続・牧民と金採掘会社との争い(2005年03月21日)

前回に引き続き、今回もまた、「現代の牧民運動」と言うべき、「牧民と金採掘会社との争い」についてである。

かの「モンゴル・ガザル」社は相当問題のある企業のようで、前回のアルハンガイ・アイマグだけではなく、ドルノド・アイマグでも、牧民からの反対運動を引き起こしている。

ウヌードゥル新聞(2005年03月21日付)が報道するところによれば、次のようである。

ドルノド・アイマグのバヤンドン・ソムでは、10数年前から、金採掘が始まった。現在まで、延べ86企業が操業している。その最大のものは、「モンゴル・ガザル」社である。

「モンゴル・ガザル」社は、2003年4月以降、バヤンドン・ソムのトゥルゲン・バグにある686.2ヘクタールの土地で、金採掘を行ってきた。

その際、オルズ川から取水し、また井戸水もとった。

バヤンドン・ソムはもともと牧畜に適した土地だった。当初は「モンゴル・ガザル」社は歓迎された。ところがこの会社は飲料水の回復措置をとらなかった。

そのため、家畜の飲む水がなくなってしまった。

このため、バヤンドン・ソムのソム長やバヤンドン・ソム長老会会長、および自然環境監督官たちは、「モンゴル・ガザル」社による自然環境破壊について、自然環境保安局に訴えた。

自然環境保安局は、これを受け、「モンゴル・ガザル」社の金採掘権を取り上げ、他社に採掘権を与えた。

以上がウヌードゥル新聞の記事である。

ウヌードゥル新聞は、「刈る草がなく、夏過ごす土地がなく、飲む水がなくなった」、と『元朝秘史』ばりのヘッドライン(見出し)を付けている。

さて、モンゴルの金は、地方予算収支均衡、マクロ経済(金準備高)強化にとって、重要な位置を占めている。そのため、IMFなどの国際金融機関および「支援」国が、金を融資の最後の担保と見なし、「安心」して、モンゴルに融資や「支援」を行っている。

清朝支配期のモンゴルでは、中国高利貸商人がモンゴルに侵入し、封建領主たるザサックやタイジに貸付(=融資)を行い、隷属民たる牧民の家畜をそのための担保にした。その結果、モンゴルの家畜は、ほとんど中国高利貸し商人の手に帰していった。

家畜を失い、貧困化した牧民たちは、ザサックや中国高利貸商人のこうした行為に対し、訴訟闘争などを起こした。その際の「法的」根拠は、自分たちが清朝のアルバト(=農奴)であり、アルバ(租税、賦役)を務めることができなくなった、というものであった。

一方、「現代の牧民運動」に関して言えば、世界資本主義の貸付屋およびその下請けは、モンゴルの地下資源をねらって、モンゴルに侵入する。世界資本主義とモンゴル政府に「貢献」すると自負する、国内及び国外の地下資源採掘業者は、環境保全対策を看過するから、牧畜業に甚大な被害を与える。その結果、牧民たちの反対運動が起こる。

清朝によるモンゴルの植民地支配は、牧民の貧困化を進行させ、牧民運動を引き起こし、1921年の人民革命に収束していった。

世界資本主義によるモンゴル「侵入」は、何に収束していくのであろうか。この解答は、歴史を振り返れば自明なのであるが・・・。(2005.03.29)

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