
モンゴル国立銀行から多額の資金紛失(2007年10月16日)
モンゴルでは、1990年代以降、銀行の不正事件が数多く起こっている。最近では、それが
貯蓄銀行で起こった.。ここへきて、モンゴルにおける金融政策の元締めである、モンゴル国立銀行で多額の資金紛失が明らかになった。
以下、それについて説明する。
2007年10月16日、国家大ホラル(国会)経済常任委員会が開かれた。
その席上、モンゴル国立銀行の金融政策が審議された。その中で、モンゴル国立銀行の誤りが指摘された。
例えば、「金融公庫」の保有金が払底している。
その原因は、
1)私企業への融資、
2)「アルタン・ドルノド・モンゴル」社(社長С.パウショク[ロシア人])から高額での金を買い入れ、
3)ジェラルド・メタル社(注:商業発展銀行を所有していた。後述)への支払い金など、
これらを併せて、3000〜4000億ドル(注:国家予算総額の約30%に相当)の欠損を計上した。
4)ロシア「クレジット・トラスト」銀行を通じて、1000万ドルのロシア国債購入用資金を預金し、当銀行倒産により預金を失った(注:2003年、チョローンバト前総裁の時期)(ウヌードゥル新聞2007年10月17日付)。
1)について。
マレーシアのSIL(ストーンレイ・インターナショナル)社に対し、モンゴル銀行が約束手形5630万ドルを発行した。この約束手形が行方不明になっている。また、その発行に2市中銀行を巻き込んでいる。これらの銀行はこの事件を知らない、といっている。
これに関し、2007年10月17日、国家大ホラル(国会)経済常任委員会が再び開かれ、А.バトスフ・モンゴル国立銀行総裁は、5630万ドルの内、3490万ドル分の信用手形を凍結し、残りの2140万ドル分の凍結を現在進めている、と答弁した。だが、その信用手形の行方については、同総裁は答弁できなかった。
SILへの信用手形発行は、政府の「4万個アパート建設」計画の資金の一部とする目的があったという(ウヌードゥル新聞2007年10月18日付)。
2)について。
この事件が明るみに出るや、С.パウショクは(注:ロシア・マフィアだといわれている)、「銅・金特別税」支払いを拒否していたが、このほど、国税庁に同税支払いを通告してきた(ウヌードゥル新聞2007年10月19日付)。
(補注:・「アルタン・ドルノド・モンゴル」社は、2007年12月25日、モンゴル国立銀行に対し、1400万ドルの金担保金を返却した。ウヌードゥル新聞2008年1月18日付)。
これは、モンゴル国立銀行事件が契機になって、アルタン・ドルノド・モンゴル社へのモンゴル国民の攻撃を懸念したものであろう。
3)について。
ジェラルド・メタル社へは、
商業発展銀行民営化のために、6000万ドルが出資されたのではないか、という疑惑がある(ウヌードゥル新聞2007年10月18日付)。
これがさらに、一部の政治家たちにペイ・バックされたのではないか、というウワサもある。
4)について。
クレジット・トラスト銀行への1000万ドル振り込みについては、О.チョローンバト同銀行前総裁は、これらの取引が世界で(注:資本主義社会で)常に行われている行為である、という趣旨の答弁を、5分間行って退場した(ウヌードゥル新聞2007年10月18日付)。
О.チョローンバトは、次期国家大ホラル(国会)議員選挙出馬がウワサされており、それを巡って政治的ライバルによる攻撃、という側面もある。
以上が、この事件のあらましである。
国家大ホラル(国会)では、さらに議員調査グループを作って、この問題を追及する動きもあり(注:Б.バトバヤルと、例のグンダライが要求している)、今後、問題が拡大するかもしれない。
この事件に関し、М.ゾリグト国家大ホラル(国会)議員(市民の意志党)は、次のような趣旨のことを述べている。
モンゴル国立銀行事件の起こる背景には、「4万戸アパート建設計画」のための資金や、対ロシア負債返済金などの資金調達問題がある。
市中銀行の資金が少ない時期には、モンゴル国立銀行が市中銀行に代わって、商取引をしていた時期があった。現在は、市中銀行の資金が多くなったので、モンゴル国立銀行の商取引は、法律通り停止するべきである。
モンゴル銀行総裁が交代し、金融政策が変わったことも背景にある(注:チョローンバト前総裁はエンフバヤル派、バトスフ現総裁はニャムドルジ[=М.エンフボルド]派)。
この事件によって、モンゴル国立銀行に対する国際的評価が下がった(ウヌードゥル新聞2007年10月18日付)。
妥当な意見であろう。(2007.10.21)
