
「2003年観光の年」「2003年協同組合推進の年」をどうみるか(2003年03月07日)
2004年の国家大ホラル(国会)議員選挙を来年に控えた、エンフバヤル人民革命党政府は、2003年を「観光の年」、「協同組合推進の年」、と位置づけ、その実行に予算措置を講じた。
「観光の年」の推進に当たって、ロシア、ヨーロッパ諸国、日本などを観光客誘致重点地域として、モンゴル・フェアを開催し、モンゴル観光地の宣伝を行ってきた。また、国内宿泊施設の整備とサービスの向上につとめている。MIAT(モンゴル航空)でも、民営化を視野に入れて、観光客数増加をもくろんで、新鋭機導入を計画中である。最近では、それに先立ち、耐用期限の切れた「ボーイング」727機を南アフリカに売却したばかりである(「モンツァメ通信」電子版2003.03.06 注:もっとも、南アフリカの方は、当該機の部品を取るためのようだが)。
この「観光の年」キャンペーンの目的は、外国人観光客誘致による「外貨獲得」にあるのは自明である。
モンゴルの貿易構造は、(再三言うが)、銅・モリブデン・金、畜産品を輸出し、機械製品・日用品・石油を輸入する、という、いわば植民地型輸出入構造である。これは、原料国際価格の高低に国内経済が強く影響を受ける。現に、1994−1996年の銅・モリブデン価格の高騰、1997−1999年の当該価格低落がモンゴル経済に大きく影響を与えた。
こうした状況は、モンゴル経済の「独立」にとって最大の障害の一つである、といってよいだろう。その点で、観光資源は枯渇することは、原則として、ない。人類発生地(仮説)、特異な自然景観、産業形態(遊牧)、国民性などは、外国人観光客に精神的安らぎを与えるだろう。その外貨が民生安定の資金源になれば、モンゴル国民にとって肯定的な条件を形成するだろう。
ただ、現実には、交通インフラが完備していないために、外国人観光客による観光公害(物質的・精神的)が発生するだろう。また、対ドル国内通貨の脆弱性のために、物価騰貴を引き起こす懸念もある。資金面では、政府は、中国からの無償援助金を環境整備に目的外使用をしようとしている。また、道路整備は、日本政府援助をあてにしている。
このように、「観光の年」推進は、モンゴル国民にとって、かなり「瀬戸際」的政策であるといえよう。
一方、「協同組合推進の年」キャンペーンの方はどうか。実は、この3月3日に、「協同組合国民評議会」が開催され、Д.ナサンジャルガル会長が報告をした。それによると、現在、協同組合数は1525であって、増加傾向にあるという。そして、協同組合の直面する課題として、1)銀行融資利子か高いこと、2)専門的技術者が少ないこと、3)研修不足、4)税軽減の必要性、5)自主独立性の確保、などをあげている(「モンツァメ通信」電子版2003.03.03)。
この「協同組合」というのは、モンゴル語で「ホルショー」という。かつて、チョイバルサン首相時代の1952年に設立完了宣言が出されたときの、「農牧業協同組合」と訳された「ネグデル」とは、違った性格を持つものなのかどうか。両者の構造的・法的・社会的・歴史的比較が必要となろう。
それは、今後の課題として残しておき、ここでは、当面する問題に焦点を合わせよう。
「農牧業協同組合(ネグデル)」と「協同組合(ホルショー)」の、現代的な意味での、際だった「差違」は、設立・運営資金の調達方法である。先ほどの「ナサンジャルガル報告」で指摘されていたように、協同組合(ホルショー)は、「自主独立」で資金を調達し、それをもとに、生産、購買、消費、(保険)などの諸活動を行う。
これは評価すべきである。問題の一つは、資金調達難であることである。そこで、それを「援助」するべく、世界銀行がハス銀行に資金援助をして、「ミニマム・クレジット(中小企業者向け小口融資)」を実施している(これについてはかつて言及した)。
人民革命党機関誌「ウネン」が呼びかけているように(ということはエンフバヤル政権の政策であるということだ)、この「協同組合」推進は、ガン(干ばつ)やゾド(雪害)による家畜頭数減少(2001年2610万頭から2002年2370万頭へ)を食い止める手段だ、という側面もあろう(「ウネン」新聞2003年03月07日付)。
これは、かの「悪名高い」(と筆者の主張する)IMFの構造調整政策(PRGF)と違って、モンゴル国民の自生的を促す可能性が比較的高い。だが、それでも利子率が高く、返済が困難である。
つまり、この「協同組合推進の年」キャンペーンも諸刃の刃である、ということになる。
前に言及した、対ロシア負債問題と並んで、この「観光の年」と「協同組合推進の年」キャンペーンも、エンフバヤル人民革命党政権の2004年選挙結果の命運を握っている。(2003.03.10)
