エンフバヤル政権の2003年度施政方針発表(2002年12月23日)

エンフバヤル人民革命党政権は、2002年12月23日、臨時閣僚会議を行って、2003年を「モンゴル観光の年」、「協同組合の発展を支持する年」と位置づけ、外務大臣エルデネチョローン、商工大臣ガンゾリグに対し、その目標を達成するための会議をおのおの主宰させることにした(MONTSAME-OANA 2002.12.23)。

また、エンフバヤル首相の指示により、政府機構の改組を行い、「土地関係、測量、地図作製局」を新設した(MONTSAME-OANA 2002.12.23)。

これら3つの記事は、国営通信社モンツァメが、今年の10大ニュース、などという年末恒例の企画に混じって、さりげなく発表されている。だが、モンゴルの今後を左右する、かなり意味を持つ方針であると思われる。

エンフバヤルは、文化相を経験し、さらにそれ以前には、通訳の仕事に従事してきた。国際交流の経済的文化的側面を知悉していると思われる。彼の主導で、2003年に大幅な観光客数の増加が企画されているわけである。

それは、直接的には、国家予算に観光収入が納入されるという、マクロ経済安定化のためである。間接的にいうと、2004年には国家大ホラル(国会)選挙が行われる。最近の世論調査によれば、人民革命党の年金・給料倍増という、2000年国会議員選挙時の公約が達成されていないため、支持率が30%〜40%と低下傾向にある。その公約実現のための資金が見あたらないからだ。観光収入がその実現に寄与するであろう、というわけである。

筆者の未確認情報によれば、この4月から、関西国際空港発着便が再開されるようだ。日本からの観光客増加をめざしていることは明らかだ。

「土地関係、測量、地図作製局」の新設は、かの「土地所有法」採決に伴う処置である。当該法の問題点は、今まで何度も指摘してきたが、要するに、理念面はさておき、実務面では、土地測量など何ら具体的裏付けがないまま、土地の無料分与が行われる、ということであった。そうした欠陥(ザル法というべき)に対し、エンフバヤル政権は本気で土地私有化に取り組むことを内外に示した。諸外国向け通信社モンツァメが配信したのもその理由があるわけだ。しかも、この部局の責任者に、かなりの大物を充てていることからも、エンフバヤルの決意がわかろうというものだ。

しかし、こうした方針に並行して、モンツァメが配信するところによれば、今年のゾド(冷害)によって家畜が200万頭斃死し、103人が死亡している(2002.12.24)。年金生活者数の増大(5人に1人)によって、年金基金の運営に困難を来たし、ひいては社会保障費支出が増加し、来年度当該部門の15%削減、という目標(IMFプランに基づく)実現が困難になっている(2002.12.24)。ウムヌ・ゴビでは、医師、教師、専門技師が不足している(2002.12.24)。青少年犯罪が深刻化し、青少年7千人が犯行を犯している(2002.12.24)。MCS社の「コーラ」飲料工業労働者が労賃不払いの解消を求めてストライキを敢行した(2002.12.24)。モンゴル人の間で、有利な土地を求め、土地争いが激化している(ウヌードゥル新聞2002.12.24)。第三病院が民営化される(2002.12.25)。

こうした事態は、資本主義の宿病といえるものばかりである。「協同組合」の発展強化だけでは、事態の解決はできないだろう。諸外国、国際援助機関を喜ばすだけにおわりがちな、資本主義路線をこのままひた走ることに警鐘を鳴らしたい。(2003.01.02)

トップへ
トップへ
戻る
戻る
次へ
次へ