新財務経済相、米国訪問より帰国(2004年10月06日)

アルタンホヤグ新財務経済相は(注:「祖国・民主」同盟、民主党書記長、アルタンガダス・グループ、非議員)、就任後時を置かずして、2004年10月1日、モンゴル銀行総裁(チョローンバト)と共に米国を訪問し、10月6日、帰国した。

アルタンホヤグは、帰国後、ウヌードゥル新聞のインタビューに答えた。

それによると、この訪問の目的は、1)IMFおよび世界銀行との毎年の通常会談、2)特に、世銀との会談では、貧困緩和問題、3)IMFおよび世銀のモンゴル駐在担当者との政策の調整具合の報告などであった(ウヌードゥル新聞2004年10月08日付)。

モンゴルの国家経済運営担当者が、自国の経済状態について、世界の人々に広く周知させることそれ自体は、問題ない。

ここで問題にしたいのは、第一に、モンゴルがIMFのプランに拘束されていることである。IMFは、モンゴルへの融資供与の条件として、PRGF(貧困緩和発展調整能力)プランを作成し、特に、国家予算に対する「監査」を行っている(注:財政赤字、インフレ率、経済成長率などについての達成目標設定など)。

今回、IMFは、3回目の「事後評価」の必要性を通告し、モンゴルの経済運営責任者を米国に「呼びつけた」のである。

IMF路線は、モンゴルの独立を侵害し、経済混乱をもたらす可能性が高いことは以前に述べたので、ここでは繰り返さない。

第二に、新たに結成されたエルベグドルジ「大同盟」政権の政策(いわゆる政府綱領)との関連についてである。この政府綱領はまだ作成されていない。だが、もっとも注目すべきは、「祖国・民主」同盟の選挙公約であった、「子供に毎月1万トグルグ支給」、という政策との関連である。「祖国・民主」同盟は、選挙違反ともいうべき方法によって、「究極の議会バランス」(36:34or36)を手に入れ、政権にその半数を送り込んだ。であるから、この公約実施は、譲ることのできないものとなっている。

だが、この選挙公約を実施すれば、国家予算への圧迫は避けられず(注:3000億トグルグといわれている)、その肩代わりとして、国際援助機関などへの支援が要請されていた。IMFとの今回の「会談」では、この点は議題に上らなかったとされているが(政府綱領がまだ作成されていないという理由で)、「祖国・民主」同盟が事前に支援申し入れを行い、拒否されていたものであった。

このIMFによる「拒否」の理由は、表面的には、「非公式である」、ということであるが、前述のPRGFプランの設定目標が達成されない、というのが本音であろう。

この点に関して言えば、IMFプランは危険極まりないものである。そのプランからみても、「子供に毎月1万トグルグ支給」は、危険なものである、ということになって、状況がかなり入り組んでくる。

これを解くカギは、モンゴルが真の独立を達成することにある。現政権がそれを達成できるかというと、かなり困難であろうというのが筆者の意見である。(2004.10.10)

(追補)上述の国際援助機関の援助計画と「祖国・民主」同盟の公約について、筆者は、「状況がかなり入り組んでくる」と書いたが、それをもう少し説明しよう。国際援助機関の援助目的は、最終的には、モンゴル地下資源奪取にあるのであって、それ以上でもそれ以下でもない。現在の貧困化(=貧富の差の拡大)は、国際援助機関が推進してきた結果なのであって、市場経済という名目の資本主義を導入すれば必然的に現出する。資本主義がそれを撲滅することは自己矛盾である。ただ、貧困化は、モンゴルの治安状態の悪化や、政治不安を惹起する。地下資源の「安定供給」を求める国際援助機関にとっては、それは回避しなければならない。こうして、IMFのPRGFプランが生まれた。一方、資本主義推進の路線を採用する民主党は、「子供に毎月1万トグルグ支給」を選挙公約にして、議席を獲得した。この公約を実行すれば、「貧困撲滅」ではなく、経済混乱や国民の物貰い根性(国家への寄生性)を引き起こすだろう。国際援助機関の弟子たるべく登場した、民主党を中核とした「祖国・民主」同盟は、こうして国際援助機関の意図を打ち砕く。皮肉なことだ。確かに、モンゴル国家が貧しい家庭の子弟に援助すれば、モンゴルが真の独立を確立し、その政策を慎重に実行する限りにおいて、モンゴルは(=モンゴル国民は)発展するかもしれない。(2004.10.13)

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