市民の意志・共和党による貧困層の起業支援計画(2003年09月05日)

市民の意志・共和党は、「融資保証基金」設立を計画している。

市民の意志・共和党顧問、経済学者Р.ボルドによると(注:ボルドは、かの「三角同盟」結成反対の動きに対し、エンフサイハン民主党党首がオヨン市民の意志・共和党党首と話し合いをすればすぐに解決する、と言い放ったのに対し、それは党内民主主義に反する、と述べたことがあった[ウヌードゥル新聞2003年08月13日付]。彼は、誠実な民主主義者のようだ)、以下の通りである。

「融資保証基金」は融資行為を行わず、銀行への融資保証をするのみである。資産のない、貧困な人々が中小規模の事業を興す場合、銀行に対し保証を与える。

当該基金は、その原資を政府から50%、民営化収入から30−40%、内外投資家から10%、を募り、2005年から営業を開始する。2005年に50億トグルグの資本金を募り、1万〜1万5千世帯に保証できる規模にする。2006年には70〜80億トグルグに増資する。さらに、4年後には、9万世帯に保証を与える規模にする。

モンゴルには総世帯56万世帯のうち、39%が貧困、または極貧であるとされる(2000年にはこの数値が36%だった)。こうした人々に生活の保障をし、家族労働に政府が支援を行うべきである。

この計画は、タイ、ドイツで実施されている(ウヌードゥル新聞2003年09月04付)。

中小企業主に対する融資計画は、実は、世界銀行による貧困緩和計画の一環として、従来はハス銀行への資金支援として行われてきた。

世銀は、さらに新戦略として、モンゴル銀行の管轄下に「小口金融開発基金」を設立し、地方の貧困緩和のため、入札によって300万ドルの特恵融資をする銀行を選定し、その銀行を窓口にして、地方民に小口融資を行おうとしている(ウヌードゥル新聞2003年09月01付)。

この二つの計画は、貧困層への起業支援を目的にしている。

一般モンゴル人は、生活物資を自ら生産し、余剰物資を小売りする、と言った生産活動は、一部のホルショー(協同組合)による活動を除いて、行っていない。彼らが従事するのは小商品の売買である。元手が要らない。そのかわり資金がない。あるのは忍耐力と体力であろうか。彼らが銀行に融資を申し込んでも、よほどのつてがない限り、受け入れられない。

従って、世銀の計画は、モンゴルの銀行(16あると言われるが、非銀行融資機関を合わせると、その数は不明)が、「企業」として「成長」する可能性は「ある」が、貧困層の成長には直接結びつかない。

現に、先述のハス銀行は、2003年9月から、ローン(融資)金利を3〜12%下げると発表した(モンツァメ通信030905)。「企業」としての体力がついた証拠である。IMF駐在員は不満だろうが。だが、銀行が「栄え」ても、一般モンゴル人が栄えなければ何の意味もない。

その意味では、市民の意志・共和党の「計画」は評価できる。

ただ、この計画は資金の大半を政府が負担することになっている。現政権はこの計画はIMFプランに含まれないから、現状では、受け入れないだろう。IMFは、極言すれば、貧困緩和計画には興味を抱かず、経済安定だけを念頭に置いているのであるから(だから世銀がその肩代わりをしているのだが)。

市民の意志・共和党は、ねばり強く政権党を説得すべきなのであるが、その気力・体力・知力があるのかどうか。

この計画は、2005年営業をめどにしている、と前に紹介したが、この意味は、周到な計画である、ということもできるが、一方では、2004年の国政選挙を意識している、ともいえる。つまり、市民の意志・共和党の経済政策=「貧困緩和計画」でもある、ということだ。

市民の意志・共和党(2002年2月22日合党)は、その綱領的文書(パンフレット)で、3つのAAA(アジルグイ=失業・貧困、アビルガ=賄賂・汚職、アルヒダン・ソグトー=泥酔)と闘い、3つのBBB(ボロブスロル=教育立国、ブテーグチ=起業、バヤン・チネーレグ=成長)を創造する、としている(”ААА тэмцэнэ БББ бий болгоно”)。

つまり、”BBB”の二つ目の”B”に相当するのが、この「融資保証基金」設立計画である、ということだ。

政党は、政権を目指す。市民の意志・共和党も同様であろう。だが、その支持率は10%を越えない。そこで選択肢は二つ。他の政党と連合すること。野党の立場を堅持すること。

筆者は、先に、市民の意志・共和党書記長Ц.ガンホヤグ(37歳)に会った。次回は正式のインタビューを計画している。彼は、誠実な人柄である。だが、かの「三角同盟」(民主党、民主新社会党、市民の意志・共和党による)結成推進の立場に立っている。

この三党は水と油で、目指す方向が異なっている。従って、市民の意志・共和党はこの「同盟」から得られるメリットは少ない。

すなわち、野党として独立した活動をすることがもっともこの党の理念に適合している。

少なくとも、この「融資保証基金」設立計画の実現は、「三角同盟」のもとでは(政権党になったと仮定して)、人民革命党を説得する以上の気力・体力・知力がいるだろう。ガンゾリグたちにその覚悟があるかどうか。今後に注目したい。(2003.09.07)

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