
ウランバートルにおける交通問題の深刻化(2009年4月1日)
モンゴルの首都であるウランバートル市の抱えている深刻な問題の一つが「交通問題」である。
今回の「モンゴル時評」は、この問題について概観したい。
モンゴルの人口は、現在、約260万人で(ウヌードゥル新聞2008年5月22日付)、そのうち首都のウランバートルに約100万人が居住している。
ウランバートル市では、1日平均12万5000台の車が走行している。
ウランバートル市交通警察によれば、この数値は全所有台数28万5000台のうちの約半数である。
そして、最近10年間に、3675人が交通事故で死亡し、5242人が重傷を負っている。
全国規模で見ると、2008年の交通事故数が9000件以上であったが、その内、77%がウランバートル市で起こっている。
その事故の大半は、「空飛ぶ倉庫」といわれる「
ミクロ(ミニバス)」が起こしている。ミクロは、ウランバートル市で192路線のうち90%を走行している。
そして、この「空飛ぶ倉庫」は、「無謀運転」と「乗客詰め込み」で名高い。
このため、ウランバートル市交通局は、2009年1月から、1995年以前から使用されていた「ミクロ」(1253台のうちの122台)の走行を禁止した。だが事故は止まない(注:以上の数値は、ウヌードゥル新聞2009年4月1日付のもの)。
一方、タクシーについて。ウランバートルには34のタクシー会社が登録されている。
タクシーによる交通事故は、2008年に977件で、そのうち37人が死亡した(注:ウヌードゥル新聞2009年4月2日付)。
また、整備不良の乗用車が多い(ウヌードゥル新聞2009年4月3日付)。
さて、筆者は、2003年と2009年に、モンゴル国立大学2号館南側交差点で撮影した二葉の写真(2003年と2009年)をもっている。
この写真で明瞭に観察されることは、「乗用車の増加」と「道路補修の遅れ」である。
(注:乗用車、バス、傷んだ道路。2003年4月筆者写す)
(注:6年後、増加する乗用車、道路は傷み続けている。なお、この日は土曜日だったので乗用車は少ないほうである。 2009年4月筆者写す)
この乗用車数の増加は、地方住民のウランバートル移住による都市人口の増加とパラレルである。乗用車の増加が交通事故の増加を引き起こす。
交通事故の増加は、上記の「空飛ぶ倉庫」のみならず一般乗用車とタクシーによって引き起こされている。これには、モンゴル人が乗馬感覚で乗用車を運転することがその原因の一つとしてある(注:モンゴル人は乗用車好きである)。
モンゴルでは乗用車は生産されない。そのため、数多くの中古車が輸入される。
この中古車は、以前は韓国製が多かったが、ここ数年は日本製が多くなっている。この中古車は、いわゆる「車検切れ」のものである。このため整備不良車が交通事故を引き起こす。さらに、排気ガスがまき散らされる。
さらに、運転者に対する安全運転教育が不足している。これは、数多くある自動車学校での教育に欠陥があるからである。運転者は交通法規を守らない。
(注:自動車学校での路上教習風景。赤い旗を付けている。筆者写す)
交通法規を守らない運転者に対抗し、歩行者も交通法規、特に信号を無視する。
(注:歩行者も赤信号を無視する。 2009年4月筆者写す)
このための対策として、ウヌードゥル新聞は、「鉄くず」となった「タクシー」や「空飛ぶ倉庫」である「ミクロ」の営業を停止させよう、と主張しているが、筆者は賛成できない。むしろ、地下鉄や高速道路の建設が今後必要となるであろう(注:人民革命党の行動綱領には含まれている)。
こうして、ウランバートルでは、いわば「交通戦争」が現出しているのである。(2009.04.05)
