
2004年国家大ホラル(国会)議員選挙の争点(2004年06月01日)
2004年06月26日に投票日が設定されている、国家大ホラル(国会)議員選挙は、若干の追加立候補者の余地を残すものの、党、同盟、および無所属からの立候補者名が確定され(注:選挙管理委員会発表の全立候補者名はゾーニー・メデー新聞[2004年06月01日付]に掲載されている)、選挙運動が本格化してきた。
もっとも、テレビなどの各種メディアに登場するのは与党・
人民革命党ばかりであって、野党その他の主張は、「国家大ホラル(国会)議員選挙法」に定められた、国営放送での「政見演説」(20分間無料)のみである。
だが、モンゴル国民は「党」よりも「人物」と考える人が多いから、この人民革命党の選挙戦術の効果は、同党が考えるほどあるのかどうか疑問である。ただし、地方での影響力はあるだろう。
さて、この選挙は、「人民革命党」、「『祖国・民主』同盟」、「共和党などの第三勢力」の三つどもえの選挙戦と見なされるが、社会学者Х.グンドサンボーの述べるように、(惜しいことに)第三勢力の占める余地はない、と予想される(ウヌードゥル新聞2004年05月26日付)。
つまりは、「人民革命党」と「『祖国・民主』同盟」との選挙戦ということになる。両陣営による争点は何か。
人民革命党は、「あなた方のために、あなた方とともに」というキャッチフレーズと、党首・首相エンフバヤルを全面に出して、同党の政策を国民に訴えている。
「祖国・民主」同盟は、内部に不和・対立はあるものの、「現在の苦しみからの解放、家族への援助」という主張を全面に出して、選挙戦を戦っている。
特に、「祖国・民主」同盟の、「18歳以下の青少年家族に毎月1万トグルグ支給」という主張は、相当インパクトがあるようで、人民革命党もこれに対抗して、「新婚家庭に50万トグルグ、新生児に10万トグルグ、それぞれ一度限り支給する」、と主張しだした(ゾーニー・メデー新聞2004年05月25日付、およびウランバートル・ポスト紙電子版2004.05.28)。さらに、ウドゥリーン・ソニン新聞(2004年05月31日付)は、金額は「祖国・民主」同盟の方が多いのだと述べる始末である。この両陣営のどちらかが政権を担当すれば、この公約を実行しなければならない。これらは、財政基盤の脆弱なモンゴルにとって、まことに問題の多い主張なのである。
人民革命党の方は、相手陣営の主張に対抗するために、急遽考え出したものであろうが(それはまた問題の多いものであることはいうまでもないが)、「祖国・民主」同盟(とくに民主党)は、1996年の国家大ホラル(国会)議員選挙でもこの選挙戦術を用いて、(予想外の)勝利を収めた。従って、この主張は、突然考え出されたものではない。
ただ、そこに問題点がまたあるのであって、こうした根拠薄弱で、強引な政策は、1996年以降の経済混乱を招いた。つまり、それはモンゴル国民にとって非常に危険な政策なのである。
まとめて言えば、人民革命党の選挙戦術は、「現状維持」ということだ。一方、人民革命党の勢いに押されがちな「祖国・民主」同盟の方は、「現状打破」をねらいとするものである。
この両陣営とも、国際援助機関・国家・企業の「援助」・「投資」をあてにしている(注:これらの機関の目的はモンゴルの「地下資源収奪」であることはいうまでもない)。筆者が何度も言うように、モンゴルが「IMF路線の束縛」から脱却し、独立した政治・経済を確立しない限り、その将来は危うい。(2004.06.01)
