
国家大ホラル(国会)、「人間開発基金法」制定(2009年11月18日)
賛否両論があるまま、アイバンホーマインズ社とのオユトルゴイ鉱山「投資契約」が成立した(2009年10月6日)。
その「投資契約」条項の一つに、モンゴル側所有株から得られる収益分の前渡し金総額2億5000万ドルのうち、1億ドルが国庫に収納された(2009年10月20日)。ただし、この「前渡し金」は、融資である(注:利払いが必要になる)。
一方、先の2008年国家大ホラル(国会)議員選挙で、その収益分から国民一人一人に(注:生まれたばかりの嬰児から、刑務所に収監されている犯罪者まで、すべての人に平等に)、その収益金を分配する、と人民革命党と民主党は公約した。その額は、人民革命党が150万トグルグ、民主党が100万トグルグであった。
ここにきて、その分配の仕方が問題になってきた。
国家大ホラル(国会)人民革命党議員会派は、2009年11月11日、2010年に老齢者(年金生活者男性60歳以上、女性55歳以上20万5300人)、生活困窮者(3万3300人)に対し、まず50万トグルグを現金で分配する、という会議決定を出した。
そのため、「人間開発基金法」を制定し、その基金の中からから支給する、とした(ウヌードゥル新聞2009年11月17日付)。
こうして、国家大ホラル(国会)は、2009年11月18日、「人間開発基金法」制定を採択した(ウヌードゥル新聞2009年11月19日付)。
「人間開発基金」は、天然資源から得られた収益の一部を収納し、そこから健康保険、教育、保険料、アパート購入資金の支払いをするための「国庫」である(ウヌードゥル新聞2009年11月21日付)。
また、「生活困窮者」とは、母子家庭(女性が世帯主)、子だくさんの母親、身体障害者、身寄りのない人のことである。
さて、先の選挙公約は、「国民一人一人の平等に分配」であった。ところが、2010年に「まず老齢者、生活困窮者に50万トグルグを現金で分配」になったのか。
モンゴル人の人口を260万人として、一人一人の150万トグルグ支給するとすれば、それだけで390億トグルグが必要になる。もちろん、国庫にはそれだけの金額の資金はない。
一方、この150万トグルグ分配の仕方は、現金支給、株券発行、教育費支援、社会保険控除および健康保険控除費負担、という形態をとる、というのであった。
だから、「現金支給」案が浮上した。
次いで、「まず老齢者、生活困窮者に50万トグルグ」を「現金」で、ということになった。
だが、老齢者と生活困窮者が重複することが考えられる。それを政府は捕捉できるであろうか。
そういう問題はさておき、この案が出て来た背景が問題となる。
この案は、人民革命党によって提案された。人民革命党は現在、政党綱領として社会民主主義を採択している。従って、国民の社会保障に重点を置く。政党支持者には老齢層も多い。
だから、自党支持者に向けた政策という意味合いがある。
もう一つの側面としては、世界経済混乱のあおりを受け、モンゴルの2009年度国家予算赤字は700億トグルグである。
それを補填するため、IMFからスタンバイ融資を受けた。それ以前の問題として、モンゴルはIMFの「指導」下にある。
IMFは、融資供与の条件の一つとして、「貧困層支援」を指示している。
これに従い、政府は、極貧層3万人に1万4000トグルグ分の「クーポン券」(注:1年間期限)を「アジア開銀」資金で支給することにした(ウヌードゥル新聞2009年11月17日付)。
この政策の同一線上に、「まず老齢者、生活困窮者に50万トグルグ」案が作成されたのである。
これより先、IMFは、「子供一人につき毎月1万3000トグルグ支給」に反対を表明していた。ところが、今度の政策は、IMFをいたく喜ばせることになるであろう。(2009.11.21)
