
モンゴル債務、鉱山、土地私有(2003年06月06日)
今回は、各種報道で取り上げられた出来事を、簡単なジグソー・パズル風に記述する。
ウヌードゥル新聞(2003年5月31日付)。モンゴルの受け取る融資額は、12億ドルである。そして、対外債務は、9億8000万ドルになる。現在、毎年平均1000万ドルずつ返済している。来年度(2004年)から3000万ドルじつ返済しなければならない。
モンツァメ通信(2003年06月03日、および05日)。「モンゴル全土の20%は外国の『支配下にある』」。すなわち、鉱山採掘のための土地租借権のうち、20%は、外資企業が所有している。特に、中国による投資が増加しており、総額2060万ドルになる。現在、440企業が進出している(この時点で、中国国家主席胡錦涛がモンゴル訪問中で、モンゴルに5000万中国元の援助金をモンゴルに与えた)。
ウヌードゥル新聞(2003年6月04日付)。「借金による投獄は有効か」。現在、借金を抱えていないモンゴル人は少ない。民主主義を自由気ままと解釈した人々は、借金を返さず、政府高官は、国有財産を横領した。だが、借金を返済しない人を投獄しても、借金は取り返せない。だから、借金による投獄は無駄である(注:ボヤン社のジャガーことジャルガルサイハンは日本の丸紅への債務不履行である。また、「CITY MARKET」という看板のコンビニ風のミニ・ストアがウランバートルのいたるところにある。これは、モンゴル立志伝中の代表的人物、ジェンコ社のバトトルガの所有であるが、彼は各種企業買収の結果、融資返済不能状態に陥っている。さらに、エレル社総帥エルデネバトは法人所得税未納で政府と係争中である)。
ゾーニー・メデー新聞(2003年06月05日付)。モンゴルは、(国民の)人力による鉱物資源採掘に許可を与える法案を可決・施行する予定である。
ゾーニー・メデー新聞(2003年06月06日付)、およびモンツァメ通信(2003年06月06日)。アジア開発銀行は、
土地所有化を担当する、土地登録局にアドバイザーを派遣し、土地所有化実施のための研修を行う。
ここで取り上げられた出来事は、モンゴルの抱える問題を象徴している、と著者には思える。
モンゴルは、1990年代以降、各種国際「援助」機関、「支援」国から多額の援助を受け取ってきた。この資金は、モンゴルのインフラに投入された。日常生活に欠かせない熱暖房施設、上下水道、道路、アパート・住宅、校舎修理など、そのほとんどがこうした融資、「援助」金によって建設・修理されてきた。
本来は、モンゴルの国家予算(国民の税金による)から支出すべきものである。ところが、国家には資金がない、ということで、その「穴埋め」を融資・支援金でまかなっている(正確に言えば、国家予算赤字=財政赤字は、支援金を組み込んで計算されている)。
この資金は、善意の機関・国家がモンゴルを慈しんで与えているわけでは、決してないから、いずれは返済しなければならない。それも利子を付けて。
その額は天文学的な数字になるだろうから、いずれモンゴルは返済不能に陥るだろう。現在ですら、代表的な資本家たちは返済不能状態に陥っているのだから。それでも善意の国家はモンゴルを「支援」するだろうか。
彼らは、それでも融資・支援を継続する。しかし、国家に対して担保を取る。モンゴルでは、それは地下資源である。地下資源は簡単に採掘できるものではないから、多額の投資を必要とする。そのための企業がそこに投入される。
ところが、モンゴルの地下資源、土地は国有である。このことは、例えば革命が起これば、こうした企業が租借する土地は没収されるだろう。それはどうしても回避されねばならない。そのためには、土地の私有化が実現されなければならない。
だから、政府与党が国会に絶対多数を要する現在において、土地所有化法案が可決され、施行された。
鉱山部門では、まだ土地私有化は日程に上っていない。だが、そのための先兵として、個人が鉱物資源を採掘するのを法的に認め(現在の「鉱山法」はそれを禁じている)、国民・企業に鉱物資源が資金獲得に有効であることを認識させる。その後、いずれの機会にか、こうした鉱山を私有化する。
こうして、モンゴルのアフリカ化、あるいは清朝支配期のモンゴルと同様の事態が実現する。
これが筆者の杞憂であればいいのだが・・・・。(2003.06.08)
