
銅世界市場価格の下落とモンゴル鉱山開発(2008年10月31日)
米国住宅金融協会破産に端を発する、世界金融の混乱は、世界各国に影響を及ぼしている。モンゴルもその影響を少なからず受け始めている。
工業、建設、コンピュータ部門などからの需要によって、銅世界市場価格は高騰していた。だが、最近の世界経済の混乱、さらに、鉱物資源の大量消費者である中国の経済成長の鈍化の影響を受けて、銅世界市場価格が1トン8812ドルから4498ドルに下落した(2008年10月31日)。
それに伴って、リオ・ティント社の株価が59%、BHP社の株価が68%下落した。カザフスタンの「カザフモス」社の株価が85%下がった。スイスのXstrata社の株価が78%下がった。
そのため、リオ・ティント社社長トム・アルバネスは、「原料価格が高くなるまで投資をしない」と述べた(「フィナンシャル・タイムズ」2008年10月31日号)。これには、コンゴとモンゴルの鉱山を含むという(ウヌードゥル新聞2008年11月05日付参照)。
いずれにしろ、世界の鉱業各社は、鉱物資源採掘を一時停止した(ウヌードゥル新聞2008年11月06日付)。
上記リオ・ティント社の声明は、モンゴルに波紋を投げかけた。
リオ・ティント社は、アイバンホー・マインズ社に資本参加した。アイバンホー・マインズ社は、モンゴル南部(ウムヌゴビ・アイマグ)の中国国境近くにあるオユトルゴイ銅・金鉱床開発を行ってきた。
リオ・ティント社による上記の投資自粛声明は、モンゴル政治・経済指導者層をあわてさせている。
С.バヤル首相は、鉱山法改正は厳密にやり(注:一時棚上げにするということ)、その代わりに、オユトルゴイ、タバントルゴイ鉱山など、先迫った鉱山の開発は、「協定」によって早急に開発する必要がある、という政府構想を発表した(ウヌードゥル新聞2008年11月4日付)。
これは、鉱山法改正の焦点となっている、モンゴルの鉱山株所有比率を現行の34%以下から51%以上に引き上げるという条項に関係している。
モンゴル憲法(1992年)に明記されているように、鉱物資源はモンゴル国有である。だが、オチルバト元大統領の主導による鉱山法(1997年)は、この国有資源を外資の投資対象にしてしまった。
「鉱物資源を国民のものに」という声に押され、2007年に、この「鉱山法」が改正され、外資の開発に係る鉱山のモンゴル側所有比率が34%まで、という条項が盛り込まれた。
これは、アイバンホー・マインズ社をはじめとする外資企業の不満と反対を引き起こした。
モンゴル国民と外資企業の利害対立は先鋭化していった。この声に押され、С.バヤル政権は、アイバンホー・マインズ社と結んでいた「(開発)投資契約」を破棄した。
これと並行し、改正された「鉱山法」をさらに改正し、34%条項を見直し、51%以上にするという提案がなされた。
だが、ここに来て、繰り返すが、世界金融の混乱と鉱物資源世界市場価格の下落は、政治・経済指導層をあわてさせている。
Б.バトバヤル民主党議員(注:バヤンホンゴル・アイマグ選出。鉱山会社を所有)は、現在、銅世界市場価格が3600ドルで、エルデネト社は4000ドルで操業している。個々の鉱山の投資契約を急ぐべきである、と述べた(ウヌードゥル新聞2008年11月7日付)。
З.エンフボルド民主党議員も、同様に、(鉱山法の)51%、34%条項論議は一時棚上げにして、外資鉱山企業との「協定」を急ぐべきである、と述べた(ウヌードゥル新聞2008年11月7日付)。
最近、民主党内に15人の造反グループ(Ц.エルベグドルジ、Э.バトウール、Р.アマルジャルガル、З.エンフボルド、Б. バトバヤル、 Лу.ボルド、 Х.バトトルガ、Н.バトバヤル、Ц.バヤルサイハン、Д.ゾリグト、Х.テムージン、Л.ガントゥムルら)が生まれたが (モンゴリン・メデー新聞2008年11月4日付)、これは、モンゴル鉱山部門の利益を追求する企業グループの旗揚げである、という指摘もある(ウヌードゥル新聞2008年11月7日付)。
折から、2008年11月6日、第6回鉱山投資家会議「Discover Mongolia 2008」が開会したが(モンゴル鉱山部門国民協会主催)、А.ムンフバト(アイバンホー・マインズ社上級副支配人)によれば、今回は、参加者が30%減少した。特に、小規模会社の参加が少ない。これは、鉱物資源世界価格の下落のためである、という(ウヌードゥル新聞2008年11月7日付)。
このように、世界経済の混乱に過剰反応して、鉱山法改正のための国家大ホラル(国会)審議を棚上げにし、モンゴルの国有財産たる鉱物資源を安易に外資に売り渡してしまう(注:極端に言えば)主張が、モンゴル国内で支配的なっている。大変危険な兆候といわなければならない。(2008.11.10)
