鉱山開発に関する政党懇談会とジャルガルサイハン(2008年02月22日)

エンフバヤル大統領は、2008年2月22日、国家大ホラル(国会)に議席を有する政党の代表(注:人民革命党、民主党、民族新党、市民の意志党、共和党、国民党。祖国党は欠席)を招いて、鉱物資源の開発問題に関して諮問した。

共和党をのぞく各党は、大統領と政府の政策に大筋で賛成した。

そして、鉱山部門に国家所有度を高めるための「鉱山法改正」作業グループ(注:現在、人民革命党、民主党、首相、産業貿易相で構成されている)に5党(注:民族新党、国民党、市民の意志党、共和党、祖国党)を加えるよう、彼らは主張した。

だが、共和党のジャルガルサイハンだけは、鉱山部門に国家が関与することに反対した。特に、民主党エルベグドルジの唱える「1000ドル支給」計画案は、選挙目当ての根拠薄弱な妄言であると強く非難した(ウヌードゥル新聞2008年2月25日付、ウランバートル・ポスト新聞電子版2008.02.28)。

バザルサドィン・ジャルガルサイハンは、1959年、ウランバートルに生まれた。1977年、10年制第23中学校を卒業し、1982年、旧ソ連イルクーツク市の高等専門大学で宇宙物理学を修めた。1982〜84年にゴビ社勤務。1988〜89年、自ら「ボヤン」というхоршоо(協同組合)を設立した。そして、1989年に、それを「ボヤン」社に改組した(2004年まで社長)。モンゴル民主化運動が興ったとき、彼も参加し、1990年5月26日、モンゴル最初のNGO「モンゴル失業者連盟」の設立者の一人となった。更に、1992年資本家党という政党を結成した(その後共和党と改称)。2002年、共和党は市民の意志党(注:2000年結成。党首はゾリグの妹オヨン)と合同したが、2003年、「祖国・民主同盟」結成をめぐって、分裂した。2004年、再び共和党を設立した。2004年から国家大ホラル(国会)議員。2006年、М.エンフボルド人民革命党主導政権に入閣した(産業貿易相)。2007年、同相を解任された(Монголын Ардчилсан Холбоо, Тvvхэн Товчоон, Улаанбаатар, 2003、40−42ページ、173ページ参照)
)。


(ジャルガルサイハン。写真は国家大ホラルwebページ議員名簿掲載のもの)

ジャルガルサイハンは、その行動原理として、独立独歩の(企業)活動を好む。

2004年、「祖国・民主同盟」が国家大ホラル(国会)議員選挙向けに結成されたときに、「子供に毎月1万トグルグ支給」という公約が掲げられた。

ジャルガルサイハンは、「自由な(国内)市場経済」のもとで、「自分の払った税金を自分が使えばモンゴルは発展する」(ウヌードゥル新聞2004年3月2日付)、と述べて、その公約に反対した。

また、「援助(融資)に頼る政治をやめさせる」(ウヌードゥル新聞2002年2月5日付)とも述べていたことがある。

だが、ジャルガルサイハンの思想と行動は、二つの点で、モンゴルでは受け容れられがたいだろう。

第一に、最近、モンゴルは社会主義的傾向を強めている。「子供に毎月1万トグルグ余支給」、「新婚家庭に50万トグルグ支給」、「公務員給与のたびたびの増額」、そして最近の「鉱物資源の国有化比率の引き上げ論議」など。

歴史的にみて、これは、(モンゴル的な)社会主義を経過している国では不可避のものである。モンゴルの歴史と国民の思潮は、ジャルガルサイハンの思想と行動に適合しない。

第二に、ジャルガルサイハンは、独立独歩の経済活動を志向していたにもかかわらず、対丸紅負債問題では、その反対の行動を取ってしまった。

これは、端的に言えば、彼の経営する「ボヤン」社(注:カシミヤ加工業)のために、当時のジャスライ人民革命党政権の債務保証によって、日本の丸紅香港支店から融資を受け、融資返済ができなかった、という「事件」であった。もちろん丸紅は、慈善事業ではなく、モンゴル「進出」(侵略)のための糸口を探ったものであっただろう。

いずれにしろ、この対丸紅負債は、彼の会社経営と政治家としての行動を制約している。

結局、いささか動作粗暴で、けんか好きな(注:そのためМ.エンフボルド政権下での産業貿易相を解任された)、このモンゴル起業家は、勤勉だといわれている日本で行動すれば、容認されるであろう。

すなわち、ジャルガルサイハンは、モンゴル随一の、「資本主義者」(注:民主党出身の会社経営者たちなど足元にも及ばないであろう)である。(2008.03.02)

(追補)人民革命党党首С.バヤルと民主党党首エルベグドルジは、2008年3月12日、鉱山法改正に同意した、と発表した(ウヌードゥル新聞2008年3月13日付)。なお、その他の政党による、改正作業グループ参加要求は、無視されたようである。これは、国家大ホラル(国会)内外において論議の種になるであろう。(2008.03.16)

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