
ウランバートル市バガハンガイ区に石油精錬工場建設(2005年05月28日)
モンゴルを南北に縦断するかのように鉄道が走っている。この鉄道沿いに、ウランバートル市から南方100キロのところにバガハンガイ区がある。これは、ウランバートルの行政区である。このバガハンガイ区で、5月28日、石油精製工場の起工式が行われた。
この石油精製工場は、「ウランバートル石油精製工業」といって、中国企業の「ホアフ」グループが100%投資して設立されたものである。
2007年初頭の稼働をめざすこの工場は、年間100万トンの石油精製を行い、1000人を雇用する。人員は、科学技術大と契約して教育する、という。
順調にいけば、国内の石油をまかなうことができ、更に余剰があれば輸出もする。
この起工式には、バヤルトサイハン国家大ホラル(国会)議員、エンフボルド・ウランバートル市長も駆けつけた(ウヌードゥル新聞2005年05月31日付、ウランバートル・ポスト新聞2005年06月01日付)。
さて、モンゴルの社会生活には石油が欠かせない。主要産業である、銅・モリブデンの採掘、輸送は鉄道のよって行われるが、その燃料は石油である。カシミア原毛を地方で買い付け、ウランバートルに搬送するトラックの燃料も石油である。モンゴル人の日常生活も石炭に加えて、石油なしには成り立たない。
モンゴルは、従来、ロシアの石油会社「ユーコス」を供給元にしてきた。この会社が石油の値上げを実施すると、モンゴル国内の物価が直ちに値上がりしてきた。
ロシアで降った小雨がモンゴルでは大豪雨になるのである。
モンゴル国内の石油埋蔵量は、専門家によると、150年利用可能なくらいの量であるという。現在、タバントルゴイやオユトルゴイなどのウムヌゴビ・アイマグを初めとする地方で試掘が続けられている。
この石油精製工場が本格的稼働すれば、こうしたモンゴル産原油を精製することになるだろう。
だが、あくまでこれは将来のことである。現状では、原油を輸入し、国内で精製する、ということにならざるを得ない。ということは、やはり石油の輸入先の第一は、ロシアということになる。
当該中国企業「ホアフ」グループは、ロシアの「ユーコス」と友好的な関係にあった。ところが、「ユーコス」は解体してしまった。だから、「ユーコス」を供給元としての石油輸入はできなくなった。その代替先としては中国が考えられる。しかし、中国もいずれ石油不足になるだろうから、モンゴルにおいそれと輸出しないだろう。
また、いわれているように、ロシア(特にプーチン大統領)は中国に石油を搬入するのを警戒している。かつての中ソ対立が尾を引いている。「ユーコス」は中国支持であった。これが「ユーコス」解体の原因の一つとなっている。だから、この石油精製工場がロシアと中国との対立の火種になりかねない。
更に、中国は、将来の石油不足を見越して、隣国にその供給元を求めている。現在は、中国の西部に目を向けているのだが、多角化して、モンゴルにも目を向けるだろう。そのための布石が「ウランバートル石油精製工業」建設であるとも考えられる。
従って、この工場建設は問題が山積している。
ただ、モンゴルの経済独立は極めて重要なことである。望むべきは、モンゴルがこうした基幹産業を自前で建設することなのである。(2005.06.07)
