年金生活者集会、小規模融資・中小経営フォーラム、大統領演説(2004年11月16〜21日)

「ウランバートル年金生活者会集会」が11月16日、「小規模融資と中小経営フォーラム」が11月16〜21日、バガバンディ大統領の国家大ホラル(国会)での演説が11月18日、それぞれ開催され、行われた。

これらに共通するものは何か。

まず、11月16日、年金生活者60人余とバヤルサイハン社会保障労働相との集会が、ウランバートル年金生活者会集会場にて開かれた。

彼ら年金生活者たちは年金増額を要求した。それは、1)選挙公約であったこと、2)「我々は飢えている」という理由からであった。これに対し、社会保障労働相は、それには1800億トグルグの財源が必要であるとの理由で、彼らの要求を拒否した。だが、彼らの意見を首相、国家大ホラル(国会)議長、関係常任委員会に伝えることを約束した。

社会保障労働相顧問А.ザンガドは、現在、最低年金額は3万2000トグルグであって、この額を受け取っている人々が全体の65%を占めていることから、年金額を3年ごとに見直すべきである、と語った(ウヌードゥル新聞2004年11月17日付)。

次に、11月17〜21日、「国連開発計画」の資金援助による、「小規模融資と中小経営フォーラム」が、約750団体の代表とエルベグドルジ首相ら政府関係者が参加して、開催された。

その中で、エルベグドルジ首相は、2005年を小規模融資と中小経営支援の年とすることを宣言した。

参加者は、貧困緩和対策(注:モンゴルには貧困層が国民の46%を占めると言われている)としても、その政策は適切なものだとして支持した(モンツァメ通信2004.11.18 エルベグドルジのこの演説は、モンゴル政府のWEBサイトopen-governmentにもアップされている)。

さらに、11月18日、バガバンディ大統領が国家大ホラル(国会)で、エルベグドルジ大同盟政府の「2005年度基本方針」に対する批判演説を行った。

その中で、1.基本方針について。前年度も同じように作成されたが達成できなかった。「3万7000以上の就業機会創出と4万戸のアパート建設」に対する私企業支援の具体策が不明瞭である。輸出品を増やすと言うが具体的にどのような品目なのか不明である。近年鉱山部門への外資参入が見られるが、それ以外には見られず、特に加工業への参入が少ない。「千年道路」計画を放棄することはできない。今夏に起こった石油価格値上がりと連動して、インフレが進んだので、給与、年金額を増額すべきである。特に年金額を増額すべきである。貧困をどのくらいの割合で緩和させるか不明確である。

2.国家予算について。「協議」(注:大同盟政府をさす)の名目で官僚が増加した。それに従って歳出が増加する。例えば、インフラ省を3分割したため、6億8700トグルグ増加した。選挙公約(注:「子供に1万トグルグ支給」)を実行できないことに対して、責任をとるべきである。

3.金融政策について。金融引締め政策継続は、産業・サービス業に否定的な影響を与える。銀行の高利子率と短期貸付期間は、産業・サービス業の成長を阻害する。市場経済に対応して、国際金融経済機関と協力すべきである(注:「子供に1万トグルグ支給」にIMFが反対していることに関連している)(ウヌードゥル新聞2004年11月19日付)。

さて、この3つの出来事は、モンゴルの政治経済社会の現状を明瞭に映し出している。

この10年間で市場経済化(正確には資本主義化)が進行し、貧富の差が拡大した。この市場経済化は、しわ寄せが貧困層と年金生活者に来ている(注:むしろ、この市場経済化はモンゴルの歴史にはなじまないというべきである)。

その一方で、それから脱却するためのモンゴル国民の努力は存在する。それは、中小経営(特に小経営)による、独立した経済活動である。彼らは、政府の「支援」を当然の「権利」として要求する。

ただ、問題なのは、それが政府による「金融支援」(融資)であってはならない。債務奴隷化が目に見えているからである。

国連開発計画は、モンゴルのハス銀行への資金貸し付けを通じ、中小経営者に小口融資を行っている。それが貧困緩和に寄与するという。しかし、その利子は高く、破産の恐れが大いにある。そして何よりも危険なのは外国支援機関頼みであることである。つまり、モンゴルの銀行も融資を受けているのである。

そうではなく、教育費や社会保障費支出、社会保険の充実、自由な経済活動のための法整備(許認可に伴う汚職排除を含む)などを、政府が国際支援機関から独立して行わなくてはならない。

総与党化してしまった「大同盟政府」にあって、一定の限界はあるものの現在は、大統領が野党の役割を果たしている観がある。

この大統領演説は正当なものであるから(国際支援機関への協力というような部分を除いて)、国家大ホラル(国会)議員たち、および政治指導部は耳を傾けるべきである。(2004.11.22)

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