
2010年度予算に大統領が拒否権発動(2009年12月10日)
国家大ホラル(国会)は、2009年12月10日、2010年度予算をに可決したが、12月10日、大統領がその予算に拒否権を発動した。
この拒否権発動に関して、大統領府長官は、12月14日、記者会見をし、拒否権発動の理由を説明した。それによれば、2010年度予算の内の「各選挙区への資本投下額760億トグルグ」は、2012年に実施される国家大ホラル(国会)議員選挙のための各選挙区出身議員のためのものである、という(ウヌードゥル新聞2007年12月15日付)。
これに対し、国家大ホラル(国会)民主党会派は、2009年12月14日、大統領の拒否権発動を受け入れないことを決めた(ウヌードゥル新聞2007年12月15日付)。
一方、国家大ホラル(国会)人民革命党会派は、2009年12月14日、協議を行い、大統領が予算全体を否定したので、これを「真剣に」討議すべきだとして、結論を出さなかった(ウヌードゥル新聞2007年12月15日付)。その後、民主党会派に同調することを決めた。
そして、2009年12月15日、国家大ホラル(国会)法務委員会が開かれ、大統領の拒否権発動を受け入れないことを採決した(モンツァメ通信2009年12月16日電子版)。
さらに、2009年12月17日、国家大ホラル(国会)総会は、2010年度予算への大統領の拒否権発動を受け入れなかった(出席議員57人のうち44人、77.2%で)(ウヌードゥル新聞2007年12月15日付)。
だから、今更、このことについて論評するのも気が引けるが、補足すると、今回の拒否権を発動した大統領は、民主党推薦で当選した人物である。
その民主党は、自党推薦大統領の拒否権発動を受け入れなかった。これは、何を意味するか。
民主党は、一応、現在のСv.バトボルド連合政権の一角を形成しているが、一人一党のビジネスマン政党の性格が強い。
現在の選挙制度は、小選挙区制を採用していて、各選挙区への議員の貢献度によって当落が決定する性格が強い。実は、この制度を変更して比例代表制にしようとする動きはあった。С.バヤル前首相が提唱したものだった。だが、当時の民主党党首はそれに反対した。一人一党の民主党議員たちが自分の選挙区に十分資金を投入していたので、その金がムダになることをおそれたためであった。
こうして、2008年に国家大ホラル(国会)議員選挙が小選挙区制で実施されたが、前職の当選率をみてみると、人民革命党が45議員の内20人(44.4%)、民主党が28議員の内18人(64.3%)、というふうに、民主党の方が前職が多かった。
このことは、各議員への「国家によるばらまき資金」が、民主党議員にとって、より魅力的であったことを意味する。
その民主党党首が現在の大統領である。彼の行動は矛盾する。
しかも、前回の拒否権発動は、各選挙区への資本投下額についてのみであった。今回は、予算案全体を大統領は拒否した。
だから、これは、例によって大向こう受けをねらった行動であると言わざるを得ない。
民主党議員は、現在のСv.バトボルド連合政権に参加している党員(議員)に対する敵対心が大いにある。政権に積極的に参加している党員(議員)は、主として、アルタンホヤグ現党首を筆頭とする「アルタンガダス」派が多い。これに対して、最近「エルデネ・ホビ」派が結成された。その派閥に現大統領が参加している(注:政治的中立を規定する憲法に違反する)。
従って、政権不参加の派閥による現政権揺さぶりという性格も否定できない。
いずれにせよ、以前のこの「時評」でも指摘したように、「地方分権」が確立しない限り、そして今回指摘したように、選挙制度を変えない限り、国家大ホラル(国会)議員への各選挙区住民の依存度は低くならないであろう。(2009.12.20)
