
ここ1週間の動き(2006年05月20〜26日)
モンゴルでは最近、ようやく夏の気配が感じられる。大学では4年生の卒業試験が終わり、在学生たちも学年末試験が終わり次第、短い夏を様々に過ごすだろう。この1週間はそれほど論評するべき事項もない。そこで、時系列順に項目を列挙し、短いコメントを付しておこう。
1、200人の「ニンジャ」(注:個人で金採掘を行っている人)は、2006年5月20日、ウブルハンガイ・アイマグで金採掘を行っているエレル社を襲撃した。その一週間前に、З.エンフボルド、Г.バトフー、Р.バダムダムディン議員たちが集会を開き、ニンジャ7000人に対し、「ここはあなた方の土地だ。鉱山を攻撃せよ。まもなく法が改正されてあなた方のものとなる。」と煽動した。一方、当の三人の議員たちはそれを否定している(ウヌードゥル新聞2006年5月23日)。
現在、国家大ホラル(国会)で「鉱山法」改正案が審議中であるが、それに関連し、野党である民主党の議員たち(特に、З.エンフボルド)が外資企業を追放するべきである(注:私見では正しいと思う)と主張している。だが、法に則ったやり方が必要であろう。
2、鉱山会社が国家大ホラル(国会)議員へのロビー活動をするのを防止するため、議員たちにガードマンを付けるべきである、と言う議論が起こっている(ウヌードゥル新聞2006年5月25日)。
これも鉱山法改正に関しての事態である。贈収賄に乗ぜられやすい政府高官や議員の生態が浮かび上がってくる。
3、С.バヤル人民革命党書記長は、「ここ1年以内に、(人民革命)党に望ましい大きな改革が起こり、党内が健全化し、多くの国民の信頼が回復すると思っている。」(ウヌードゥル新聞2006年5月25日)
最近の世論調査で、人民革命党の支持率が低下している。それに関連しての発言である。人民革命党はС.バヤルがその命運を担うであろう。一方、民主党はЗ.エンフボルドがそうであろう。いずれも原則派で似通った面がある。
4、アイゼンハワー奨学金によって、25チャンネルの編集長А.バータルホヤグと、彼の妻で「政治新聞」の編集長Г.オヤンガ(注:彼らは私立「イフ・モンゴル大学」ジャーナリズム学科の同級生)は、米国に留学予定である。これは、エルベグドルジ民主党党首の仲介によるものである(ウヌードゥル新聞2006年5月25日)。
エルベグドルジは、民主同盟連合政権が2000年の国会議員選挙で惨敗した後、2000〜2003年にかけて、米国のハーバード大学に留学した。彼がなぜ米国留学ができたかが明らかになったわけである。又、この上記二人がこれから親米になることも明白になった。米国が今まで第三世界で行ってきた親米派育成政策の典型である。
5、アイバンホー・マインズ社(1994年、カナダで創立)は、オユトルゴイ鉱山の採掘に関して、モンゴル政府との協調を呼びかけた。現在、当社の株価は、25〜20%下がっている(ウヌードゥル新聞2006年5月25日)。
アイバンホー・マインズ社に対する市民運動や国民の糾弾が強まっている。これに対して、危機感を募らせたこの企業の巻き返しの一環である。
6、国家大ホラル(国会)第46選挙区補欠選挙が2006年9月3日に実施されることになった。これに対し、民主党は選挙法違反であるとして反対し、採決に加わらなかった。民主党は憲法裁判所に提訴する予定である(ウヌードゥル新聞2006年5月26日)。
故О.エンフサイハン民主党議員の選挙区であった、フブスグル・アイマグの補欠選挙に関する事態である。人民革命党がこの選挙区で勝利すれば、人民革命党出身議員数が38になる。これに「民族新党」と「共和党」を加えて、新しい政権を作るだろう(つまり、祖国党の二人を更迭するということである)。一方、民主党が勝利すれば、2008年の選挙で比較的優位に立つ展望が開ける。最近の政党支持率では民主党が人民革命党をわずかに上回っている。
7、「健全な社会のための市民運動」第1回大会が、2006年5月25日に開かれた(ウヌードゥル新聞2006年5月26日)。
海外留学経験者を指導者にしたこの市民運動が、政党に転化する過渡的段階を示すものである。それにしても、政党数が多すぎる。
8、インペリアル・ゴールド社は、ボヤント・オハーにあるチンギスハン空港から5キロメートルのところに、「モリン・ノール」という五つ星ホテルを建設予定である(ウヌードゥル新聞2006年5月26日)。
このホテルの建設は、観光客増を見込んでのことであるが、その一方で、米軍とモンゴル軍その他の、モンゴルでの軍事演習をも当て込んでいると思われる(兵士その他の宿泊施設として)。従業員2000人が雇用される予定であって、それが失業率低下に貢献すると言うが、環境破壊やモンゴルの対米戦略への組み込みが進行するであろうから、喜んでばかりはいられないであろう。(2006.05.29)
