
2003年度国家予算案の特徴(2002年10月18日)
2002年度秋期国家大ホラル(国会)が10月01日に開会したが、この会期中で最も重要な議案の一つが2003年度国家予算案である。財政経済相Ч.オラーンの述べるところによれば、「この予算案は原則的に斬新で、非常に興味深い」、という(ウグ新聞電子版2002年10月18日付)。
「原則的に斬新」だ、というのは、地方予算に対して、中央予算による補助金の交付は(いくつかの例外を除けば)行われず、各級機関への予算の配分は、今年度実績をもとにして予算額が決定される、ということである(同上)。
「興味」を引く、というのは、普通教育教科書が一部有償になり、将来はすべてその方式に変更になる、ということである(MONTSAME電子版2002年10月18日)。
これはすべて、世界銀行の指導によるものであって、貧困緩和基本構想に基づいている。それはまた、IMFのPRGF(貧困緩和開発戦略)に基礎をおいている。(PRGFについては、最近のものでは、http://www.imf.org/external/np/exr/facts/prgf.htm を参照)
一言で言うと、国家予算歳出額を減少させ、財政赤字を圧縮させようという、IMFプランに忠実に沿った予算である、ということだ。
財政赤字の圧縮そのものは肯定できる。問題は、その方式である。人民革命党エンフバヤル政権は、2000年度国家大ホラル(国会)選挙で、年金と給料の倍増を選挙公約にして、有権者の支持を集め、政権に復帰した。現在、20%増額が実施されたが、倍額にはほど遠い。何れにしろ、この分野での支出の削減は、IMFの要求はあるものの、事実上無理である(補注:このIMFの要求[=国家予算赤字額圧縮]が国民の要求に違背すること、こうしたエンフバヤル政権のジレンマについては、後に、「ウドゥリーン・ソニン」新聞2002年10月22日付「国際金融機関が歳出を削減するよう要求」、「ゾーニー・メデー}新聞2002年10月23日付「人民革命党政権と現代」でも指摘している)。
そこでねらわれたのが、教育予算の削減と、地方への補助金支給の廃止であろう。その名目は、国民、地方政府の独立した行動を奨励する、というものである。だが、その「独立」の内容が問題である。
国民や地方政府の独立した行動を奨励する、というのであれば、そのための経済基盤を整備し、自由な経済・文化活動を保証するとともに、社会保障を完備させなければならない。
特に、モンゴル国民は、教育熱心であるから、その分野への予算額は、IMFの要求にもかかわらず、ほぼ毎年変わってはいない。ところが、その消耗費に対する予算補助には手が回らない。つまり、教材費、校舎修繕費などは毎年不足気味である。このことは、ヘンティー・アイマグでの今夏の聞き取り調査でも実証済みのことである(詳細は今後発表予定)。
そこで、その分野は、外国援助によって補填する、ということになる。外国援助は、人道的援助であれば問題はないのであるが、その担い手である資本主義は、そのような天使ではないから、そのつけが後年回ってくる。
独立した、と考えていたら、かえって従属していた、ということになりかねない。前述の「ウグ」新聞は、この予算のことを、’баруун(右寄り)’といっている。モンゴルがIMFなどに本格的に取り込まれていくことを、筆者は何よりも危惧する。(2002.10.25、2002.10.27改稿)
