
ボローゴールド社金鉱でのデモ集会参加者死亡事件について(2006年06月15日)
モンゴルでは、「モンゴルの鉱山をモンゴル人の手に」という声が高まっている。
この声を背景に、「健全な社会のための市民運動」と国民党は、ここ1ヶ月間にわたって、ボローゴールド社の金、セレンゲ・アイマグの鉄、スフバータル・アイマグのの亜鉛、タバントルゴイ(ウムヌゴビ・アイマグ)、オユトルゴイ(ウムヌゴビ・アイマグ)、ナリーンソハイトに行き、これらの鉱山が自然環境を破壊し、湖をせき止めて汚濁させ、山を削って谷にし、地域住民に有害な影響を与えているのを視察してきた。
彼らは、その反対運動の矛先を、ボローゴールド社にすることを決め、当社がウェブサイトでモンゴル人に送ったという5000万ドルが誰の手に渡ったかを解明するつもりである、とした(ウヌードゥル新聞2006年06月14日付)。
そして、「健全な社会のための市民運動」と国民党は、2006年06月14日、スフバータル広場で抗議集会を開いた。彼らは、1)カナダの「センテルラ・ゴールド」社出資による「ボローゴールド」社の金鉱の操業を停止させること、2)「自動継続契約」を破棄すること、3)5000万ドルの投資金が誰の手に渡ったかを明らかにすること、を政府に要求した(ウヌードゥル新聞2006年06月14日付)。
この抗議集会の後、彼らは、セレンゲ・アイマグのバヤンゴル・ソムにあるボローゴールド社の金鉱に行った。
ボローゴールド社の金鉱に到着したデモ集会参加者約200人(注:警察発表は約80人)は、ボローゴールド社の金鉱に二手に分かれて進入しようとした。その際、2006年06月15日18時40分頃、Б.バトソーリ(60歳)という人(国民党員)が、当該社のガードマンに電気棒で殴打され死亡した。
これを指導して参加していたグンダライは、ボローゴールド社を非難した。
一方、ボローゴールド社副社長イーゴリ・コバルスキーも、この事件の責任が、グンダライその他の指導者にある、と述べた。
その際、問題の5000万ドルは、センテルラ・ゴールド社がボローゴールド社(オーストラリアのAGR社所有)を買収する際、その評価価格に上乗せして支払った額であることを明らかにした(ウヌードゥル新聞2006年06月14日付)。
この死亡事件の経過を見ると、モンゴルの経済的独立にとって重要な位置を占める、鉱山部門をどのように開発するか、という問題が(注:数十年の年数を要するかもしれない)、性急な解決を要求する若者たちと政治的得点を稼ごうとする政治家によって、その焦点がそらされていくようにみえる。(2006.06.19)
(追補)国民党党首グンダライ、「健全な社会のための市民運動」代表バトザンダン、ボローゴールド社長И.А.コバルスキーは、2006年06月17日、会談を行って、モンゴル保健センターに30億トグルグの寄付をすることに合意した。6月18日には、この寄付金額をさらに増額することになった。この結果、国民党および「健全な社会のための市民運動」のデモ参加者約70人は、ボローゴールド社の敷地から引き上げることになった(ウヌードゥル新聞2006年06月19日付)。
この事態は、国民党からのデモ参加者の死(注:その死因はまだ確定していない)について、彼らが相互に責任を回避するため妥協策である。また、鉱山部門の一企業が政府の特定部門に寄付を行う論拠が希薄である(注:グンダライは保健相であるが)。デモによる寄付強要と見なされても仕方がない。
こうした手法は、モンゴルの歴史的発展に害悪を及ぼすものである。(2006.06.20)
(追々補)上記デモ参加者が死亡したが、その原因について、国家検察庁は、2006年06月22日、心臓マヒである、と発表した。そして、現場に居合わせたデモ参加者からの証言からすると、鉱山側ガードマンによる暴行によるものではないようだ(ウヌードゥル新聞2006年06月22日付)。
この結果、このデモ集会を指導した一人、グンダライに対する批判が国内で高まり、政府内でも政府役員(=保健相)更迭の議論も出てきている。
また、これも予想通りといおうか。ボローゴールド社所有金鉱「襲撃」事件に関し、カナダ政府は(注:当該社はカナダ国籍)、2006年06月16日、モンゴル外務省に意見書を送付してきた。その中で、1)モンゴル市民運動が平和的な反対行動をすること、2)モンゴル経済の発展に果たす外資の役割を尊重すること、3)カナダ国籍の外資企業に対する不法行為に遺憾の意を表するものであること、4)この事件がモンゴル政府の政策ではないことを明らかにすること、などと述べている(ウヌードゥル新聞2006年06月23日付)。
この事件とは別に、保健省の4人の局長たちは、2006年06月20日、グンダライが保健行政を混乱に陥れていると非難し、グンダライを保健相から罷免することを国家大ホラル(国会)議長と議員たちに要求した(ウヌードゥル新聞2006年06月21日付)。
さらに、最近(2006年06月11日)、グンダライ保健相は、約4ヶ月前に新たに任命した第三病院長を解雇したが、これに対し、新病院長自身が(このことは)同病院内の相互不信を招く、と批判するし、同医局長たちも反対の立場を明らかにしている(ウヌードゥル新聞2006年06月22日付)。
いずれにしろ、グンダライの自己顕示欲が彼自身の政治的立場を苦しくしていることは事実のようだ。(2006.06.25)
