民主党党首エンフサイハンが更迭された(2004年12月19日)

モンゴルでは時々、厳寒の12月に「熱く」なる。バガバンディ大統領の拒否権行使に続き、12月19日、民主党は突如、党首エンフサイハンを更迭した。

12月18日、民主党国民評議会がヌフト・コンプレックスで開かれ(124人参加)、党首エンフサイハンが国家大ホラル(国会)議員選挙および地方議会選挙を総括し、政府行動綱領について報告した。

ここまでは、順調であった。だが、その後、党首エンフサイハン、副党首グンダライ、書記長ガンスフに対する不信任案が123人によって提出された。その結果、エンフサイハンが更迭された。

翌12月19日、財政経済大学で(注:国立大学であるが、学長が民主党選出国家大ホラル議員)会議が再開され(128人参加)、党首にゴンチグドルジ、副党首にН.バトバヤルとБ.ムンフトヤ、書記長にШ.トゥブデンドルジが選出された(ゾーニー・メデー新聞2004年12月20日付、ウヌードゥル新聞2004年12月20日付)。この日は、エンフサイハンは公務で欠席していた。

これに対し、バトウール、Батж.バトバヤル、Р.バダムダムディン、О.エンフサイハン、Ж.ナランツァツラルト、П.オランフー、Н.バトツェツェグたちは、民主党国民評議会のこの決定は不法である、との声明を出した。バトウールは、民主党評議会を規則に基づき再度開会することを要求する、と述べた(ウヌードゥル新聞2004年12月21日付)。

一方、民主党新党首ゴンチグドルジは、今回の指導部更迭劇には、何ら陰謀も不法行為もなかった、民主党国民評議会出席委員のうちの70%(注:つまり126人)の賛成で決定した、と12月20日の記者会見で述べた(ウヌードゥル新聞2004年12月21日付)。

そして、エンフサイハン派は、この「政変」に対し、強く反発し、民主党国民評議会の決定に反対する運動を起こすかもしれないといわれる(ウヌードゥル新聞2004年12月22日付)。

これと軌を一にするかのごとく、12月19日、社会民主党が結成され、党首にА.ガンバータル、書記長にД.サインバヤルが選出された。ガンバータルは、エンフサイハンを支持する、と語った。そして、バガノール、オルホン、ダルハンオール、ゴビスンベル、バヤンウルギー、フブスグル各アイマグに支部が作られた(ウヌードゥル新聞2004年12月20日付)。これらのアイマグは、エンフサイハン、グンダライたちの支持地盤であって、エンフサイハンやグンダライが民主党を脱党した場合の受け皿になるかもしれない。

エンフサイハンは、また、「(民主党党首更迭劇は)敵対する党(注:人民革命党をさす)の教唆によって行われたものだ」、と、周辺に常に黒い影がつきまとっている彼らしく、証拠を示さず、謀略まがいのことを言っている(ウヌードゥル新聞2004年12月23日付)。

こうして、「1996−2000年の病気がぶり返した」(ゾーニー・メデー新聞2004年12月21日付)(注:民主同盟連合政権時代の腐敗、失政、政治混乱をさす)。

さて、この「政変」は、3つの要素がある。

一つ目は、新党首ゴンチグドルジに係わるものである。ゴンチグドルジは、かつて旧社会民主党の党首で(注:上記の社会民主党ではない)、民主同盟連合政権時代(1996−2000年)の国家大ホラル(国会)議長を務め、現在は、民主党内のアルタンガダス・グループの代表である。彼は、来年に実施される大統領選挙に出馬することをねらっている。そのために、民主党党首でなければならない。それを明言すかのごとく、先の記者会見(12月20日)で、民主党はこれから大統領選挙のための準備を開始する、と述べた(ウヌードゥル新聞2004年12月21日付)。

今回の「政変」は、手続から言えば、問題はないようであるが、「陰謀好き」という評がゴンチグドルジにはあるから(注:かつて、バガバンディ大統領追い落としをねらう陰謀を策したことがあった)、この政変の後遺症をどのように払拭するかが課題となるだろう。

二つ目は、エルベグドルジ首相に関するものである。エルベグドルジは、非議員であるが、「協議」による「大同盟」政府の首相になった。エンフサイハンは、彼に対し、「子供に1万トグルグ支給」を、翌年1月1日から実現できなければ辞職せよ、迫っていた。12月13日に、エンフサイハンが国家大ホラル(国会)「祖国・民主」同盟会派代表になり(注:オヨンと交代)、「今後は(政府に対する)要求のハードルは高くなる」、となにやら今後の波乱を予期させる言葉を吐いていた(ウヌードゥル新聞2004年12月14日付)。これに危機感を抱いたエルベグドルジが、民主党党首を更迭させ、政権安定を策した。

三つ目は、エンフサイハン自身の問題である。エンフサイハンは、1)元来、独断専横行為が多いこと(また、彼の側近の語るところによれば、無愛想である、とのことである)、2)選挙公約である「子供に1万トグルグ支給」が実現できなかったこと、3)金権選挙を演出し、不正な選挙戦術を行使したこと、4)他党を誹謗中傷すること、などの欠点があって、党代表の資質に欠けることが指摘されている(ゾーニー・メデー新聞2004年12月21日付)。

だが、数多くの問題はあるものの、「三角[祖国・民主]同盟」をまとめ上げ、今年(2004年)の国家大ホラル(国会)議員選挙において、予想外の大躍進をもたらした(注:民主党内では「勝利」だと言っている)のは、エンフサイハンであるとことは間違いない。従って、今後のモンゴル政治において、エンフサイハンたちの動向が注目される。(2004.12.28)

トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ