
現在の政治情勢に関する二つの論説(2004年11月23日)
国家大ホラル(国会)議員選挙の投票日(2004年6月27日)から5ヶ月経過した。この間の政治情勢に関して、この「モンゴル時評」でも何度も取り上げた。
この5ヶ月間は、政治的にはかなりの混乱を見せていたことは確かであった。
11月23日、この5ヶ月間の政治情勢に関して、見解が相反する二つの論説が期せずして同日に書かれた。
その一は、<国政の混乱が沈静化した>というタイトルのБ.リグデン署名論説(ゾーニー・メデー新聞2004年11月23日付)であり、もう一つは、<「祖国・民主」同盟および人民革命党の選挙公約が(モンゴルに)混乱をもたらしている>というタイトルのР.エムジン署名論説(ウヌードゥル新聞2004年11月23日付)である。
Б.リグデン署名論説の概要は以下の通りである。
2004年国家大ホラル(国会)議員選挙後、政治が鎮静化に向かっている。国家大ホラル(国会)議員選挙は、人民革命党が正攻法によって、「祖国・民主」同盟が金権・不正手段を行使することによって争われた。その結果、ほぼ同数の議席数となった。これを受けて、「協議」によるエルベグドルジ政権ができたが、これに対しエンフサイハン、グンダライは不満を抱いた。だが、地方選挙の結果、人民革命党が勝利し、政治が鎮静化に向かっている。
Р.エムジン署名論説を要約すると次の通りである。
党、同盟の価格が1万トグルグから3000トグルグに下落した。「祖国・民主」同盟のグンダライ、エンフサイハンが党を困難に陥れ、指導力を失った。人民革命党も、公約を実行できなかった。国民の信を金銭で買い取ろうとした試みは、自らの価値を下落させた。モンゴルの政治を誤った道の導こうとした、党、同盟の試みは、モンゴルを混乱に陥れた。政治の混乱に始まった政府の行動は、経済の混乱に引き継がれ、増税による国内産業の海外逃避を誘発している。選挙公約を実行できない政党は、政党とは言い難い。そして、国政を金銭で買い取った人々は、その費用を回収しようとしている。「祖国・民主」同盟、人民革命党の選挙公約がこれらの党に死をもたらした。「子供に3000トグルグ」も物価高で効果がない。増税により国内産業を破壊させ、物価高により、国民を苦しめる。
リグデンは現在の政治情勢は安定に向かっていると主張し、エムジンは混乱に陥っているという。お互いに正反対の見解である。しかもこれが同日にそれぞれ掲載された。
しかし、子細に検討すると、この二つの論文は、取り上げる時期が少し異なるのに気づく。
リグデンは、選挙(6月27日)後の人民革命党と「祖国・民主」同盟の「究極のバランス」状態から、「協議」による「大同盟」政府成立(9月24日)および地方選挙実施(10月17日)までを主として扱っている。エムジンは、「大同盟」政府綱領承認(11月05日)後の政治状況を扱っている。
従って、両論文とも首肯できる。筆者も今までにこの時評で同じような見解を述べてきた。
確かに、「政治的混乱」状態と言うべき事態が起こっている。
「祖国・民主」同盟は、11月19日、国家大ホラル(国会)総会をボイコットした。というのは、オヨン(国家大ホラル[国会]「祖国・民主」同盟会派代表)は、政府予算(案)が、財政赤字を4.4%から3.5%に下げたが、人民革命党はこれを常任委員会において、5.6%にまで増やした。この増額によって、国際支援機関が援助を停止する懸念がある、と主張したからであった。
彼女は、国家大ホラル(国会)が(政府に対する)野党の役割を果たす、という従来の主張を実践したのであろう。
これに対し、イデブフテン(国家大ホラル[国会]人民革命党会派代表)は、以下のように反論した。資本投下増額案が提案されたのは、西部のタイシル、ドゥルグネ両川水力発電所建設終了につき、送電施設建設が必要であること、ウランバートルから東西方向への自動車道路建設中(注:「千年道路」のこと)であることなどのため、国家大ホラル(国会)経済委員会で、「祖国・民主」同盟側委員も賛成して可決した。これらは、全国民的課題であって、党派の利益のためではない。国家予算歳入増は可能である。それを資本投下に充てる。ところが、オヨン議員が突然反対した。これは国政を考えた行為ではない(ウヌードゥル新聞2004年11月22日付)。
また、Н.エンフボルド(国家大ホラル[国会]人民革命党会派副代表)も、モンゴル銀行への利払い遅延、銅世界価格の上昇、付加価値税の効率的徴収、などによって、200〜240億の国家予算歳入増を計り、年金額増額、資本投下を実施する、と反論した(ウヌードゥル新聞2004年11月23日付)。
これに関しては、どうも人民革命党側に理があるようである。
いずれにしろ、今後の推移が注目される。(2004.11.29)
(追補)人民革命党と「祖国・民主」同盟の「協議」グループは、11月23日、会談を行い、人民革命党が銅世界価格の現状からみて、資本投下額を70億トグルグから40億トグルグに減額することで、両者が合意し、「行き詰まり」が打開される模様である(ウヌードゥル新聞2004年11月23日付)。(2004.11.30)
