「大同盟」政府綱領が国家大ホラル(国会)に提案された(2004年10月20日)

エルベグドルジ「大同盟」政権は、10月20日、国家大ホラル(国会)に対し政府綱領を提出した。この日が提出期限(注:首相指名から60日以内)の最終日だった(ゾーニー・メデー新聞2004年10月21日付、ウドゥリーン・ソニン新聞2004年10月21日付、モンゴリン・メデー新聞2004年10月21日付)。

ようやくというべきか、この政府綱領の国家大ホラル(国会)への提出は、しかし、すんなりと承認されそうもない。

その内容は、エルベグドルジの記者会見(10月21日)での説明によれば、1)人民革命党と「祖国・民主」同盟の選挙公約をすべて政府綱領に含めた、2)包括課税(注:累進課税ではないこと)を導入する、3)資本投下を推進する、4)鉄道を複線化する、5)地域発展構想に基づいて、中心各都市に資金を投入する、6)行政機構を再編する、という(ウヌードゥル新聞2004年10月22日付)。

その詳しい内容は報道されていない。だが、1)を除けば、前政権の政策の継続である(注:現在、世界銀行のアジア担当責任者がモンゴルを訪問中である。もちろんこれは偶然の一致なのだが、この政府綱領が「IMF路線の継承」であることは明らかである)。

そして、問題の「1)」である。この意味は、「子供に1万トグルグ支給」(「祖国・民主」同盟)、「新婚家庭に50万トグルグ支給」(人民革命党)を両方とも実行する、ということである。それが、前期2年に「祖国・民主」同盟の、後期2年に人民革命党の「選挙公約」を実行するのか、両方とも同時に実行するのか、といったことはまだ不明である。今後の国家大ホラル(国会)での審議で明らかになるであろう。

その一つだけでも大変なのに、二つとも実行する、というのは、不可能に近い。

それでなくても、エルベグドルジ政権は難問を抱えている。

ウヌードゥル新聞(2004年10月22日付)の報道するところによれば、両陣営による「協議」が再び行き詰まりの様相を呈しているという。

これは、地方の「アイマグ知事任命問題」のためである。今回の地方議会選挙で人民革命党が圧倒的勝利を収めたため、アイマグ知事も人民革命党から選出される可能性が強い。手続としては、アイマグ住民評議会(地方議会)が当該アイマグ知事を選出し、首相が指名する、ということになっている。「祖国・民主」同盟の首相である、エルベグドルジがこれにどう対応するか。1996年には、エンフサイハン民主同盟連合政権は人民革命党の知事の何人かを拒否した。

「祖国・民主」同盟は、「協議」の名目で、地方アイマグ知事の数も同数にするよう要求している。少し筋の通らない話なのだが、「野心と官職追求」傾向がこの陣営には強いので、この主張がまかり通っている。これが、今回の地方議会選挙の結果を無視していることはいうまでもない。

さらに、副大臣任命問題もある。副大臣は、「協議」によれば、2年後、大臣になる(現在の大臣が副大臣になる)。ところが、「祖国・民主」同盟側の副大臣候補が(注:各派閥で副大臣職争奪戦を繰り広げている)、今回の地方議会選挙で落選した。

例えば、この陣営内では強硬派といわれるС.エルデネは、ウランバートル市議会に立候補して落選した。彼を、ニャムドルジ法務内務相と対抗させよう、という戦略があった(エンフサイハン派)。落選候補が副大臣ではダメだ、という「祖国・民主」同盟内の反対派閥のクレームが付いた。こうした事情が多数生じたため、副大臣任命が遅れている。

こうして、エルベゲーことエルベグドルジは数多くの峠を越えなければならないのである。(2004.10.26)

(追補)11月15日、エルベグドルジ首相はアイマグ知事14人とウランバートル市長、「祖国・民主」同盟割当の副大臣6人を任命した。残りの7アイマグ知事と人民革命党割当の副大臣は未定。すなわち、ボルガン・アイマグ知事М.オヨンバト、オルホン・アイマグ知事Г.シャルフー、ドルノド・アイマグ知事Ц.ジャンラブ、ヘンティー・アイマグ知事С.ジャルガル、トゥブ・アイマグ知事Ц.エンフバト、セレンゲ・アイマグ知事Ж.バヤルマグナイ、ダルハンオール・アイマグ知事Д.ハヤンヒャルバー、ゴビスンベル・アイマグ知事Ж.バヤンムンフ、ウムヌゴビ・アイマグ知事С.ツェレンバヤル、ドンドゴビ・アイマグ知事Ш.トゥルバト、オブス・アイマグ知事Л.トゴー、ドンドゴビ・アイマグ知事Ж.バトソーリ、ウブルハンガイ・アイマグ知事Б.エルデネビレグト、ゴビアルタイ・アイマグ知事Р.ツォグトバータル、ウランバートル市長М.エンフボルド(注:ヘンティー・アイマグ知事は「祖国・民主」同盟出身、それ以外はすべて人民革命党出身)。商工業副大臣Ц.エンフトゥブシン、法務内務副大臣Ц.スフバータル、自然環境副大臣Д.ツォグトオチル、燃料エネルギー副大臣С.メンドサイハン、外務副大臣А.バトトゥル、食糧農牧業副大臣Ц.ガンホヤグである(ゾーニー・メデー新聞2004年11月16日付)。(2004.11.16)

(追々補)12月8日、人民革命党割当の副大臣6人が任命された。すなわち、建設都市整備副大臣Ц.ダシドルジ、国防副大臣Б.エルデネバト、教育文化科学副大臣С.トゥムルオチル、道路運輸観光副大臣Г.シーデグダンバ、社会保障労働副大臣С.チンゾリグ、財務副大臣Ч.ガンゾリグである(ウヌードゥル新聞2004年12月09日付)。(2004.12.13)

(追々々補)さらに、エルベグドルジ首相は、アルハンガイ・アイマグ知事にЖ.フレルスフ、ホブド・アイマグ知事にГ.ニャムダバーを任命した(ウヌードゥル新聞2004年12月13日付)。(2004.12.21)

(追々々々補)さらに、バヤンホンゴル・アイマグ知事にП.ゾリグバータルが任命された(ウヌードゥル新聞2004年12月20日付)。(2004.12.24)

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