モンゴルはロシアとの核開発交渉に合意した(2009年3月17日)

モンゴルでは、1ヶ月間にわたる臨時・国家大ホラル(国会)総会が閉会し、С.バヤル首相がロシア・ヨーロッパ歴訪に出発した。その最初の訪問国は、ロシアであった。

С.バヤル首相らのロシア訪問において、モンゴルの核エネルギー部門とロシア国営企業ロスアトムの間の核協力協定文書が署名された(ウランバートル・ポスト新聞2009年3月19日電子版)。

この協定文書の内容は、以下の通りである。

1)モンゴル・ロシア両国は、平和目的のための核エネルギー開発を強化する。
2)モンゴルおよびロシアのウラニウム鉱床を開発するために合弁企業を設立する。
3)「ロスアトム」は、モンゴルでの小規模および中規模原子力発電所建設計画を作成する。
4)「ロスアトム」は、新しく設立される合弁企業を通して、モンゴルでのウラニウム探査・生産プロジェクトに参加する。

ちなみに、モンゴル東部地域には、10万トン/メートル以上のウランが埋蔵されている、と推定されている。

また、第二に、この交渉において、ロシア側が「ロスセルホス」銀行(ロシア農業銀行)を通じてモンゴルの農業開発のための3億米ドル貸付にも合意した。

この融資の使途は、ロシアの農業機械、穀物と肥料を購入である。

С.バヤル首相は、今年、約半額(注:1億5000万ドル)を受け取ることを望むと述べた。この資金によって、モンゴルの「開墾V」キャンペーン(注:2008年から始まった、セレンゲ・アイマグを中心とする農業地域での農業再興計画)が確かなものになるだろう、と述べた。

第3に、両国は、ロシアのルーブルとモンゴルのトグルグを貿易取引通貨として使用する可能性も協議した。

第4に、鉄道部門では、「ロシア鉄道」との合弁企業の設立とモンゴルの鉱物資源の共同利用にも合意した。

第5に、С.バヤルとプーチンは、政治的軍事的協力も協議した。С.バヤルは、モンゴル人民革命党とプチンが率いる「統一ロシア」との間のより密接な関係の強化に関心がある、と述べた。

第6に、モンゴル教育文化科学省とロシア文化省は、2009−2011年までの協力プログラムにも署名した。これは、文化的教育的人道的関係 特に、モンゴルでのロシア語の普及、およびロシアでのモンゴル専門家の研修に特別に注意を払われる。

さて、この交渉合意の意味するところは何か。


(注:土屋春明「モンゴルのウラン鉱床と開発の現状」、『金属資源レポート49』2008年5月より)

モンゴルのウラン鉱床で有名なものは、マルダイ・ウラン鉱床(ドルノド・アイマグ)で、1970年9月6日、ロシアとモンゴルの「共同」調査から明らかになった。それ以外にも、モンゴルには、上記のようにウラン鉱床が数多くある。

このマルダイ・ウラン鉱床は、ドルノド・ウラン鉱山、ゴルバンボラグ・ウラン鉱山、タバントルゴイ炭鉱、オユトルゴイ銅金鉱山、ツァガーンソバルガ・銅モリブデン鉱山、エルデネト銅モリブデン鉱山、ブレンハーン蛍石鉱山、オラーン亜鉛錫鉱山、ツァブ亜鉛錫鉱山、アスガト銀鉱山、トゥムルト・ツァイル鉱山、ナリーンソハイト炭鉱山、ボロー金鉱山、バガノール、シベーオボー炭鉱山、などと共に、モンゴルの戦略的重要鉱山に指定されている。

ここでは、三大ウラン鉱山(マルダイ・ゴル、ドルノド[推定埋蔵量56.800トン]、ゴルバンボラグ)に世界各国が関心を寄せている。

日本もモンゴルのウラン鉱を開発する計画がある(ウヌードゥル新聞2008年10月8日付)。

かつて、モンゴル商工省は、ウランバートル市で第1回鉱山部門投資家会議を開いたが(2007年1月31日)、その会議の席上で、銅(ツァガーンソバルガ、オユトルゴイ)、鉄(トゥムルテイ)、コークス炭(タバントルゴイ)、ウラン(マルダイ)などを結合した重工業建設計画も発表されていた。

この一大プロジェクトは、2009年に入って、С.バヤル首相がロシア・イルクーツクを訪問した際(2009年1月22〜23日)、ウラン採掘計画、ウランバートル鉄道改修、農業開発を組み合わせた、将来のモンゴル・ロシア共同事業として企画されるようになった(ウヌードゥル新聞2009年1月26日付)。

この企画が今回のС.バヤル首相のロシア訪問で合意に達したというわけである。

この「ウラン開発」合意は、世界各国によるモンゴル・ウラン鉱床採掘に先立つものとなった。これは、モンゴルでの「ウラン開発」におけるロシアの優位を確立するものとなるであろう。

また、この合意は、モンゴルにおける食糧自給(注:上記「第2」)、およびトグルグ通貨の対ドル防衛(注:上記「第3」)をも目的としている。

このことは、人民革命党とロシアとの関係強化と相まって(注:上記「第5」)、モンゴルとロシアとのかつての関係の復旧・強化につながるものである。

これに対し、IMFを前面に出す米国・日本などがどのように「巻き返す」か。また、中国との関係(注:オユトルゴイ鉱山で関係が深まっている)がどうなるか、ということも今後の問題となるであろう。(2009.03.22)

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