
政府は労働組合連合の要求を拒否した(2002年11月20日)
人民革命党エンフバヤル政権は、11月20日、モンゴル労働組合連合の要求を拒否した。これは、労働組合連合が、2002年11月12日、政府に対し、賃金と年金の、二段階による25%ずつの引き上げを要求したことに対する、Ш.バトバヤル社会保障労働大臣の回答で述べられたものである。
政府は、賃金、年金増額拒否の理由として、ゾド(冷害)、森林・草原火災、主要輸出品(畜産物)総額の減少、などをあげている。もっとも、政府は、完全拒否というのではなく、可能な限り漸次行う、としている。
この労働組合の賃金、年金倍額贈要求の背景には、モンゴルにおける貧困層が国民全体の30%以上になる、という統計結果、そして、2000年国会選挙で人民革命党が、選挙公約として、給料・年金額の倍増を掲げたこと、その実行を国民が迫っていること、などがあげられる。
貧困層が30%以上、というのは、モンゴルの伝統=実情を無視した、先進国の価値判断=指標に基づく、国際機関の単なる統計調査にすぎないので、あまり信用できないが、1990年代の失政=経済混乱によって、貧富の差の拡大=不法蓄財が顕著になり、1980年代までのモラルや平均的生活水準の急激な低下が見られたことは事実である。
人民革命党は、その機微を2000年国会選挙でとらえ、圧倒的勝利を得た。だが、貧富の差の拡大と、不正蓄財=汚職の根本原因を除去するための、「処方箋」がないために、結局は民主同盟連合政権(1996-2000年)の政策を踏襲せざるを得なかった。
この根本原因とは、政治的独立を保障するための、経済的独立が確保されていないことにあるのだが、モンゴル政府指導部は、20世紀において、(17世紀から20世紀初頭までの清朝支配期も)、一度もそれを確保できなかった。特に、1990年代は、怒濤のごとくは入り込んだ、外資と国際「援助」機関に頼るのみであった。
これに対抗すべく、モンゴル国民は、牧民運動から民主化運動に至る、輝かしい革命的伝統を持っている。今回の労働組合連合の要求は、その伝統の継承である。
その一方で、政治指導部は、かつて「社会主義」の敵、と声高に叫んでいたのを忘れたかのように、その「敵」を嬉々として受け入れている。そして、その代表機関たるIMFの構造「改革」プランの路線をひた走っている。「経済独立」が遠のくばかりである。
こうして、モンゴル国民の要求と、政治指導部の政策との矛盾が深化していく。これが労働組合の要求への政府による拒否回答の意味である。少し情緒的に書いたが。(2002.11.26)
