大ホラル(国会)は閉幕した。(2008.02.09)

(追々々補)にエンフバヤル大統領は、2008年2月15日、限定納税免除法に対し拒否権を発動した(ウヌードゥル新聞2008年2月18日付および20日付)。これを受け、国家大ホラル(国会)は、2週間以内に承認か未承認かを決議しなければならない。(2008.02.20)

トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ