外資企業アイバンホー・マインズ社、ロビー活動開始(2005年12月10日)

現在、「鉱山法」改正案が国家大ホラル(国会)で論議されている。その焦点は、鉱山部門外資企業への特別優遇措置の見直し、鉱山採掘に係る収益のモンゴルへの還元率(15%〜5%)、地元自治体への収益還元などである。

この論議の結果、外資企業の株価が下落した。

ここまでは、前回のこの「時評」で書いた。


こうした事態に危機感を抱いたのであろう。モンゴルにおける鉱山部門外資企業の代表、「アイバンホー・マインズ社」は、一転攻勢に出た。

最近のテレビや新聞で、オユトルゴイ・プロジェクトの重要性を訴えるCMや広告が流されている。この広告主は、アイバンホーマインズ社であろう。

そして、ウヌードゥル新聞(2005年12月08日付)に登場した、アイバンホー・マインズ社副社長(モンゴル人)は、以下のように述べた(要約)。

  アイバンホー・マインズ社は、2000年からオユトルゴイ交渉の探査を行ってきた。2001年末に採掘有望との結論を出し、2005年4月末に銅埋蔵量を2600万トン、金埋蔵量を800トンと推定するに至った。

  現在、当社は2億7500万ドルの投資を行っている。今後さらに、150億ドルの資本投下をする。

  当社による納税の結果、70億ドルがモンゴル政府の国庫に入った(80億ドルが当社にはいる)。このうち、所得税納入分が30億ドル(海外送金に係る税20%で24億ドル)である。

  それ故、現在、(反対)運動を展開している人々の主張している収益の折半(50:50)はすでに実現されている。

  (戦略的に重要な鉱山は国家所有にすべきであるとの主張は)外資企業の目からは反対である。

  (そうではなく)税制を確立すべきである。こうした税制は、チリ、メキシコ、マレーシアですでに確立している。特に、グローバリズムの下での世界経済であることからみて、諸外国の例を見習うべきである。例えば、外資不要論を唱えていた1970、80年代のルーマニアや、北朝鮮の例を考えてみよ。彼らは発展していない。

  一方、外資企業による鉱山採掘によって、就業機会が創出されるオユトルゴイ鉱山では、11万7000人が仕事を得ることができる。これは、現在の失業者数に等しい数である。

  オユトルゴイ・プロジェクトには、米、カナダ、オーストラリアなど世界各国の企業12社が参加する(注:日本の三井物産も虎視眈々とねらっている。その社長がモンゴル国大統領にすでに表敬訪問を終えている。ウヌードゥル新聞2005年10月25日付参照)。

こうした宣伝攻勢と並行して、アイバンホー・マインズ社は、12月10日、国家大ホラル(国会)議員3人、副大臣1人にオユトルゴイを視察させる。

これらは外資企業の論理である。

その中で、カナダのトロントと、ニューヨークの証券取引所で、オユトルゴイの株価が下落し続けている。

外資企業アイバンホー・マインズ社とモンゴル政府による「収益の折半」というのは、当該企業が地下資源を採掘した後の「残り物」に過ぎず、その収益に付加価値が付けられてモンゴル国民に還元されるわけではない。その時限りの収益である。また、その収益は、国際価格相場に左右される、不安定な収益である。

当該企業がいう「就業機会の創設」は、モンゴル人が雇用される以上に、外国人が雇用される、という事実を隠している。例えば、鉱山部門の外資企業「アルタンドルノド」社では、従業員は1600人が外国人、モンゴル人は300人に過ぎない(ウヌードゥル新聞2005年09月29日付)。これも「収益の還元」論理と同様に、「おこぼれ」に過ぎない。

外資企業は、採算が取れなくなると、何のためらいもなく撤退するであろう。その後には、「公害」だけが残される。

こうした論理の背景には、モンゴルが独立した経済制度を確立していない、という事実がある。すべて、外国資本頼みである。

モンゴル国民が、「戦略的重要性」という「限定符」を付けないで、独立した経済制度を確立するには、こうした外資企業の「跋扈」に抵抗できるだけの理論的経済的政治的実力と経験を、地道に身につけていかなければならない。(2005.12.11)

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