
住宅購入のためのアジア開発銀行融資は有効か(2003年03月13日)
モンゴルが1990年代に入り、国際金融機関や「支援」国は、様々な有償無償の「支援」、融資をモンゴルに供与してきた。1990年代前半は、それは緊急性が強かったが、モンゴル経済が1994年から景気が上向きになるにつれて、事業として一定の目的のあるものに変化してきた。担保は、慈善を装っているが、むろん、モンゴルの豊富な地下資源である(明示的ではないが)。
2003年05月01日に実施される、「土地所有法」によるモンゴル国民[実際は家族]への土地の無料支給と連動して、住宅購入のための融資案が検討されている。その骨子は、ウヌードゥル新聞(2003年03月13日付)によれば、次の通りである。
このアジア開発銀行の融資は、モンゴルの中・下層国民に対し、住宅購入の機会を与えるべく、2〜3年前から計画されてきたものであって、アジア開発銀行側は当初年利18%を設定していた。国家大ホラル(国会)はその案を審議する過程で、年利10%に決定して、アジア開発銀行側と折衝に当たった。だが、アジア開発銀行側は18%案を譲らず、結局、両者が妥協して、年利16%となった。
住宅購入融資は、今年(2003年)05月01日に実施される、「土地所有法」により、無料供給される土地を担保にする。受給資格者は、国民、住宅建設業者、住宅組合である。
年利は国民が16%、企業単位(経済主体)が18%で、融資限度額は1,000万トグルグで、10年返済である。国民は最初の2年間、企業単位は1年間、それぞれ返済に優遇措置が講じられる。
年利は変動相場で、経済情勢によって改変される。つまり、現状では引き上げられる可能性が高い。
モンゴル国民の平均月収は16万トグルグだから、年利16%、10年返済であれば、最初の2年間は13万トグルグ、その後は18万トグルグ支払うことになる。これは、1世帯あたり、融資返済額に全収入額の60%を充当することを意味する。
こうしたことから、当該融資の窓口となる「郵便銀行」、「通貨銀行」、「貯蓄銀行」、「ゴロムト銀行」もこの計画案実行に二の足を踏んでいる。政府高官(インフラ省建設都市計画調整局長)も、この融資条件は異常に高額であることを認めている。
この融資計画は「分不相応なだからモンゴル人に実行するのが無理である」、とこの記事を書いた記者も明言している(注:ちなみに、モンゴルはGDPの20%相当額の援助・借款を受け取っている。額に直すと、10億ドルの融資、10億ドルの無償援助である。そして、最大被援助国5カ国の中に入っている。つまり、モンゴルは経済的従属状態にあると言っていい。週刊紙「モンゴル・タイムス」2003.03.13, No.09 参照)。
筆者も全くそうであると思う。この融資計画は、モンゴル国民のうち、融資完済できる富裕層と、返済が滞り、結局は、担保にした土地を手放さざるを得なくなる貧困層とに分断させ、モンゴル社会を支える中下層モンゴル人を貧困に追いやることによって、モンゴル経済の従属を深める(どこにとはあえていわないでおくが)愚策である。
モンゴルではこの類の計画が多すぎる。融資をする側[注:特に悪い]も受ける側も悪い。すべて廃止すべきである。(2003.03.17)
