2003年度春期国会が終わった(2003年06月25日)

2003年04月07日に始まった、2003年度春期国家大ホラル(国会)が、06月25日、終わった。会期55日間で、90以上の法律が採択された。次の秋期国会は、10月01日に始まる。

筆者がモンゴルに来て以来、この国会が開かれていたことになる。個人的には、感慨深いものがある。

この国会で採択された法律について、ゾーニー・メデー新聞(2003年06月26日付)やウヌードゥル新聞(2003年06月27日付)が、その内容を伝えている。

その記事の中で、国会議員がそれぞれ、採択された法案を列挙している(上記ウヌードゥル新聞)。それによれば、バトトルガ議員は、ナーダム法、土地所有法施行のための諸法律、自由経済特区法(カジノを作る)、グンダライ問題を、バダム議員は、2004年度予算案、法律家選抜法、酒酔い対策、ナーダム法、ザミン・ウード自由経済特区、土地所有法施行のための法律を、ニャム=オソル議員は、ザミン・ウード自由経済特区法、逓信法、土地所有法施行のための諸法律、ナーダム法、徴税法を、シーレブダンバ議員は、外国援助調整法、ザミン・ウード自由経済特区法、食料・農牧業に関する法、ナーダム法を、それぞれ特記すべき法律としてあげている。

つまり、重要法案として、(1)2004年度予算案、(2)土地所有法施行のための諸法律、(3)ザミン・ウード自由経済特区法、(4)外国援助調整法、(5)ナーダム法などを、審議・可決したということになろう。

(1)2004年度予算案については、立法府としては当然のことであり、今度の秋期国会において、さらに具体的に審議されることになる。つまり、今国会においては、その骨子を承認した、ということである。

(2)「土地所有法」施行のための諸法律については、この「土地所有法」そのものが、歴史的には未だかつて存在せず、後代、その反歴史性が証明されることになるだろうが、とにかく、実施の方向で動き出してしまった。今のところ、例えば、ウランバートル市では、「ゲル地区の土地の私有化」から開始されたが、まだ、「私有」概念に国民は慣れておらず、「私有申請」のペースは低調である。筆者の友人が、母親の土地証明書を見せてくれたが(これも苦労して入手したようである)、実際は、「土地占有のための証明書」だった。この母親は、夏にはそこから20キロ足らずの所にある、ゾスランで過ごす。近くには、1990年以前のゾスランもあって、人々は思い思いに夏をそこで過ごす。こうした「普通のモンゴル国民」にとって、土地の私有化は、全くの「迷惑かつ不必要な」法律である。

ダルハン=オール・アイマグでも、土地建物(家屋)を建てている世帯のうち、「土地所有法」施行による土地所有申請は、申請者1000世帯(アパート所有者を含む)のうち、51世帯にすぎない。彼らはその土地が占有なのか私有なのか理解できていないため、様子を見ているからである、と「モンツァメ通信」は伝えている(モンツァメ通信2003.06.26)。

これまで筆者が何度も言ってきたように、この「土地所有法」は、米国を先頭とする資本主義諸国が、モンゴルへの進出(「侵略」)の橋頭堡とするためのものである。モンゴル国民は早くそれに気づかなければならない。

(3)ザミン・ウード自由経済特区法については、モンゴル国境地帯に、自由貿易地帯を設置し、関税を免除し、商品の流通をはかろうとする物である。モンゴルの小商人(「マーケット・マミー」)たちは、ザミン・ウードを越え、中国の二連にまで足をのばし、中国商品を買い付け、国内に売りさばいている。その人々にとっては、悪くはないかもしれない。

だが、今のところ、ザミン・ウードは、水供給に問題があり、論議を呼んでいる。当該選挙区選出議員である、シャラブドルジは、水は中国から導入すればいい、と主張しているが、それでは、さらに中国経済への従属が進むだろう。

しかも、ここに「カジノ」を建設するという。これでは、モンゴル人の「宿病」とも言うべき「酒酔い」と並ぶ、「賭け事」を助長するだけである。国会議員の当選のためではなく、モンゴル国民の立場に立った構想が必要になってくる。

(4)外国援助調整法については、外国援助・融資が効果的に運用されていない、という現実が背景としてある。それを解消する正攻法は、援助・融資に依存しない「モンゴル経済」を発展させること、つまり、モンゴル国民の自生的かつ自由な経済活動を保証することである。

モンゴルでは、「法律は賄賂を取るために作る」、というジョークがある。この法律も、こうした援助・融資金の横取りを法律によって規制しよう、というのが、骨子なのだが、その法律の抜け穴から、汚職がまた生じるだろう。

(5)ナーダム法については、いままで(1990年代以前)、モンゴル国民の民族祭典であるナーダムは、伝統的慣習に基づいて行われてきた。ところが、1990年代の市場経済化(資本主義化)によって、汚職・賄賂が顕在化してきた(例えば、モンゴル相撲などで)。こうした汚職を規制しようというのが、この法律である。そういう意味では、現在のモンゴルを象徴している法律である。嘆かわしいことではあるが。(2003.06.29)

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