大統領選挙立候補者を各党が決定した(2005年04月02日)

モンゴルでは、4年ごとに行われる大統領選挙への立候補者は、国家大ホラル(国会)に議席を有する政党・同盟が、4年間モンゴルに居住する45歳以上のモンゴル人を推薦する、と定められている。

2005年5月22日に実施される今回の大統領選挙は、各党・同盟が、これより60日前、すなわち4月2日までに立候補者名を選挙管理委員会に届け出なければならない。

そういうわけで、国家大ホラル(国会)に議席を有する5党(人民革命党[37議席]、民主党[25議席]、祖国党[6議席]、市民の意志共和党[2議席]、共和党[1議席])は、相次いで立候補者を選出した。

最初に選出を決定したのは、共和党でジャルガルサイハンを(3月28日)、それから、人民革命党はエンフバヤルを(3月30日)、祖国党はエルデネバトを(3月30日)、民主党はエンフサイハンを(3月31日)、それぞれ選出した。だが、市民の意志・共和党は、立候補者を選出しなかった。

ジャルガルサイハン、エンフバヤル、エルデネバトの三人は、それぞれの党の党首で、エンフサイハンは前党首である。

誰が大統領になるのか、とモンゴル人に聞けば、たいていの人はエンフバヤル(人民革命党)だろう、と答える。常識的にはそうだろう、と筆者も思う。

だが、それがくつがえる可能性もないではない。

第一に、モンゴル人の選挙行動には(選挙行動だけにはとどまらないが)バランス感覚があって、前回の結果を正すべく、次回にはその反対の人物を選ぶ。1996年、2000年、2004年の国家大ホラル(国会)議員選挙、および、その年に実施された地方議会選挙などをみればそれが明らかである。また、1993年、1997年の大統領選挙では、野党推薦候補者が勝利した。

これは、もともとモンゴル社会は等質性があって、誰が政治を執っても同じ、という発想がある(注:もっとも、1990年以降の、資本主義の侵入に伴う、貧富の差の拡大によって、今後、その等質性が失われる懸念があるが)。

であるから、モンゴル国内外に知名度が高いエンフバヤルではなく、他の候補者に投票する人々が多くなる可能性がある。

第二に、筆者がこの「モンゴル時評」でも採りあげた「健全な社会のための市民運動」は、エンフバヤルに的を絞って攻撃した。この運動は、当初の目的を失って、次第に党派性を露わにしていき、「反エンフバヤル」になってしまった(注:これは、筆者のみるところ、この運動がモンゴル社会の矛盾点を正確に理解していない、という弱点のためである)。

今回の大統領選挙に関して言えば、この運動の影響はないとはいえず、エンフバヤルの支持率が下がり、エンフサイハンと拮抗するまでになっている(ウヌードゥル新聞2005年03月29日付参照)。

第三に、エンフバヤル支持率低下に危機感を抱く、人民革命党は、エンフバヤル以外の候補が大統領になると、モンゴルの国際的地位と国家安全保障に重大な支障が出る、大統領選挙運動に積極的に参加した者に党内の責任ある部署を与える、として、党内引き締めに躍起となっている(ゾーニー・メデー新聞2005年03月31日付)。これは裏返すと、人民革命党の活動が消極的になっている証左でもある。

というわけで、今回の大統領選挙については、その帰趨を判断するのは時期尚早である、といわなければならない。その一方で、アイバンホー・マインズ社は、ウムヌゴビにある、「オユトルゴイ」鉱床の金・銅採掘を日本の三井(商事)と共同して行うことにした(3月30日)、と報道されている(ウヌードゥル新聞2005年04月01日付)。アイバンホー・マインズ社はカナダ国籍であるが、将来、米国多国籍企業が買収に動くであろう(注:中国が70%の株を取得したという話もあるが、にわかには信じがたい。ただ、当該社はいずれ買収の対象にはなるだろう)。だから、米国、日本が着々とモンゴルの地下資源搾取を推進している。この事態の方がモンゴルの将来に重大な影響を及ぼすことは言うまでもない。(2005.04.05)

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