モンゴル政府、アイバンホーマインズ社との「自動継続契約」に合意(2007年04月10日)

銅・金鉱床のあるオユトルゴイ鉱山は、将来のモンゴル発展の鍵を握る鉱山である。


                        (ウヌードゥル新聞2007年02月01日付掲載図を補正)

この鉱山の銅・金採掘権は、様々な論議を呼んできているが、カナダのアイバンホーマインズ社が所有している。

モンゴル政府と、アイバンホーマインズ社およびリオティント社は、このオユトルゴイ鉱山の採掘に関する、30年にわたる「自動継続契約」締結(注:正確には、「鉱山法」改正により、「投資契約」というべきであろうが、新聞報道は従来の用語を用いている。従って、その用法に従う)の合意に達した(注:国家大ホラル(国会)未承認)。

なお、アイバンホーマインズ社は、資本規模が小さいので、リオティント社が資本参加している。

「自動継続契約」により、モンゴル側がオユトルゴイ鉱山の株式34%と、その収益の55%を取得することになった。

この「契約」は、15条157項目からなる。2010年から銅鉱脈の露天掘り、2014年から地下採掘をする。2014年〜2020年には、モンゴルの経済成長に多大な貢献をする。

将来、純銅生産のための投資が期待できる。

銅・金特別税は免除される。

労働力の90%はモンゴル人とする。

GDPを40%上昇させる。

その収益を国民に分配する(方法は未定)(ウヌードゥル新聞2007年4月11日付)。

一見、いいことずくめのようであって、「モンゴルの良心」ともいうべき、С.オヨン議員も、エンフバヤル大統領の英国訪問の随員としてロンドンを訪問中であるが、リオティント社主催の夕食会に招待され出席した(注:彼女は、専門が地質学で、英国ケンブリッジ大学で博士の学位を取得し、リオティント社に勤務していた)。その時、彼女は、銅・金世界価格高騰の現在の状況をうまく利用することが重要である、と述べている(ウヌードゥル新聞2007年4月18日付)。これは、アイバンホーマインズ社(+リオティント社)とモンゴル政府との間で結ばれた「自動継続契約」に関して述べたものである。

さて、これは、エンフバヤル大統領提唱の「鉱山業を先導とする開発戦略」に基づいている。すなわち、「国家資金によって探査した鉱山を、外資によって短期間に採掘し、その収益の50%以上をモンゴル政府が取得する。その収益金を基に加工業を興す。さらに、プールしたその剰余金の一部を国民に均等に分与する。こうして、2021年までに、モンゴル人の一人当たりGDPを1万5000ドルにする。」(注:この構想の問題点は、「商工省が第1回鉱山部門投資家会議を開いた」参照。)

また、いろいろ問題のある「自動継続契約」は、改正された「鉱山法」に基づいて作成された。

「株式所有の34%」、「収益の55%」は、「鉱山法」の規定が適応されている。

ところで、この「株式所有の34%」条項は、市民運動側が憲法裁判所に改訂を求めて提訴中である。国民の財産である鉱山の所有権が34%では不当であって、50%以上であるべきである、というものである。

また、「収益の55%」にしても、この「収益」というのは、採掘時の収益であって、最終完成品(注:純銅製品などをさす)からの収益が2000億ドルであるのに対し、モンゴルの「収益」は150億ドルに過ぎない。すなわち、最終完成品からの収益の10%にも満たない、ということである(С.アビルメド論文「オユトルゴイ所有とアイバンホーマインズ社による貯蓄信用組合化」。ウヌードゥル新聞2007年4月19日付)。

そして、何よりの問題点は、モンゴルにはインフラが完備せず、銅を使用した工業が存在しない。この状況の中では、採掘された銅は、そのまま外国に搬出される。これは、植民地経済の構造である。この構造は、多国籍企業がアフリカやラテンアメリカで作り上げている。

オユトルゴイ鉱山開発は、モンゴル鉱工業が発展してからでも遅くない。銅・金鉱脈は地下にあって、消え去ることはない。(2007.04.22)

(追補)アイバンホーマインズ社とのこの「自動継続契約」(=投資契約)は、2007年12月12日、新たに組閣されたС.バヤル政権が「再協議」することにした(ウヌードゥル新聞2007年12月27日付)。

これは、この「投資契約」の破棄を意味するものと一般に受け止められている。

一方、アイバンホーマインズ社の株を所有するリオ・ティント社は、С.バヤル首相との会談で、この「投資契約」案の破棄を非公式に了承したらしい(ウヌードゥル新聞2008年2月12日付)。今後巻き返しがあるかもしれないが。(2008.02.16)

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