2005年度予算案が国家大ホラル(国会)で可決された(2004年11月30日)

国家大ホラル(国会)は、11月30日、総会を開き(出席議員47名)、2005年度予算案を拍手により承認した(反対議員5名)。11月30日が来年度予算審議の締め切り日であった。

この2005年度予算をみると、歳出額が7750億6000万トグルグで、財政投融資に1677億トグルグ(資本投下に559億トグルグ、地方予算補助に59億トグルグ[最も多く支出するのはゴビアルタイ・アイマグに7億7000万トグルグ、次いでオブス、ザブハン、バヤンホンゴル、ホブド各アイマグの順]、教育費に1610億トグルグ、社会保障費に1834億トグルグ支出する。

また、歳入額が7082億トグルグで、関税から2719億トグルグ、所得税から2467億トグルグ、社会保険控除額1231億トグルグ、観光収入から145億トグルグとなっている。

財政赤字は669億トグルグである。

なお、国家大ホラル(国会)による当該予算案修正項目は、「子供に3000トグルグ支給」、「年金の7.5%増額(公務員給与は7月1日から)」、「資本投下額40億トグルグ増額」、「『労働支援基金』による小口融資」などである(ウヌードゥル新聞2004年12月01日付)。

さて、この2005年度予算の特徴は何か。

第一に、人民革命党と「祖国・民主」同盟との「協議」によって成立した、エルベグドルジ「大同盟」政府は、今まで両陣営によって、何度か「行き詰まり」状態に陥っていた。それを克服し、成立期限ぎりぎりになって、ようやく成立にこぎ着けた。そのせいか、オドフー議員(無所属)が、「現在の状況に合わせ、資本投下額を圧縮した無難な予算である。困難な政治状況の下でよく決定できた」、と感想を述べているのからもうかがえる(ウヌードゥル新聞2004年12月02日付)。

だが、実際のところは、エンフバヤル前人民革命党政権の政策を継承したものとなっている。これを意識してか、ダムディン経済委員会委員長とН.エンフボルド(人民革命党)は、「前年度予算と同じである。社会保障費が全体の60%を占める、すぐれた予算である」、と記者会見で語っている(ウヌードゥル新聞2004年12月02日付、およびゾーニー・メデー新聞2004年12月02日付)。

すなわち、それは、インフレ率5.0%、経済成長率6.0%、財政赤字圧縮(6.0%以内)、対外為替準備高=輸入の4ヶ月、というIMFのガイドライン(=「指示」)を忠実に守った、ということである。

それにもかかわらず、社会保障費、教育費への歳出が圧縮されていない(注:社会保障費をGDPの35%にせよというのがIMFの「指示」)。このことは、モンゴルの伝統をふまえ、モンゴル国民の要求がこれらの分野に集中していることを示している。IMF路線では異質であろう。もっとも、「負の異質」として、「協議」による「大同盟」政府によって、省および高級官僚の数が11から17に増加し、その分の出費が増加してしまった。

第二に、「二人の”Э”(エルベグドルジ首相、エンフバヤル国家大ホラル[国会]議長)が協調している」(ウヌードゥル新聞2004年11月26日付)、といわれているが、それでもエルベグドルジ政権の不安要因は存在する。

現在、この政府は長く持たないだろう、とモンゴル人の多くは語っている。その背景には、エルベグドルジ首相の持論である、「小さな政府」論と、「2005年度予算」との矛盾が、いつ、どこで、表面化するか、不明瞭であるからだろう。

他方で、エルベグドルジ自身がメンバーとして行動を規定されている、民主党国民評議会は、エルベグドルジと距離を置き始め、バトウール、グンダライなどは明らかに反対行動をとっている。また、エルベグドルジが首相顧問として採用した、バーバル、ガンボルド、ドルリグジャブ、デルゲルマーたちが離反する傾向を見せ始めている。すなわち、エルベグドルジが民主党内で孤立する事態が起こりうるわけである。

さらに、「子供に1万トグルグ支給」という選挙公約がこの政府によって実現されないことになってから、モンゴル国民が「大同盟」政府に対して、不信任の行動をとる可能性も否定できない。

時々正論を吐いて国民に人気のある、「ジャガー」ことジャルガルサイハン議員(共和党、ボヤン社創立者)が、「納税者のお金を納税していない人々にばらまく予算となった(注:「子供に3000トグルグ支給」を指している)。目新しいものはない。貧困の主要な原因である『失業』を少なくする方法が含まれていない。ウランバートル市の大気汚染対策がない。未だに『(子供に)1万トグルグ』と騒いでいる(議員がいる)」(ウヌードゥル新聞2004年12月02日付)、と批判していることからも、それがうかがえる。

というわけで、以前に述べたことの繰り返しになるが、エルベグドルジはイバラの道を歩かなければならないのである。(2004.12.06)

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