民主党、民主新社会党、市民の意志・共和党による「三角同盟」成立(2004年02月23日)

国家大ホラル(国会)に議席を有する、民主党、民主新社会党、市民の意志・共和党は、2004年02月23日、「三角同盟」結成に署名した。これは、エンフサイハン、エルデネバト、オヨンたち、各党党首が民主党本部に集まって行われたものである。この旧正月(ツァガーン・サル)第三日目の出来事は、各新聞が一斉に報道した(ウドゥリーン・ソニン新聞2004年02月24日付、モンゴリン・メデー新聞2004年02月24日付、ウヌードゥル新聞2004年02月24日付、ゾーニー・メデー新聞は1日遅れて2004年02月25日付)。

民主党および市民の意志・共和党は、この問題をめぐって、これまで党内対立が激化していた(詳しくは「続・2004年国家大ホラル(国会)選挙に向けての政争」および「続々・2004年国家大ホラル(国会)選挙に向けての政争(2003年12月19日)」参照)。

民主党は、エンフサイハン現執行部と、アルタン・ガダス・グループ代表・ゴンチクドルジとの間で、激しく対立していた。そして最近、ゴンチクドルジは、エンフサイハンに対し公開書簡を送り、「多くの問題を解決する民主的原理がわが党(=民主党)になくなり、あなた(=エンフサイハン)が独断で決定するようになった。自分の意見を述べた党のメンバーを追放しようとしている。選挙が間近になったこの時期に、党を停滞状態に陥れている。民主党を自らの政治勢力の土台にしようというあなた(=エンフサイハン)の試みに対し、民族評議会のメンバーの多くが反対している」、と言っている(ウヌードゥル新聞2004年01月19日付)。

市民の意志・共和党も、現執行部(オヨン、ガンホヤグたち)、反執行部(С.オトゴンバヤル、ダリ・スフバータル、Д.バータルゾリグ、Т.エルデネビレグ、Х.ホランたち)、旧共和党の一部(ジャルガルサイハンたち)の三グループに分裂し、一時は、「共和党」という党名登録、および「市民の意志党」という党名復活の動きも見られた。だが、最高裁判所はこの申請を認めなかった(ウヌードゥル新聞2004年01月07日付)。

それが「突然」と言っていいほど急に「三角同盟」が成立したのには、三つの理由が考えられよう。

第一には、市民の意志・共和党のジャルガルサイハンの行動があげられる。市民の意志・共和党が2004年2月18日、国民委員会を開いた時に、同党現執行部に反対するグループの代表たち、すなわち、副党首ジャルガルサイハンやオトゴンバヤルも出席していた(ウヌードゥル新聞2004年02月19日付)。そして、党内組織問題が党則に則って討議され、三角同盟参加が決議されたらしい(新聞報道はされなかった)。

ジャルガルサイハンが、この決議に反対しなかった。彼は、「第三勢力」論者である。それが、反対意見を表明しながら、この決議に従ったのは(民主主義的ではある)、もはや、ジャルガルサイハンが「第三勢力」を結集する財政的基盤を失っているからである。つまり、政治家であるジャルガルサイハンは、ボヤン社の実質的な経営者でもある。このボヤン社が、2001年8月17日、丸紅・香港支店によって、債務返済不履行でロンドン裁判所に告訴され、2004年4月17日にその判決が出ることになっている(ウヌードゥル新聞2004年02月19日付)。この裁判に敗訴すれば、債務返済がその連帯保証をしたモンゴル政府によってなされるとしても、ボヤン社は(すなわち彼は)破産(人)ということになり、政治活動は無論、経済活動も不可能になる(これに関しては、エンフバヤル政権との秘密協定があるかもしれないが)。そこで、ジャルガルサイハンは「第三の道」論を留保し、「三角同盟」結成決議に従ったのである。

第二には、民主党アルタン・ガダス・グループのゴンチクドルジたちが主張していた、国家大ホラル(国会)選挙立候補者割当数問題で、ゴンチクドルジたちの主張する「56:20」が受け入れられそうな模様なので、彼が「三角同盟」結成を受け入れたことがあげられる。

ただ、この問題はまだ玉虫色で、市民の意志・共和党に「少なくとも5人」を割り当てる、となっているだけで(ウドゥリーン・ソニン新聞2004年02月24日付)、それを民主党の「56」からなのか、民主新社会党の「20」からなのか、不明である。

いずれにしろ、この「三角同盟」に署名した、市民の意志・共和党にとっては、譲歩であったことは間違いない。市民の意志・共和党党首オヨンは、ウヌードゥル新聞(2003年06月10付)によるインタビューで、「市民の意志・共和党が譲歩して、立候補割当数が減少しても(最小限5人)、同盟することを優先した。議会勢力配置の適正化、議会の監視機能の強化、といった側面を重視したからだ。だが、(三角)同盟の綱領を作る必要がある」、と述べていることからも、それが明らかである。

一方、民主党ゴンチクドルジは、激しくエンフサイハンを攻撃したことも「忘れ」て、「目的を達して皆ホッとしている。党内に意見対立がないから、私がエンフサイハンに公開書簡を送ったのだ」、と調子のいいことを言っている(ウドゥリーン・ソニン新聞2004年02月27日付)。ただ、頭脳明晰で、数学の天才とも言われるゴンチクドルジのことだから(一方、そのため、陰謀を好み、演説上手という反対の側面があることは、1990年代でのこれまでの行動が物語っているが)、「忘れ」たわけはなく、「党の統一のためだからといって、特別に誰か一人を支持するということはしない」、と釘をさしているから、これからまた一波乱があるかもしれない。

第三に、そして、いうまでもなくもっとも主要な理由なのだが、それは選挙目当てだからである。最近、与党人民革命党は党員数が増加し、13万1000人になったという(モンツァメ通信2004.02.12)。分裂したまま選挙戦に突入すれば、野党は敗北必至である。

今後どうなるか、国際援助機関の活動を含めて、観察し続けたい。(2004.03.01)

トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ