憲法裁判所、国会議長の越権行為を弾劾(2007年03月02日)

憲法裁判所大法廷は、2007年3月2日、ニャムドルジ国家大ホラル(国会)議長が法に違反して、「反汚職法」、「(改正)鉱山法」の条文を改竄したことについて、その行為が越権行為である、という裁定を下した。

ニャムドルジ議長弾劾は、「反汚職法」改竄に関しては、Д.ラムジャブ、Р.ボルマーたちが、「(改正)鉱山法」改竄に関しては、С.アビルメド、Ж.ビャンバー、Ч.ホルツ、П.ボルド、Л.ツォグたちが、それぞれ提訴していたものである。

彼らによる提訴内容については、その詳細は省略するが、1例だけ挙げると、「反汚職法」(2006年7月8日成立)において、「国家大ホラル(国会)は、反汚職法とその実施状況、および汚職の一般状況について、汚職対策本部の報告を聴取する」という条文中の、「聴取する(сонсно)」という字句を「協議する(хэлэлцэнэ)」に改竄した。これは、汚職対策本部の行動の独立性を侵害する、という原告側の提訴である(ウヌードゥル新聞2007年03月03日付)。

ニャムドルジ議長は、国家大ホラル(国会)によって承認されたこの2法案を約140カ所にわたって改竄を行った、というものである。

国家大ホラル(国会)で承認された法案について、条文の意味が変わるかどうか、議長が何カ所改竄したか、といった問題ではない。議会によって採択された法令は、最終的なものである。

(後注:もっとも、「国家大ホラル(国会)総会規則」では、「議長は採択された法案をその主旨を変えない範囲でその字句を変更できる」、としているから、ニャムドルジ議長は間違っていない、いう議員もいる(ダミラン議員談)。ウヌードゥル新聞2007年03月12日付参照。だが、この規定そのものが、憲法違反の疑いがある。今回、憲法裁判所大法廷は、モンゴル国憲法第一条第二部、第二十条、第二十五条第一部の一、をそれぞれ根拠にして、すなわち、国家大ホラル[国会]が唯一最高の議決機関である、などの規定を基にして、ニャムドルジ議長が「越権行為を行った」と裁定したのである。)(2007.03.13記)

議会制民主主義をとる法治国家では考えられないこの行為について、ニャムドルジ議長自身は、自分は法律専門家として、初めての議長であるから、承認された法案の字句が不完全で不明であれば「添削」する、過去にも行ってきたし、これからも行う、と「豪語」している(ウヌードゥル新聞2007年03月06日付)。

ニャムドルジは、硬骨漢として知られている。モンゴル社会の混乱(注:貧富の差の拡大に伴う犯罪の凶悪化、汚職、重度の官僚主義、倫理観の喪失、飲酒による暴力沙汰などなど)が進行する現在にあって、その進行を食い止める可能性のある法律専門家の一人として、ニャムドルジの存在が不可欠なものであることは否定できない。

しかし、国家大ホラル(国会)によって審議採択された法案を改竄するという行為は、彼の意図がどうであれ、認められるものでは決してない。もっとも、ニャムドルジが不完全だと思うような法案を採択する「愚かな76人」(注:現在の議員たちはよくこのように揶揄される。企業社長たちが国家大ホラル議員のうちでその半数以上を占める。彼らは議場を自己顕示と利権獲得の場と見なす傾向が強い)にも問題があるものの。

憲法裁判所裁定を受け、「健全な社会のための市民運動」などが、2週間以内に国家大ホラル(国会)を開催し、ニャムドルジ議長を解任するよう要求している(ウヌードゥル新聞2007年03月09日付)。

これに対し、ニャムドルジ議長は、エンフバヤル(大統領)、М.エンフボルド(首相)、自分(議長)の三人が同時に辞任するべきである、と述べたと新聞報道された。これもまた了見違いも甚だしい。もっとも、この発言の真偽は、その場にいたЁ.オトゴンバヤル人民革命党書記によって明確に否定されたが(ウヌードゥル新聞2007年03月09日付)。

正規の手続きとしては、このニャムドルジ議長越権行為問題は、次の春期国会で審議される(国家大ホラル[国会]事務局長談話)。だが、今後、この問題の推移は、不明である。(2007.03.11)

トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ