IMF、モンゴルに新たな融資(2003年09月12日)

IMF(国際通貨基金)は、2003年09月12日、モンゴルの「PRGF(貧困緩和発展調整能力)」プログラムの見直しを終え、1100万ドルの融資(年利0.5%、5年間返済据え置き、10年返済)を承認した(IMF Press Release No. 03/157, September 12, 2003)。

IMF理事会主席専務理事補アン・クルーガーは、モンゴルが「貧困緩和発展計画」を「成功裡」に実施し、経済移行に「見事に取り組んでいる」、と報告した(モンツァメ通信030915)。

「見事に取り組んでいる」という内容は、インフレ抑制、対外依存の減少、大規模「擬財政活動」警告、財政情報公開の促進、公共支出の抑制、公共サービスのスリム化、貧民への効率的支出、賃金・年金増額の抑制、単一会計制度を導入し、歳出を圧縮、モンゴル国立銀行の監視強化、対外負債の抑制、ということである(同上IMFプレス・リリース)。

筆者の見るところ、これは、「見事」な「取り組み」ではなく、最悪の経済運営である。

インフレを抑制しようとするのは、IMFの常套手段だから、驚くに当たらない。これは、モンゴル国民のことを考えているわけではなく、インフレが進むと、融資金が戻らない懸念があるからである。

対外依存度が低まっている、というのは事実に反する。モンゴル人による国内生産は相変わらずそれほど行われず、外国商品が大量に流通している。その原資は、銅・モリブデン、カシミア、金、海外からのモンゴル人の送金、援助、融資である。

「擬財政活動」は大いに行うべきものであって、抑制すべきものではない。モンゴルのような経済基盤の脆弱で、社会主義経済の伝統を継承する国は、国家による財政活動が必要なのである。銀行部門は、特にそれが必要である(国民への低利小口融資など)。

財政を公開し、単一会計制度を導入するのは、字義通り解すれば、正当なことである。だが、事実上は、強力な外国資本による、自由な投資活動のためのこれは口実となる。

「公共支出の抑制」、「公共サービスのスリム化」、すなわち「歳出の圧縮」は、モンゴル国民の生活をを犠牲にすることでしかない。

特に、貧困層への「効率的」な財政支出とは、貧困層を見捨てろ、ということである。国民が自由な生産活動を行って初めて、その国は発展する。貧困層を見捨てることによって、経済混乱が深化し、政情不安になる。1990年代にそれが起こった。IMFは何ら学んでいない。学ぼうとしていない。

賃金・年金額の増額は、現在のモンゴル国民の切実な要求である。政府は、選挙公約の実現(賃金・年金額の2倍化)とIMFプログラムとの乖離に苦しんでいる。

モンゴル国立銀行の監視を強めることは、事実上、先のインフレ抑制を意図する、IMFの普遍的手段である。

対外債務は、抑制するどころか拡大している。この返済は、次世代モンゴル国民の重い負担となる。IMFおよび政府は、それには無関心のように見える。

つまり、このIMFプログラムは、今まで、モンゴルを経済混乱に陥れ、今後、さらにその計画を継続させようという、危険きわまりない企てなのである。(2003.10.05)

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