
経済混乱克服のための政府案を臨時国家大ホラル(国会)で審議(2009年2月12〜13日)
米国を震源とする世界金融混乱は、モンゴルにも影響がないとはいえなくなっている。そのモンゴル的特徴といえば、ドル価の高騰である。これは、モンゴルが「モノ」の生産をせず、そのほとんどを輸入に頼っていること(注:約70%)、その決済をドルで(注:モンゴル国通貨はトグルグである。後述の国家大ホラル[国会]予算・経済各常任委員会の席上、バヤルツォグト財務相は、経済取引通貨をトグルグに限定する法案を財務省が検討中である、と言明した)行っていることにある。その結果、世界で唯一と言っていいくらい、ドル価が恒常的に上昇している。ここに来て、対外貿易量の縮小によって、国内ドル流通量が縮小し、ドル価が急騰している。
モンゴルの「経済顧問」を自認するIMF現地スタッフは、これにあわてたかのごとく、2009年2月2日、Д.オヨンホロル国家大ホラル(国会)社会政策文化科学委員会委員長と会談し、社会給付金を貧困層にのみ限定する、というIMFの計画に賛同させた(ウヌードゥル新聞2009年2月3日付)。その際(=それに基づいて)、IMFは3億ドルという「支援」案件を提案している(ウヌードゥル新聞2009年2月311付)。この機関は、加盟国の経済政策に介入するのを常としている。
それはさておき、この経済混乱を克服するべく、デンベレル国家大ホラル(国会)議長は、2009年2月9日、臨時国家大ホラル(国会)を2月12日に開会することを宣言した(ウヌードゥル新聞2009年2月10日付、および http://www.parliament.mn/home.php)。
それに基づき、2009年2月10日、国家大ホラル(国会)予算・経済各常任委員会は、金融・財政混乱を克服するための政府案について合同で審議をした。
その審議の中で、政府委員(バヤルツォグト財務相)は、1)食糧、失業、エネルギー、銀行・金融部門に150億ドル投入することが必要であること、2)これを外債募集によって調達すること、3)この結果、経済成長を4〜4.5%にすること、などを骨子とする政府案を報告した。
そのための方策として、1)牧民の負債返済期間を延長する、2)労働賃金の下限を「下げる」、3)法人税を免除する、4)社会保険控除額支払いを遅延させる、5)給料融資を与える、6)10万戸アパート建設計画をさらに推進する、7)一世帯に最低限一人に対して就業場所を与える、8)石炭輸出のための税関業務を24時間化して石炭輸出量を増大させる、9)ボローゴールド社の金をモンゴル銀行への売却させる、などの提案がなされた(ウヌードゥル新聞2009年2月3日付)。
この審議をふまえ、2009年2月12〜13日、国家大ホラル(国会)臨時総会が開かれた。この結果、この政府案を国家大ホラル(国会)常任委員会で継続審議にすることが議決された。
その際、У.オラーン(人民革命党会派議員)を責任者とする当該問題議員作業グループが結成されることになった(ウヌードゥル新聞2009年2月14日付)。
さて、この政府案審議の過程で明らかになったことは、経済混乱克服のための原資として150億ドルが必要であり、これを「外債」(注:モンゴル政府債券)と外国・国際機関からの「融資・援助」によってまかなう、ということである。
モンゴル財務省によれば、モンゴルの対外借款額のGDPに占める現在の割合は26%、外債募集が20%、合計すれば、約50%となる。これは、諸外国と比較して大きな数値ではないという(ウヌードゥル新聞2009年2月13日付)。
確かに、米国にしろ日本にしろ、財政赤字であることは明白である。だが、こうした国と、経済規模が小さく経済基盤の脆弱なモンゴルとを比較することは、無理があるだろう。
それ以上に、モンゴルは、現在、対外経済信用度が下がっている。外債募集を引き受ける国・機関があるかどうか疑問である。
モンゴルは、経済混乱に動揺することなく、IMFなどの介入を受け入れることなく、国内生産増大のための法制的・財政的政策(注:形容矛盾のようであるが、政府による「自生的な」「計画経済」)を地道に進めることが肝要ではないだろうか。(2009.02.15)
(追補)С.バヤル首相は、国家大ホラル(国会)特別国会で演説し(2009年2月19日)、(2009年度予算の「検討」に関して)2009年度予算の赤字は5000億トグルグになる見込みで、これはGDPの12%に相当する。それを6%に下げる。その方策として、1)歳入増をはかる、2)社会給付金を見直す、3)行政の無駄を省く、4)歳出を効率化する、5)社会保障費は削減しない、6)政府による資本投下費を見直す、などと述べた(ウヌードゥル新聞2009年2月20日付)。現在、行政による冗費削減が緊急の課題となっている。(2009.02.22)
