
エグ川水力発電所建設のための覚書に調印(2006年11月22日)
近代化は電力化であるとよく言われる。
モンゴルでは、エグ川(ボルガン・アイマグ)に水力発電所を建設する計画が1991年から始まった。その当初から、環境問題や資金問題などが未解決のため、さらには民主同盟連合政権時代の汚職疑惑(注:Долголын Дожоодорж,”Ардчилсан Хувьсгалын Удирдагчийг Хэн Хθнθθсθн Вэ?”, Улаанбаатар, 2000, p.211, 217, 267 参照)などのため、遅延していた。
このエグ川水力発電所建設計画は、、М.エンフボルド首相の中国訪問中の2006年11月22日、中国からの3億ドルの特恵融資によって実行することが決定し、バヤルトサイハン財務相がそのための覚書に調印した。
この計画は、エルデネバト燃料エネルギー相の発案によるものであって、エグ川水力発電所建設によって、年間5億キロワットの電力が中央電力システムに供給される。
さらに、エルデネト鉱山とオユトルゴイ鉱山へも電力供給が可能になる。
なお、この特恵融資は、年利1.75〜2%、20年返済(ウヌードゥル新聞2006年11月24日付)。
上記のように、エグ川水力発電所が稼働すれば、モンゴル中部(ウランバートル市、トゥブ、ヘンティー・アイマグなど)の電力網がさらに安定化する。同時に、モンゴルでの生産活動と国家予算への歳入を支えるエルデネト社(注:銅・モリブデン採掘)への電力が強化される。
また、タバントルゴイ鉱山と並んで、モンゴルの将来の基幹産業だと言われているオユトルゴイ鉱山(注:ともにウムヌゴビ・アイマグ)への電力供給も可能になる。
もちろん、環境問題への監視が重要課題であるし、電力供給の多様化(注:太陽光、風力、水力、火力など)をはかることも重要である。
また、中国の特恵融資供与は、中国側のオユトルゴイ鉱山への関心が基になっていることは明らかである。
いずれにしろ、鉱業加工製品生産と経済独立なしには、こうした計画は将来に禍根を残すものとなるであろう。(2006.11.26)
(追補)政府は、エグ川水力発電所の運営企業を入札で決定することを、2007年4月18日の閣議で決定した。そのための監査基準を作る会社を選抜した。それは、スイスの「ポイリ」社である。また、自然環境監査は「エンコ」社が行う(ウヌードゥル新聞2007年4月19日付)。(2007.04.22)
(追々補)ところが、このエグ河水力発電所建設計画は凍結された。中国による投資計画案に違法の疑いが出てきたためである。また、環境破壊(森林伐採、棲息魚類死滅)のおそれもある、といわれる(ウヌードゥル新聞2008年1月17日付)。(2008.01.20)
